13話 第一回定時連絡会 前
大きな円形の部屋で大勢のキャラクターたちがワイワイと賑やかに喋っていた。
つるりとしたガラス張りの床。壁も透明だが、いくつかの黒い縦線で区切られており、その区切られた部分ごとに海の中や大きな木やドロドロとした沼地などを映している。
「はいはいはい! みなさん、静かにしなさい! 遊びじゃないんですよ! ごほんっえーでは第一回『CBT定時連絡会』を始めます。司会はわたし、GM統合部長ササキです。各種族担当のGM部長は順に現在の状況を報告してください」
低い声の男性が手を上げて周囲のキャラクターたちを仕切り出す。
その見た目は青々とした雑草で編んだ藁人形に近かった。不揃いでちぐはぐで目鼻口もない。
雑草藁人形に促され、キャラクターたちは彼を囲んで円状に並ぶ。
キャラクターたちの容姿はプレイヤー達が遊べる種族をアニメチックにデフォルメしたような物だ。
ドラゴノイドやナーガ、普通の人間にエルフ、人魚や人形、獣人など様々な姿をしている。
彼ら、彼女らは5グループの集団としてそれぞれ少しずつ距離を開けて固まっている。
それはそれぞれの人間性から来る不仲などではなく単純な立場が違うから。
「はい。みなさんが静かになるまで5分かかりました。CBT最中の今は1分でも惜しいのです。気を付けてください。ではまず【人間】から行きますか。代表の方はタナカさんですね。ではそちらの無課金アバターのタナカさんお願いします」
藁人形のササキが集団の一つを指さすと一人の男が前に出てきた。無課金アバターと呼ばれるだけあってその姿は普通の装備も何もない中年男性だ。
もっとも、ほかのメンバーも武器や防具の装備など着けてはいない。彼らとタナカの差は種族だけである。
「はい。タナカと申します。よろしくお願いします。皆さんも全員全裸の無課金状態なんで同じです。あと藁人形は鏡見てください、そっちなんてゴミ以下の外れアイテムだろ。
では始めます。まず平均レベルは3で一番育っている方のレベルは8です。ランク10神託が発生したようです。
プレイヤーの種族配分は、人が5割、エルフ3割、デモンズ1割6分、ドワーフ4分です。
必殺含めて自由に育てられ、見た目もオーソドックスな人間が一番人気で約半数が【人】。エルフやデモンズは見た目が理由ですね。
ドワーフが少ないのはわざわざ鍛冶屋をやろうって人が少なすぎるのと、脳筋パワーファイターをするのにわざわざドワーフを選ぶ理由が薄いからですかね。今のところはまだ大きなトラブルなどは起きていません。えーっとあと何か報告必要でしたっけ」
「いえ、問題が無いのならそれだけで大丈夫です。では次に【セントガード】! 担当はタコみたいな木のイノウエさん」
人間族の話題が終わり、次は聖樹の守護種族【セントガード】。聖樹はぺんたすシリーズにおいて大事な要素だ。ぺんおんでは高さ20mくらいの【聖樹の苗木】とその周囲に作られた施設群を拠点としている。
担当GMのアバターは赤く生い茂った葉っぱと放射状に八本伸びた根っこを持つ木。紅葉の【木人】の男性だ。
「はーいよろしくお願いしますっ。まずセントガードの平均レベルは4。トップで10です。やっぱり序盤は聖樹の加護がつよいですねー
経験値補正と戦闘補正はやりすぎかもしれないです。
プレイヤー分布は獣人が9の木人が1ですね。まあこれは理由も何もないようなもんですが……。あとは特に問題ないかと」
このゲームにおける獣人とは動物の種類を選べるわけではない。耳の形や毛皮の種類、長さや色などを自分で設定しオリジナルの生き物を作る。なので見た目重視のプレイヤーが選ぶことが多い。
一方木人はキャラメイクで弄れる部分が少ない。葉っぱと樹皮の色くらいだ。人間とかけ離れた木人をわざわざ選ぶのは聖樹を信仰しているプレイヤーくらいだろう。
「はいありがとうございます。加護のバランスは注視してください。では次【レプティリアン】、えーっと担当はアオイさん」
次に呼ばれたのはリザードマンの女性だった。彼女は鮮やかな青い鱗のリザードマンで、デフォルメされた状態でも凹凸がはっきりとわかる体をしている。そして彼女の後ろからもう一人、ナーガ種の女性が続いた。
その姿を見て周囲がざわざわと騒ぎ出す。これまでの報告は担当が一人で行っていた。それは詳しい説明が必要なトラブルが無かったから。
彼女らが二人で出てきたということは部下の女性も何か言うことがあるのだろう。
「おっと? トラブルですか? 後ろのはフアさんですね」
「ええそうよ。まあこの子の事はちょっと置いておいてまず報告ね。レプティリアンの平均レベルは3。……トップは20になってるわ」
「……20? まだ二時間くらいなんですが」
リザードマンのアオイが今言ったレベルは運営的には1週間かけて届いてほしいラインだった。そこに開始2時間で到達。明らかに調整の失敗だ。
だが最初に気づけて良かった。上がった理由を修正し該当プレイヤーのレベルを少し下げさせてもらおう。
責任者のササキはレベルが上がった理由を聞くことにした。
「それが、ね? レベルが上がったこと自体はバグとかじゃないのよね。神託をクリアした結果だから。問題はそのもっと前で……えーっと見てもらった方が早いわ。口で言って伝わると思えないもの」
そういうとアオイは自身の背後の壁にデータから呼び出した録画映像を流す。
そこに映るのはマーマンアクアマリンを相手に無傷で戦うルーリー。
マーマンの攻撃を避け、カウンターを次々決める。その美しさにGMたちから拍手が送られた。
「なるほど。これはランク9の『マーマン大進撃』ですね? ランク9神託では敵のレベルを15に設定してあるはず。これを無傷で倒せるならレベルが上がって当然ですか。なぜ既に9が出現してるのか、レベル上昇数が少し多いところが気になりますが……。
それにしても凄い動きですね。招待プレイヤーですか?」
「ええ。彼女のプレイヤーネームは『ルーリー』まあ端的にいうと『モーションクイーン』ね」
アオイがあるワードを出すと、「「「あー」」」と納得したようにメンバーの声がそろった。
そして映像からルーリー個人ステータス画面に表示が移る。




