光る竜の復活
久しぶりの投稿になります。
新作の【異世界探偵帖】を投稿しておりましてお休みをしておりました。
しばらく新作を投稿するので、こちらは間があきますがちゃんと書いておりますので、皆様、見捨てずにお付き合いよろしくお願いします。
「オーライっ!オーライっ!」
鬱蒼と生い茂る木々の合間にぽっかりと開けた場所ではたくさんの男たちと船首を地面にめり込ませたフェイロンがあった。そして船首が埋もれていた地面は掘り起こされ、機体周辺には木材で出来た簡易の台座が組まれており、その台座でフェイロンは支えられる形になっていた。
『ピーター、とりあえず少し上げてくんない?』
インカムからアルの声が聞こえたピーターは焔の操縦桿を握る。
「はーい、了解っス」
焔のコクピットではピーターが操縦席に収まり焔を動かしていたのだ。
そしてフェイロンのコクピットにはアルが操縦席に座り操作パネルをあれやこれやと弄っていた。
「ギシギシッ」
アルの合図で、焔が長さ5mほどの丸太を押し下げるとフェイロンは軋む音を立てながら少しづつ船体を上げていくのだった。
「ピーター君そのまま止めててね」
フェイロンの近くに居たJは、小型ライドスーツに乗ったガンツォファミリーの男に指示をだすと、ライドスーツは分厚い木製の角材を浮いたフェイロンと台座の間に滑り込ませていった。
『ピーター君全部入れましたよ』
「それじゃあ降ろしますよー」
焔は丸太を押さえていた機体をゆっくりと起こすとフェイロンは櫓と板の上に静かに着地した。
「装甲は酷い事になってますけど、多分問題は無さそうですね。前方のスラスターも大丈夫そうです。アルさん動かして下さい」
『分かった。おっしスラスターふかすから皆んなをどかしてくれよ』
「了解」
フェイロンの周りにいた男たちとライドスーツが離れ、焔も離れたのを確認したアルはスラスターを点火する。
「ボボッ、ボッ、ボッ……」
久しぶりのスラスター稼働に、始めはキレのない音を立てるノズルだった。
「ちょっと荒っぽくいくぜっ!」
アルはスラスターの出力を60%まで上げると、一気にスラスターをふかすのだった。
「ブォンッ!ゴォォォーーー!!」
船首の周りでは、掘り起こされた土がスラスターの噴射を浴びるとその勢いで崩れていくのだった。
「おっしゃっ、やったぜ!このまま浮かすぞ!」
スラスターのノズルが絞られ、地表に向けて噴射をしたフェイロンはギシギシと音を立てながら徐々にその巨体を台座から離していく。
「おぉーっ!スゲー!!」
「本当に飛ぶんだな!」
作業をしていた男たちの歓声が上がる中フェイロンはその船首が浮かべ、続けて船体全体が浮かび上がらすと、ゆっくり向きを反転させ、別の場所に用意されていた木製のハンガーへと移動して行く。
そして両翼の下部から支持アームが出されるとフェイロンはハンガーの上にゆっくりと着底するのだった。
「さて、どんなもんだ?」
フェイロンから降りてきたアルがJに訊ねる。
「駆動系統とメインエンジンは概ね大丈夫そうですけど、やはり装甲のダメージはかなりのものですね」
「まあ、とは言えエンジンに問題がなかったのはありがたいぜ。装甲はここの材料でなんとかなりそうだろ?」
「はい。とりあえず材料は見つけてもう用意はしてありますから、張り付ければ大気中の飛行であれば問題なくいけそうです。けれど宇宙に上がるのは無理ですが」
「とりあえず飛べる様になりゃあ、あちこち行けるんだしなんとかなるだろ」
「それほど簡単ではないんですけれども……」
「どおっスか?」
アルとJがフェイロンを眺めながら話していると、焔を降りたピーターがやって来るのだった。
「ああ、なんとかなりそうだ」
「装甲を直せばとりあえず飛べる様にはなりますよ」
「よかったっス。そしたらアサヒさんたちを迎えにも行けるっスね!」
「だな。それよりお前アームズの操縦上手いのな。ライドスーツと比べると操作系がかなりピーキーだろ?こんなのよく普通に使えるよなアサヒさん」
「そっスねぇデリケートなんすよね。でも、なんか僕は焔と相性いいみたいっスね」
「ガサツなアルさんには難しいのでしょうけど仕事の丁寧なピーター君には向いているのかもしれませんね。大して練習したわけでもないのになかなかのモノですよ」
「ガサツで悪かったなっ!」
「まあまあ、アルさんの良いところは度胸と勢いなんスから、やっぱりフェイロンの操縦席が一番似合ってるっスよ」
「だよな!いざとなったら頼むぜ期待の新人君!」
「了解っス!」
「さて、明日からは本格的にフェイロンの修理だな。Jしっかり頼むぜっ!」
「もちろんです。まぁジェイク君にも頑張ってもらいますよ」
アルたちがフェイロンを動かしている頃、クバル西の街道をニコルは大きな荷物を括り付けたモトに乗って走っていた。
ショートボブの栗毛が風にたなびくと少し涼しくなってきた空気がニコルの全身を優しく包み込む。
「あ〜気持ちいいな〜」
街道作りがひと段落し、今日はとうとうフェイロンを動かす日であった。
当初の予定より早く街道の整備が出来たのは焔の活躍のおかげで、アサヒが不在の中ピーターが思わぬ才能を発揮し、木々や岩などを早々に片付ける事が出来たのだ。
そして、今まであれこれと尽力してもらったガンツォファミリーへの労いも兼ねて、ゴメスに人数分の弁当を作ってもらったニコルは、それを届ける為にフェイロンへと向かう途中にジェイクの居る魔道具工房へと立ち寄るのだった。
工房に到着したニコルがドアをノックすると中からジェイクの声が聞こえてくる。
「はーい!開いているので勝手にどうぞっ!修理品なら名前と住所を貼って、そこらへんに置いといて下さいねー」
工房の奥にある作業場では、金属の溶接の時に装着する鉄仮面を被ったジェイクが入り口ドアを見ようともせずに仕事をしながらぶっきらぼうに大きな声をあげた。
ちなみに、工房が出来て一ヶ月程度ではあったのだが持ち込まれる仕事は膨大で、そのほとんどはジェイクがこなしていたのであった。残念ながらJは最初こそ一緒に魔道具をいじってはいたのだが一通り触り終えた後は、ほとんど彼に任せてJは他ごとをしていたのだ。
「ジェイクさ〜ん、お弁当持ってきましたよ〜」
ドアを開け中に入ったニコルは、奥で忙しくしていたジェイクに声をかける。
「ニコルちゃんっ!来てくれたのっ!?」
先程のぶっきらぼうな言い方と違って嬉しそうな声を上げたジェイクは、作業をやめると仮面を跳ね上げ満面の笑顔で嬉しそうにニコルに近づいて来るのだった。
「もう忙しくて大変なんだよね〜」
汚れた作業服の上着を脱ぎながらジェイクは目まぐるしく忙しい日々の愚痴をもらすのだった。
「ごめんねジェイクさん。うちのジョセフがちゃんとお手伝いしなくて。でもフェイロンが直ったらちゃんとやる様に言っておくから、もう少し我慢してね」
「ニコルちゃんが謝る事じゃないし、Jさんが悪いわけでもないよ。僕がやりたくてやってるんだしっ、なによりこれでやっとあの【航宙機】に触れるんだからっ、たまんないんだよね!」
《あ〜、この人もJさんと同じタイプか……》
「そうなんだね〜」
フェイロンの話しになると少年の様な顔で目を輝かせるジェイクを見てニコルは愛想笑いで返事を返すのだった。
「それはそうと、なかなかジョセフさんと話しが出来なくてさ。というよりここ最近全然来てくれないから今日の事も昨日聞いたくらいなんだよね。僕もフェイロンが飛ぶとこが見たかったのに!」
「でもフェイロンの修理はジェイクさんにも手伝ってもらうって言ってたから、明日からは一緒にやるんじゃないかなぁ?」
「ならいいんだけどね。そうそうニコルちゃんたちってフェイロンに乗ってここに来たんだよね?」
「うんそうだよ。なんで?」
「そりゃあ、フェイロンや君たちの世界に興味があるからねっ。だってあんなモノたちで溢れてる世界なんて、もう凄いでしょ!想像したら興奮しちゃって寝てらんないじゃない!?」
「あはは……《相当ヤバいなぁこの人》。えっと、私たちの故郷は宇宙にある【コロニー】ってところで、ジェイクさんたちが暮らしてるこの世界とは全然違うんだよ」
「【コロニー】ってのは空の上にある宇宙にある人工の星なんだよね。ジョセフさんから簡単には聞いたんだけど、フェイロンは宇宙とこの星を行き来できるって事なの?」
「多分できるんじゃないかな?でもここから宇宙に行くのは難しいってJさんは言ってたみたいだけど……」
「来たときは落ちてきたって事なの?」
「まぁそんな感じなのかな……、星って重力があるでしょ。宇宙には重力はないから、近づくと落ちちゃうんじゃないかなぁ」
「どうやって飛ぶんだろう……?」
ジェイクは一人興奮し、あれこれとニコルに訊ねようとするのだった。
「ごめん。やっぱり私じゃ分かんないから詳しい話しはJさんに聞いてね」
しかしニコルは科学的な事柄や、メカニック関係の知識は乏しく曖昧な返答しか出来ないのと、ジェイクの熱量に面倒くささを感じ話しを切り上げようとするのだった。
「じゃあ、最後に一つだけっ!フェイロンは光るの?」
「いや、光らないけど……」
「そうなんだ……」
「なんで?」
「半年くらい前に空を見てたら、赤く光るモノが見えたんだ。最初は流星かと思ったんだけど、だんだんとゆっくりになって、しかも方向を変えて飛んで行ったんだよ。僕は伝説の竜を見たかと思ったんだ。で、もしかしたらその正体はフェイロンなのかと思ってさ」
「竜?」
「そお、世界には実際に飛んでるところを見た人もいるらしいんだよ」
「ふ〜ん」
《たしかにフェイロンって竜に見えるよね。そおいえば初めてサマンサさんに会ったときも竜の話しがあったかも……》
ジェイクの話しを聞いたニコルは、初めてクバルに来た時を思い返すのであった。
「じゃあ私はこれからアルたちのとこに行くから、がんばってね〜」
「お弁当ありがとうございました。気をつけて下さいね」
工房を後にしたニコルはモトにまたがり再び街道を走る。
《アサヒさんたちはどおしてるかな?チョコレートもだけど、何か見つけられたらいいんだけど……》
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