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20話 ユーザーメイド


「頼み? なんじゃ? あの場にいての事じゃろうから素材関係か? じゃがそれは参加者にも配られておるじゃろう? ちなみにワシ、金はもっておらんぞ」

「そうそう! 素材だよ素材! いやぁこのゲームさ。装備とか自作するのにここみたいなちゃんとした建物が必要でさ。それで早く店持たなきゃ! って思ったあたしはあれで手に入った物全部お金に変えちゃったんだよね!」


「全部? 相手のレベル的に、あれらは今だとかなり強い素材じゃろ? よくそんなものをまとめて買う金を持った奴がおったな」

「あーいや、NPCに全部まとめ売りで。めっちゃ損したわ。でもね、せっかくのアドバンテージだし他プレイヤーに譲りたくないじゃない?」

「……まあ気持ちは分からんでもないが。それで? ワシから素材を買い取りたいということか?」


「んーんっおしい! あなたの素材をタダで恵んでちょうだい!」

「…………そろそろ帰るのじゃ。ではな」

「ああ待って待って! あなたにも悪い話しじゃないのよ!」


 店の出入り口に向かうルーリー。クイドはその前に回り込み、彼女をなんとか押しとどめる。


「どういう意味なのじゃ? ワシは装備で困ってることはないんじゃが」

「大丈夫! わかってるから。そもそもの話をまず聞いて欲しいの。あたしが装備作りをしようと思っている理由ね。あたし、蛇姫様が好きなのよ。知ってるでしょ? 蛇姫様。凛々しくてプライドが高いのにそれでいて必要な場所で責任を取れるところが良いのよ! わかるでしょ?」


 下半身の蛇部分をくねらせ愛を語るクイド。

ルーリーはそんな彼女を引いた目で見ながら、強引に話を終わらせにかかる。


「まて! まてまて待つのじゃ! さっさと結論だけ言わんとワシは帰るぞ!」

「──え!? ここからがいいところなのに!? まあ仕方ないわね。つまりね? あたしは蛇姫様にあたしが作ったあたし好みの服を着てほしいわけ」

「お、おう。そうなのじゃな」

「そうなのよ! でもライバルは多いわ! 絶対! だから協力しましょう!」

「………………? あ、話は終わりか? ワシが協力するメリットが見えんが」


 どや顔を浮かべ親指を立てながら両手を上げるクイド。ルーリーは首をひねってそんな彼女を見つめていた。


「え? ああ隠さなくて大丈夫よ! 取ったりしないから! あなた、あの新しい姫様のこと狙ってるんでしょ? そこが利害の一致よ! 新しい子も含めて13人しかいない姫様を狙う同志ってこと」

「ワシはノトリスなんて狙っておらんが!?」

「ええ!? あんなに情熱的に戦ってたのに!?」


「挑まれたから相手しただけじゃ。ワシからあやつに対して何か思うことはない」

「えーそうなの? ……まあそれはそれで置いておいて。ちょっと見学していかない?」

「話しの切り替えが雑過ぎんか!?」

 

 クイドはスルスルと蛇の体を滑らせルーリーの脇を通り抜けると、そのまま隣の部屋へ入っていく。

ため息をつきながら後ろに続いたルーリー。隣の部屋は更に小さく、その室内を占拠するように大型の機織り機に似た機械がおいてあった。


「なんじゃこの機械は? これしかないのか?」

「ゲームの中のサブのサブ的な要素だから仕方ないわね。これで防具に使う布アイテムを作ってインベントリ内で装備として組み立てるのよ。まあ手持ちが無いから、説明を読んだだけで全然試せてないんだけど。基本布だけで防具になるわ」

「ほう? 布だけで?」


 興味を惹かれたのか様々な角度から機織り機をチェックするルーリー。

家主が許可を出しているからか機織り機に、【素材を選択してください】というメッセージが表示される。

そのメッセージと表示された自分の手持ちアイテム一覧を見比べるルーリー。その背後にそっと近づいたクイドが耳元でささやく。


「そうよ。試してみましょうか? 何か素材を出してみて? 雑魚素材とボスのレア度差で違いが有るのかも気になるわね」

「ん? わかったのじゃ。ならばエメラルドの皮とダイアモンドの……はっ!? お主、自然とアイテムを出させようとするのはやめるのじゃ」

「バレちゃった? まあいいじゃない。ほらやって見せてよ」

「ここはお主の店じゃろうに……はぁしかたないのう」


 ルーリーメニュー画面からエメラルドマーマンの皮を選択すると、機織り機上部に緑色の平らな物体が現れた。

その物体、マーマンの皮が機械上部の穴から吸い込まれる。

ガッシャン! ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ! 装置が稼働し何かを裁断したり叩いたりする音が鳴り出す。


「ん? 出てくるようじゃぞ」


 テロリンッ! 軽快な音とともに機械前方から緑色の薄い板状のアイテムが排出された。

【低品質な布板・緑】


「ふむ一番低いランクの素材か? これで防具が作れるのじゃな?」

「ちょっと貸してちょうだい…………そうねこれが5枚で薄いシャツなら作れるわ」

「5枚? 余ってる皮なら使ってもかまわんか。少しまってるのじゃ」


 皮を消費して作られた布のアイテム。防具を作るには、同じものを最低5枚必要だクイドはいう。

ルーリーはあの戦闘一回でエメラルドマーマンの皮を100枚以上手に入れた。そんな数は使い切れないし本サービスへの持ち越しはできない。

だから、ここで無駄に消費しても大して変わらない。

カシャンカシャンと追加で4枚の布板が完成した。


「これでよいか?」

「んー! オッケー! あなたの防具を作ってみるわね。好みの形状はある? 無ければあたしが好きに作らせてもらうけど」

「うむ。ひとまずシャツなんじゃろ? どういう干渉を起こすかわからんし袖は短め、後はお任せで頼むのじゃ」

「任せてちょうだい。制限のせいで表現の幅は狭いけどちゃんとしたものを作って見せるわ」


 クイドが立ったままメニュー操作で防具生成を開始する。

独り言をつぶやきながら突っ立っているその姿はかなり怪しげな物だった。


 家主が黙って立っているマネキン状態になり、手持無沙汰になったルーリー。

手持ちの素材を機織り機に放り込んでみることにした。


 エメラルドからダイアモンドまで4種のマーマンの素材。【種族の名前+皮・爪・牙・鱗】この四種が基本的なドロップアイテムだ。

他に、アクアマリンは槍と盾、レッドベリルは杖と首飾りをドロップしていた。

エメラルドは基本の四種しかアイテムが存在せず、ダイアモンドは逆にそれ以外のアイテムの方が多い。


 色々な素材を入れてみた結果わかったことは、同じモンスターからドロップしたアイテムでもレア度の差が有り、出来上がる布板への補正も変わるということ。

アクアマリンの基本四種だと【低品質な布板+2・青】、槍や盾だと【低品質な布板+4・鋼】。

レッドベリルの方もほぼ同じで杖は【低品質な布板+4・木】首飾りは槍などと同じく【低品質な布板+4・鋼】。

ダイアモンドマーマンの素材は数が少ないので、爪と魔力管というアイテムだけを試した。

【中品質な布板+3・白】【中品質な布板+5・柔】


「出来たわ! 着てちょうだい!」


 クイドから手渡されたアイテムはラッピングされた小さな箱。

ルーリーがそれを受け取り、インベントリを確認すると、緑の生地に白い蛇のイラストが描かれたTシャツが表示された。


「もうできたのか。ずいぶん早いんじゃな。ん? 緑色だけじゃなくなっておるな」

「まあそこはアーツの力ね。色を含め形を整えるのと能力補正を弄る二つのアーツを使ってるわ」

「ふーむ? 蛇が描いてあるがこれはお主が描いたのか?」

「そう! やっぱり素材に制限があるとオリジナリティ出せないから、イラストが付いてたら差別化できるじゃない?」


 装備を選択しプレビュー画面を開く。

そこには、プレイヤーひのりから離れたキャラクタールーリーがキリっとした顔で、とぼけた顔をした蛇が大きく描かれたTシャツを着ている姿が表示されていた。

ファンタジー然としたゴツゴツした腕に現代的でシンプルなシャツが何とも言えないアンバランスさを醸し出している。


「初期装備よりは幾分かマシじゃな。しばらく使わせてもらうのじゃ。これは待っている間に作った物じゃ、わしは要らんのでお主にやる」

「え!? こんなにいいの!? あっじゃあせめて下のも作らせて?」


 ルーリーは試しに作った布板を全てクイドへ押し付けた。その代わりに彼女から下半身用の防具を貰う。

膝上まで覆った恐竜の鱗対策に、太ももの半ばで切られたショートパンツだ。

最後にクイドとフレンド交換をして店を出た。


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