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11話 細かい所も良いゲーム


(本当に気持ちのいいゲームだ。レスポンスが早いし破綻も無い。それにこれだけの敵キャラを動かしてラグがない)


 マーマン達の頭を踏みつけ、赤い上位マーマンの放つ呪文を避け、彼らの上を走るルーリーは改めてぺんおんの出来に関心していた。

フルダイブゲームはコントローラー操作が必要ない。

今彼女が行っている『敵の頭を踏みつけて移動する』という行動も、コントローラーのあるゲームなら敵に合わせるリズミカルな操作が要求されるだろう。

だが、このゲームでなら目線を少し下げて次に踏む頭を見る、それだけの動作で済む。

後は前に進むというプレイヤーの意志を汲み取ってキャラクターが自分で動いてくれる。

それどころか普段リアルの自分が無意識に行う癖すらも綺麗に再現してくれる。


 感心していたのは自キャラの操作感だけではない。

下にうごめくマーマン達、何百の数が居る彼らはそれぞれが違う動きを行っていた。

頭を踏まれてから上のルーリーに気づく者。自分の方へ向かってくるルーリーを見て捕まえてやろうと待ち受ける者。

踏まれた事に気づかず驚いて足を滑らせる者。大まかにジャンルを分けたその中でも様々な反応の違いを見せている。


バゴンッ!


 マーマン達の上を走り抜けたルーリーがマーマンアクアマリン達に先制攻撃を仕掛けた。

緑のマーマンの上に乗りながら、青いマーマンの内の一体の頭部を思い切り蹴ったのだ。


ルーリーのつま先にアクアマリンの顎がひっかかりその体が浮き上がる。

彼らは近寄ってくるプレイヤーの姿に気づいていた。だが密集したエメラルドマーマンが邪魔で自慢の武器を上手く使えなかった。

あるアクアマリンは左手に持った大きな盾を上げようとした。だが隣のマーマンにぶつかってしまい互いに罵り合う事態に発展している。


 彼らが持つ短い槍は密集した陣形で効力を発揮する。だが、流石に500体の群れが一塊になっている状況ではどうしようもない。

強引に槍を振り回しても、エメラルドマーマンを切り裂くだけで彼女には当たらない。

それでも闇雲に振るわれる槍によってエメラルドマーマン達が倒れ、アクアマリンの周囲に少しだけ空間ができた。


 上位種であるアクアマリンやレッドベリルにとってエメラルドは使い捨て部下だ。

敵を倒すためなら巻き添えにしてもかまわない。


『ギャギャギャッ! ギャー!』『ギャッ!?』『ギャギャッギャ』


 だが、使いつぶされるエメラルドマーマン達にとっては違った。

彼らマーマン種の中に力による上下の区別は有ってもそこに忠誠心などは存在しない。

頭上を跳ね回る女も、手に持った武器で仲間を攻撃する青い奴も等しく敵だ。


マーマン達の上を走り回りながらたまにアクアマリンへ攻撃をするルーリー。

苛立った様子で槍を振り回して少しずつエメラルドの数を減らすアクアマリン。

アクアマリンへのヘイトを強め、数を頼って自分たちの上位種を倒そうとするエメラルド。


(なんだか蚊帳の外になってきた気が。まあいいか。さすがにこのレベルでこの数はソロだときついし)


 殴り合える距離まで近づいたことにより、名前とレベルが読み取れる。

【マーマン・アクアマリン Lv15】

「アクアマリンのレベルは15じゃ! レッドベリルも同じくらいだと思え!」


 ルーリーはボイスチャットを広範囲のイベント用に切り替え、見たままの情報と推測を参加プレイヤーへ伝える。

青い方はまだプレイヤー達と交戦していないが、遠距離魔法を使う赤いマーマンの攻撃は飛んで行っている。 

プレイヤーによっては10以上のレベル差がついた遠距離攻撃だ、当たったらひとたまりもない。


(……ベリルの方を叩きに行った方がいいかな。でもここを離れてこの子たちが落ち着いたら意味がないし。まんべんなくHPは減っている、まとめて倒す?)

 ルーリーは全体の様子を見ながらマーマン達と戦っていた。マーマン達の同士討ちがうまくいっているため避ける方に比重を置いている。

エメラルドに比べて圧倒的に強いアクアマリンだったが、倒すまでに無傷とはいかない。

ここに固まっている十体ほどはどれもHPが半分ほどまで減っていた。


『ギャギャッ……ギャ』


 また一グループのエメラルド達が倒れた。そして彼らが居たスペースにルーリーが降りる。

ルーリーとアクアマリン達の視線が交差する。やっと同じ高さまで降りてきた敵に戦意をみなぎらせるアクアマリン。

やっと本来の戦い方ができる。そう言いたげな表情で盾と槍を構えるマーマン達。


 大盾で身を隠し槍で突く。シンプルな戦法ながら隙が無い。それが十体も並びルーリーを半円状に囲んでいる。

ルーリーは槍を避けつつ一体に狙いを絞り、相手の攻撃する瞬間に蹴り技でカウンター攻撃を当て続ける。


 バゴンッバゴンッバゴンッ!

何度も何度も同じことを繰り返し、最初の一体が倒れた。


【マーマンアクアマリン 1/100 マーマンレッドベリル 0/100】


 アクアマリンの一体が倒れた瞬間、参加プレイヤーの視界にこの様な表示が現れた。

そして理解した。これが今起こっているイベントのクリア条件なのだと。

更に、レベル15のマーマンアクアマリンを倒した経験値も参加者に分配される。

ソロで倒したときと比べて経験値量は十分の一程度まで減少している。だがそれでもエメラルドマーマンより断然多い。


 レベルアップの喜びの声が遠く離れた場所から聞こえる。

ルーリーはそれを聞きつつ、この場にいる残り9体のアクアマリンへと向き合った。


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