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キルマー城にて


 レイモンドとの商談を終えアサヒとサマンサは王都キルマーの観光に向かう。


「さて、後はレイモンド卿からの返事を待つだけなんで街を見て回ってもいいですかね?」


「はい、せっかくですので行きましょう。まずはお城はいかがですか?東の展望塔は開放されておりますから上まで登れますわよ。海も見れますしとても良い景色が眺められるかとおすすめですよ。」


「海ですか!本物は見た事がないんで見たいです。俺たちの暮らしてたとこだと人工の池があるくらいで、海は写真や映像でしか見たことがないんですよ。」


「写真はわかりますが《えいぞう》とはなんですか?」


「映像っていうのは、写真を動かして見る事が出来る技術です。それを通信技術と組み合わせると別の場所で見たり、記録して後から見たりする事も出来たりするんですよ。だから祭りでレイモンド卿がやった舞台とかを違う場所で見たり出来るんですよ。」


「そんな事が可能なんですね。通信と呼ばれるものがあるのは存じておりますが、私共の世界では禁忌の技として制限されておりますからね。」


「そうでしたね。ちなみにその通信とさっきの映像の技術が発展して俺達の世界では色々と応用されてたんです。街中にはスクリーンと呼ばれる映像を映し出す壁や、掌に収まる程の機械があって、世界の情報が誰でもいつでも見て知る事が出来たんです。それは行ったことの無い場所や、した事のない経験を擬似体験したりと、人々の娯楽に使われてました。だけどその技術は軍需、いわゆる戦闘行為にとても大きな影響を与えました。その果てに大きな戦争が起きる様にもなったんです。」


「そうですか……、そう考えると私共の世界でその様な技術を発展させないクライス聖教会の教えは正しいのかもしれませんね。」


「とは言え、それは技術の一側面を捉えた見方だと思うんですよね。色んな事を知るのは良いことだと思います俺は。」


「確かに、どんな知識や知恵も使う者が正しく使う事が出来れば良い方向に働くはずですから、とは言え現実はそう簡単ではありませんからね……、難しい問題です。」


「俺もクライス聖教会の教えに同調できる部分はあります。ただバランスの問題なのかなって、人類の発展と戦争、それに伴う環境破壊は常に問題でしたし、やっぱり難しい問題ですよね。」


「世界は違えど抱える問題は同じですわね。ですが私は人の善性を信じておりますよ。アサヒさん達も私達も自らの手でよりよい道を模索して生きているのですから、どんな問題もいつか必ず解決できるのではないでしょうか?ですからアサヒさん達もこの先の道は開けるはずです。」


「そうですよね。まだまだやれる事はあるはずなんで頑張りますよ。なんだか難しい話しになっちゃいましたね……、それより今は海が見たいんで行きましょうか。」


「はい、それではお城の塔に参りましょう。」


 二人は鳥車に乗り込むと、街の東、海沿いに聳え立つ国王ハルバート・フォン・キルマーの居城へと向かうのだった。


 鳥車は商店が並ぶ大通りを走る。王都の街は発展しており、レイモンド商会本店をはじめ立派な建物の並ぶ幹線道路はクバルと比べて都会の雰囲気を醸し出していた。

 商業区を抜けるとアサヒ達を乗せた鳥車は住宅街に入った。住宅街は丘陵地の麓から形成され城に近づくにつれ貴族や豪商が暮らす地区になり、その最奥にキルマー城があるのだ。


「さあ、まもなくお城の入り口に到着しますわ。」


 キルマー城の城門には騎士団が常駐しており入城の際には積荷検査等の検問が行われていた。城門は荷車等が通る大きな正門と城を囲む塀が続いており、正門の傍には歩行者の通用口があり、鳥車を降りたアサヒとサマンサはそこへと向かうのだった。

 通用口には列が並び、王族との謁見等の商人や観光客で賑わっていた。

 そして列に並ぶ人を横目に豪華な荷車が城へと出入りする。


「結構人が居ますねぇ。」


「キルマーの観光名所と言えば、キルマー城の展望塔ですからね。王都と海を一望できるので王都の住人の憩いの場にもなっておりますよ。」


 騎士団の衛兵が並ぶ正門の内側では荷車を止め中身の実検が行われていた。通用口の列にアサヒとサマンサが並んでいると、数人いる王宮職員の一人がこちらを窺い見ていたのだ。

 

「サマンサおばさん。こんにちは」


「あら、ごきげんよう。お仕事頑張ってるみたいね。」


 その職員はサマンサのそばに来ると笑顔で挨拶をするのだった。


「キルマーには仕事で来たんです?」


「ええ、先程までは仕事でしたが、合間にキルマーの案内ついでに観光をと思いましてね。クバルから客人を連れておりますし、せっかくですのでね。アサヒさんこの子は私の甥っ子のセルジュといいます。」


「こんにちは、クバルでいつもサマンサさんにお世話になってるアサヒです。」


「初めましてセルジュです。何かお困り事があればいつでもおばさんを頼るといいですよ。なんせ根っからの世話好きですから。」


「ははっ、確かに、でもクバルの方は皆さんいい人ばかりですよ。いつも助けていただいてるんでね。」


 屈託の無い笑顔がよく似合う正に好青年という言葉がぴったりのセルジュはサマンサによく似て人柄の良さが滲み出ていたのだ。


「今から展望塔に参りますの、今日は天気も良いですし見晴らしは良さそうですわね。」


「いいですね!水平線も綺麗に見えると思います。他にもおすすめのところもありますよ。なんといってもヴァル・キルマの王都ですから、行政、商業そして観光と三本揃った大都市です。存分に堪能していって下さい。」


「はい、楽しませてもらいます。」


「それからサマンサおばさん達ならわざわざ通用口なんて通る必要ないんで、こっちから行ってくださいよ。」


 セルジュは通用口での検問など要らないと、二人を城内に招くのだった。

 展望塔の入り口は、国王の居城とは別の建物にあり高く聳える塔の途中には居城に繋がる連絡通路があった。


「下は一般の人が多いんで、城から入りましょう。」


「お仕事はよろしいんですの?」


「大丈夫です、部下に任せますんで。」


 セルジュはサマンサと同様に仕事も出来き立場はそれなりに高く、まだ若くはあるが検問所の責任者を務めていたのだ。

 そしてアサヒとサマンサはセルジュに連れられ、居城から展望塔に向かう事になったのだ。

 展望塔のある区域から更に奥に国王の居城がありその周囲は城壁で囲まれている。一行は城正面にある広場から二階へと上がる階段を登り城内部を通って塔に向かうのだった。

 

「なんか特別扱いしてもらって申し訳ないですね。」


「いやぁ、そういう訳でもないんですよ。クバル首長を一般人として扱ってるのを偉い人に見つかったら、その方が怒られちゃいますしね。プライベートとはいえ、おばさんはそうゆう事を嫌がるから困るんです。王都とクバルは違うって言っても聞いてくれないんですよ。」


「私が特別という事などありませんから、皆さんと同じで良いのですけれどね。」


「と、いう訳なんで遠慮はいりませんからね。」


 一行は二階通路の途中にある連絡路から塔を目指すのだった。


「おや?サマンサ殿とアサヒさんじゃないですか。」


 通路を進むアサヒ達は、声をかけられた方を向く。するとそこにはレイモンドと秘書がいたのだ。


「これはこれはレイモンド卿、先程はありがとうございました。私共は街の案内がてらこちらに参りましたの。せっかくアサヒさんがキルマーにおいでになったのですから、キルマー城の景色を楽しんで頂こうと思いましてね。」


「あぁそれはけっこうですねぇ。こちらからの景色は一見の価値はありますからね。ちなみに私は国王ハルバート様に例のチョコレートをお持ちしたのですよ。早速お話しをしようかと思いましてね。」


「それはそれは、ご足労ありがとうございます。良いお返事を期待しておりますわ。」


「そうだ、せっかくですからご一緒にどうでしょうアサヒさん?お時間はありますよねサマンサ殿?」


「え!俺なんかがいいんですか?」


「私とサマンサ殿が居れば問題はないかと思いますよ。」


「そうですね。国王に直接お会いする機会はなかなかありませんし、レイモンド卿にこうおっしゃって頂けるならば、ご一緒しましょう。」


「いやぁ、大丈夫ですかね…。」


「せっかくの機会ですし、参りましょう。」


 レイモンドの誘いを受けたアサヒとサマンサは国王との謁見に臨む事になった。


「仕事ってレイモンド様とだったんですね。」


「はい。こちらのアサヒさんが素晴らしいお菓子をお作りになったので、レイモンド様にお持ちしたんです。」


「そのお菓子、後で僕にも食べさせて下さいね。」


 二階通路奥には謁見の間があり、部屋の奥には入口の扉よりも大きく豪奢な扉が設けられていた。その扉の先は国王とその親族の居城となっているのだ。


「それじゃあ僕は仕事に戻りますね。良いお返事頂けるといいですね。頑張って下さい。」

 

 謁見の間でセルジュは二人に挨拶をすると仕事に戻っていった。レイモンドの秘書を部屋の外に残し、アサヒ、サマンサそしてレイモンドは中へと入る。そこにはテーブルと椅子があり、アサヒ達は国王ハルバートを待つ事になった。


「いやぁ、なんか緊張します。」


 偶然レイモンドに出会った事で、急遽国王との対面となったアサヒは、一国の統治者で君主である国王との面会に緊張を隠せないでいた。


「国王ハルバート様はとても気さくなお方です。そんなに堅くなる必要はありませんよ。」


「その通り、そしてあなたのチョコレートが国王お墨付きを頂戴出来ればフィルモアでも大々的に宣伝できますからね。この謁見は必ず成功させなければなりませんよ。」


 レイモンドは意地悪な笑みをアサヒにむける。


「ますます緊張しますよっ!やっぱり俺はセルジュ君のとこにいます。」


 しかしアサヒが席を立ったその時、奥の扉が開くのだった。

 そこから恰幅の良い優しげな笑みを浮かべた初老の男性が現れる。そして兵士ともう一人の男が入って来るのだった。初めに姿を見せた初老の男性は国王ハルバートであった。そして近衛兵と側近が一歩下がった場所で国王の傍を固め部屋に入って来たのだ。

 サマンサとレイモンドは、国王を確認すると席から立ち上がり頭を下げる。そしてそれを見たアサヒも二人と同様に慌てて頭を下げるのだった。


閲覧ありがとうございます。


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