フィルモア
飛行船がアリア大陸に到着し、大陸を左手に海上を進むことしばらくすると、進行方向の海上に突き出た半島が見えてくるのだった。
そして船員達は着陸の準備の為に慌ただしく動きだす。
「もうフィルモアに到着します。アサヒ殿達も手荷物の確認をお願いします。」
ジーンに促されアサヒとレイモンド達は下船の準備を始めるのだった。
しばらく進むと飛行船左側の大陸に街が見えてくる。そこには王都カルナが広がっていたのだ。
日が傾き出し、王都カルナは暖かい陽の光に照らされキラキラと輝いてた。街に入り徐々に高度を下げていった飛行船は、街の中で一際目立つカルナ城の目前に迫っていた。
「すっご〜い大っきい街!あれがカルナ城だね、キルマー城もりっぱだけどカルナ城も綺麗だね〜。」
『広い街だね〜。大きな建物がいっぱいあるよ〜。』
デッキではアコとネェルが眼下に広がる街を眺めてはしゃいでいた。
王都カルナの上空に入り、港とそこに併設された飛行場が見えてくる。
飛行船は速度を落とし、更に高度を下げると静かにその巨体が広場に近づく。船からロープが降ろされると、飛行場に待機していた職員が一斉に着陸の準備に入るのだった。
そして彼らは無事フィルモアの王都カルナに到着した。
「皆さん、空の旅お疲れ様でした。お手荷物などお忘れ物のない様、今一度ご確認いただきましたら、乗員の案内に従って下船して頂きます。」
船長の挨拶が終わり、乗客らは次々と船から降りていく。しかしその中にはダスティの姿はなかった。
昨晩の余興の後からダスティは個室に籠ったままだったのだ。
アサヒとレイモンド達も船を降り、乗客と一緒に飛行場にある入国審査場のある建物に向かい歩いていく。
建物に入るときに飛行船を振り返ったアサヒは飛行船から降りてくるダスティ達を見かけるのだった。ダスティは額に包帯を巻き付けており、周りにいる騎士団達が心配する素振りを見せていたがそれを邪険に扱い、遠目からもあきらかに不機嫌な態度をとっていたのだ。
「アサヒさんアレ、笑えますよね。」
アルマもその光景を見て、アサヒに話すのだった。
「小っちゃいおっさん、すっごい弱かったね。」
『なんか可哀想だね。お友達いないだろうなぁ。』
「でしょうねぇ。私も彼の事嫌いですよ。」
「ええ、会長のおっしゃる通りです。」
気付くと、アサヒの横には皆んなが居た。そしてダスティ達を見て一言づつ感想を言うのだった。
「まぁそんな事はどうでも良いので、手続きを済ませて今日は宿に向かいましょう。」
入国の手続きを終え、アサヒとレイモンド達は王都カルナに入る。
「え!?何あれ!」
「大きな荷車が動いてるよ!中にたくさん人が乗ってる!」
建物の街側の扉の先には大きな道があり、そこには、大きさ5mを越す荷車の様な乗り物があった。周りを見ると同じ様な乗り物がいくつか道を走っていたのだ。アコとアルマはそれを見て驚いた顔をするのだった。
「あぁ、あれはビーグルという乗り物だよ。」
「モタードと同じでモトで動いております。ズーの鳥車もありますが、より沢山の人や物を運搬できますので、数は多くありませんが街中までの定期航路の往来などに使われております。」
「大きな道がないと使いづらいんだよね。だからキルマーじゃあね。早く道路や街道を整備してくれたらいいんだけどね。」
《フィルモアなら何かありそうだな。》
アサヒは技術水準がヴァル・キルマより高い事に期待を抱くのだった。
「他にも何かあるんですか?」
「う〜ん……、他には武器かな。短筒や大砲といった射撃用の物ですかねぇ。」
「ですが、会長のおっしゃった武器は騎士団などが取り扱う品ですので一般の方へは販売はしておりません。」
レイモンドとジーンが説明をする。
「ご興味があるみたいですが、何かお探しなんですか?アサヒ殿、」
「いや、珍しいのでつい……。」
「へぇ、ビーグルを見てもさほど驚いた様子もありませんでしたけどもねぇ。」
「あ、いや、そんな事ないですよ。」
慌ててごまかすアサヒを訝しむレイモンドだった。
「せっかくですし、ビーグルに乗って街中まで行きましょう。」
王都カルナは幾つもの地区に分けられており、その地区毎に特色があるのだった。そしてビーグルはその地区を繋ぐ乗り物としてカルナの住人の足になっているのだ。
アサヒとレイモンド達は飛行場のある港地区から宿と商店のある商業地区へとビーグルに乗って移動する。
「なんか都会って感じだね。」
「洒落た店が多いよね。お土産なんにしようかな。アサヒさんニコルちゃんの好きな物ってなんだか分かります?」
「どおだろ?やっぱりアクセサリーとかじゃないの?」
「ですよね。レイモンド卿いいお店知りませんか?」
ビーグルの窓から眺める街の景色は、王都キルマーよりも洗練された都会だった。
立ち並ぶ店、そして住人や買い物客の姿もどこか垢抜けたもので十二ある国の中で一番栄えた国の王都だけはあるのだった。
「いいですよ。明日にでも買い物に行きましょうか。」
「お願いします!あと観光とかも出来ますかね?」
「あたしも一緒に行きます!ついでに美味しい物食べたーい!」
『じゃあネェルも行くー!』
「もちろんフィルモアの王都ですからね。観光はもちろん、美味しい店もたくさんありますよ。せっかくの外国ですから楽しみましょうか。」
レイモンドはアルマとアコ、ネェルの要望を受け、王都の散策を約束するのだった。
「皆さん、観光や買い物もよろしいですが、我々の目的はヴァル・キルマの名産品チョコレートの宣伝です。国王より承諾を得た仕事ですので、その事をくれぐれもお忘れにならない様にして下さい。」
「「すいません…。」」
「少しくらいはいいんじゃないのかい。相変わらずだねぇ。ジーンは、」
すっかり観光気分の彼らにクギを刺すジーンにアルマとアコはしょんぼりとした表情で頭を下げる。そんな彼らをやれやれといった顔でレイモンドは慰めるのだ。
《この国なら何か手掛かりがあるはずだな。なんとか時間を作って情報を集めるとするか。》
初めての外国で気持ちが浮き立つ彼らをよそに、アサヒは自分がするべき事をしっかりと見据えていたのだった。
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