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ネェル

修正版です


 アサヒは少し早い昼食後にアルに連絡を入れる。


「もしもしアルか、荷物の搬入なんだけど俺がいなくても問題ないよな?後で詳しい話はするけど、ちょっと軍に用事が出来たから行けそうにないんだよね。」


「はい大丈夫っスよ。もう荷物の受け渡し始まってますし、なんも問題ないっすよ」


「そっか悪いな。じゃあ夕方の出港までには戻るから頼むね。」


 アルとの電話を切りそのままミハエルに電話を掛けるアサヒ。


「ミッチー待たせた、協力させて貰うよ。」


「ありがとうございます。大尉ならそう言って頂けると思っていました。」


 地下からのエレベーターが地上に上がり、中から笑みを浮かべたミハエルがアサヒ出迎える。ハメられたなと少しため息を漏らしつつアサヒは自分が高揚しているのを感じていた。

 

「じゃあ詳しく教えてくれよ。新しい焔とネェルの事、」


 新しい兵装とは、マスターAIと指揮官機による自律型アームズの管制コントロールと、超重粒子加速砲の運用であった。

 この時代のエンジンは旧世紀の化石燃料による内燃機関はほぼ廃れ、新しく発見された原子を利用した発動機が大半を占めていた。

 しかし大出力を捻出するためには大型化は否めず、分子のプラズマを利用したプラズマジェット等とのハイブリッドが航宙機やアームズなどには利用されていたのだ。

 その発動機に使用される原子の特徴は電気負荷をかけることにより、あらゆる宇宙線を吸収をする点にあり、それをエネルギーに変換する事によって発動機を動かしているのだ。

 そしてエネルギーの元となる宇宙線は無尽蔵に降り注ぐので原理的にはその発動機は永久機関と呼べるのだった。

 さらに、この原子を亜光速で衝突させる事で反物質を生成し、兵器として運用も可能であった。反物質を射出することによる対消滅で物質を消滅させるのである。

 その際のエネルギー放出で膨大な破壊が生じる。しかし、扱いが非常に難しく実現は不可能とされていた。しかし不安定ではあったが実験は成功しており実用段階まであと少しとなっていたのだ。それが超重粒子加速砲であり、その応用技術で開発されたのが反物質フィールドである。生成した反物質の弾頭を射出させる際にフィールドを展開し砲身にして撃ち出すのだが、それをシールドとして使用することによりエネルギー波を無効化できるのだ。


 アサヒ達が入港したコロニーの港とは反対側には軍専用の港があった。そこでは新型アームズがハンガーに咥えられ、その動力には火が灯り各部駆動部の稼働テストが行われている。そのアームズ【焔】のコクピットでは、専用パイロットスーツを纏い目を閉じるアサヒが居た。そして機体チェックの終わったコクピットにモニター室のミハエルから通信が入る。


「久方ぶりの愛機のシートはいかがです?大尉」


「いろいろ思いだすな…。あの時はすまなかった。」


「やめてください大尉。おかげで生きているのですから、感謝こそすれ謝罪をうけるおぼえなどありませんよ。」

「ただ、前線には出られなくなった事が悔しいと感じてはいますが、こうして連合軍人として新たな目標を持てました。」


「そう言ってもらえると助かるよ。」


「はい、それでは始めましょうか。」


 ミハエルが告げると機体のモニタリングが始まる。ハンガーの拘束が解かれた焔がゆっくりとその巨体を前進させる。背部にあるスラスターが点火の光を瞬かせると無重力の宇宙空間に静かに舞い出て行くのだった。


 そして模擬戦が始まる。

 模擬弾の弾幕が張られる中、焔は漆黒の宇宙を華麗に舞踊り、一機、二機と次々と撃破していく。本来であれば1対5のハンデは一般パイロットであれば敗戦は間違いなかったが、焔とネェル、そしてアサヒであればむしろ肩慣らし程度であったのだ。


 模擬戦を終えモニター室で先の戦闘をみながらアサヒとミッチーがデータの確認をしている。


「お見事でした大尉、ブランクはありませんね。」


「いや、機体とネェルのおかげだな。10年前と比べて出力、反応速度が格段に良くなってるよ。しかもシールドの防御はすごいな。実体兵器以外はまったくダメージがないんだな。」


「そちらは反物質フィールドの応用です。ネェルによる管制でシールドの展開をしているのですが理論的には出力次第で100ヤード以上は可能だそうです。」


「へぇ、中型船なら余裕でカバーできるんだな。そういえば、反物質フィールドって超なんとか砲の技術だろ?例のブラックホールキャノンって物騒な名前の。」


「ええ、ブラックホールキャノンなんて大袈裟な名前は年寄りが付けたものです。まったくくだらない。」


「どんなもんなんだ?」


「反物質を生成して撃ち出すシンプルなものですが、その威力は1gで有名なヒロシマ型核爆弾の約3倍の破壊力になります。そして汚染物質は無しです。」


「はぁ、人が扱う代物じゃないな…。」


「あくまで抑止力ですよ。賢明な人類は過ちののちに正しき道を選ぶ。旧世紀に核の使用や事故はありましたがその都度乗り越えてきました。」


「今回もそーだといいけどな。」


「ところで、焔とネェルのマッチングはいかがでした?」


「反応速度も管制も問題ないと思うが、多分扱えないな。フルダイブもあるんだろ?」


「お見通しですね。当時ですらフルダイブできたパイロットは数名しかおりません。ですが焔とネェルの真価はそこです。そしてそこが課題なんです。」


 フルダイブとは機体管制を手動ではなく、意思のみで行う事を前提にしたコントロールシステムである。それは人が自分の身体を動かすがごとくアームズを操作する事であり、10m大の巨人と人との同一化を意味する。

 もちろんアームズにかかる負荷もパイロットにフィードバックされ、通常人体にない機構を操作せねばならず、一般パイロットでは手動コントロール以上に機体のポテンシャルを上げることはできない。その為サポートAIが搭載されるのだ。そしてそのAIがネェルであった。


「正直今のオレじゃあ100%使いこなせるか分からないぞ。」


「その課題を解決するために、新しいネェルが必要になったのです。」


 ミハエルはそう言うと、隣に繋がる扉を開けて中にいる誰かに声をかけたのだった。


「さあ、こちらに来なさい。」


『さっきはいっしょに戦えて楽しかったよ。はじめましてネェルです。』


 モニター室の隣にあるサブモニター室から少女型ヒューマノイドがアサヒの前に現れ、場違いな可愛らしさで話しかけるのだった。


「おい!なんだこれミッチー!?」


 目の前にいるヒューマノイドにただただ驚いたアサヒだった。


「驚かせて申し訳ありません。彼女は新しいネェルです。これまでのAIを超えたAIを作成する為に元のネェルをベースに人格プログラムを組み込み、より人の脳に近いCPUを搭載したヒューマノイドです。」


「え、焔のネェルと同じネェルなの?」


『そーだよ。えへ、びっくりした?ネェルはみんなの役に立つためにがんばってるんだよ〜。』


閲覧ありがとうございます。


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