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10話 突発イベントはネトゲの華

 

「だ、大丈夫? るーっち」

「……っは!? と、とにかく今はエーテル回収が最優先じゃ。行くぞ」

「了解でござる!」


 カウントダウン中は戦闘状態ではないらしく、三人の近くにはエーテルが出現していた。

 三人は物資を補充しながら作戦会議を始める。


「……人、集まってくれるかなあ。でござる」

「人が集まらないということは無いじゃろう。単純に参加するだけで美味しいのじゃから。それよりも問題は参加者のレベルじゃな」

「だねーわたしらも1から上げたしねー。まあこの数ならすぐ追いつかれそうだけど」


「近くでレベル上げをしていた人たちならそれなりに戦えそう」

「うむ。既に近場で戦っている者ならすぐに来るであろう。おっと来たぞ」


 カウントダウンが残り3分を切ったころ、最初の救援者が到着した。

 ナーガとリザードマンが半々の4人PTでレベルは3と4。その後も続々とプレイヤーたちが集まってくる。

 残り時間1分を切るころにはルーリー達の周りに30人程度のプレイヤーが集まっていた。


「そろそろ時間じゃな。おほんっ! 集まってくれた諸君、わしが今回救援を出した者じゃ。救援感謝する」


 マーマンの群れを背にプレイヤーたちと向き合ってルーリーが語り出す。

 集まったプレイヤーたちはモンスターの大群を見てフワフワした緊張感のまま彼女の話を聞く。


「レベルや慣れも考慮し、わしが先頭に立つ。アクアマリンは極力わしが相手する、もし絡まれ対処が難しければ擦り付けて構わん。

 レッドベリルの攻撃は各自声がけし避ける。遠距離攻撃を持っている者はこのカメの娘と一緒に一塊になって攻撃を頼む。

 前衛はしばらくエメラルドを相手に手堅くレベル上げを優先じゃ。少なくともそれぞれがエメラルドのレベルを超えるまでは我慢してもらう。

 エメラルドマーマンはレベル6じゃ。青と赤は知らんが最低でも10を超えているであろう。

 しばらく経ったら追加で応援も来るじゃろうがそっちはレベル1が多いと思う。

 気づいたものがサポートしてレベル上げを手助けしてやってほしい」


 スタートの時間が迫っているので早口で一気に説明を終えるルーリー。

 指定された分かりやすい目印、ピンクのカメキュータルの周りに後衛職が集まり出す。

 前衛のメンバーもなんとなくだが近くの数人で組む。


「よしっ開戦じゃ! いくぞ皆の者」

「「「おおおーーー!」」」


 タイマーが0になる。マーマン達とプレイヤーを隔てていた透明な壁が消えていく。

 敵の中でまず動き出したのは緑のエメラルドマーマン。プレイヤーより少し多い50体ほどの群れが歩き出す。

 50体抜けてもマーマンの群れ本体は少しも減っていないように見える。

 全体の数は千に近いのだろうか。50体の群れ、その頭を踏みつけ上から飛び越えていくルーリーの脳裏にはそんなことが浮かびすぐに消えた。


「いっけー! カオスホール!」

 キュータルが呪文アーツを起動させる。彼女がキャラ作成時に得たアーツ【混沌術】の最初の技だ。

 このゲームでは魔法を使いたいなら属性適正アーツというものを入手する必要がある。

 これを得ているとプレイヤー本人のレベルや行動により呪文アーツが解禁されるようになる。


【混沌術】

 戦場を混乱させ、術者自身も混乱する。

 世に戸惑いを巻き起こすための力を術者に与える。


【カオスホール】

 自分の前と敵の前に混沌の穴を開け繋げる。

 混沌の穴を通った物は属性が反転する。

 一つが複数に。複数は一つに。


 キュータルの目の前とマーマンの群れの前に出現した虹色の穴。

 その穴にキュータルが通常攻撃の雲を入れる。すると反対側の穴で雲が小さく弾け、散弾のように拡散した。

 ポポポポと拡散の雲がマーマン達にぶつかる。ダメージは下がっているがノックバックは変わらない。


「……ニン! 忍法! 発破の一」

 マーマン達を飛び越えたルーリーの影から現れたカノエ。

 彼女が地面に手を着け、術を唱えると湿った土からボコボコと細長い筒状の物が現れた。


 小さな缶ジュースサイズの小さなそれ。

 ニンジャ少女は、MPを消費して生み出した爆竹をマーマン達の背中に投げつける。


【発破術】

 爆発物を召喚する術を覚えることができる。

 物を爆破することが目的ではない。爆発物を生み出すことが目的なのだ。


 パパパンッ背後で発生した破裂音にマーマンの一部がヘイトを向ける。

 前方からはキュータルの散弾によるノックバック。後方では爆竹によるヘイト異常。

 マーマンの群れの足並みが乱れ、その隙をプレイヤー達が襲った。


 元々、すでに集まっているプレイヤーの数はこの群れより少し少ないくらいだった。

 レベルが多少低くともろくに攻撃もしてこない相手に苦戦することはない。

 そうしてマーマンの第一陣は端から倒されていった。


「次が動くぞ! 今より数が多いのじゃ!」


 残党狩りをせず群れの本隊を見張っていたルーリーが叫ぶ。

 最初の群れの残りが三分の一程度になったタイミングで新しい群れが本隊から動き出した。

 その数は約100。まだ余裕がある。プレイヤーたちの位置までもどっていたルーリーは最初と同じ戦法を取るため駆け出した。


 100体、150体、200体。少しずつ一度に動く数が増える。だが本隊が減っている様子はない。

 普通のエメラルドマーマン程度はいくら倒そうが戦っている間に補充されてしまうようだ。

 戦闘が長引き、ちらほら街から来たレベル1の参加者も交じってきた頃、とうとう青と赤のマーマンも動き出した。


「青と赤が動いてるぞ!」「レッドベリルの遠距離に気を付けて!」


 マーマンとの戦闘に慣れたメンバーたちが互いに声をかけあう。

 500体のエメラルドマーマンの群れに20体ずつアクアマリンとレッドベリルが混ざっている。

 いよいよ出現している内の半分ほどのマーマンが一斉に動くレベルになった。

 プレイヤーも100人に近いが戦闘に慣れていないメンバーも多い。


「ワシは右のブルーが多そうなところに突っ込んでくる左は任せたぞ」


 500の群れの一番深いところに固まっているマーマンアクアマリン。

 その位置めがけてルーリーは一人飛び込んだ。

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