白い悪魔
白い悪魔編、これにて終了。
自分的に好きなストーリーでした。
いろんな意味で…
西の森、パオロと別れた狩人達三人がいた。
「パオロさんはどうしたんだろうね?」
「さあ、この間から来てるクバルの客人のとこじゃないのか。」
「パオロさんも色々大変だね。さあ、そんな事より俺達も獲物を見つけないとな。さっきのはジャガヌートかも知れねえから用心しねえと。」
「それもそうだが、白いヤツのがおっかねよ。こないだパオロさん達が何匹か仕留めたから怒ってんじゃねぇのか?」
「とは言え、レンフォなら高値で売れるからな。今日もお出ましになんねえかなぁ。」
狩人達が森に仕掛けた罠を見回りながら、会話していた。
「シッ、なんかいるぞ。」
狩人の一人が気配を感じ、他の者に伝えると、森の奥から三匹のレンフォが姿を見せるのだった。三匹はまだ狩人には気付いていない様子でキョロキョロと辺りを見回しながらこちらに向かって来るのだ。
「よしっ、レンフォだ。三匹なら俺達だけでやれるぞ。」
狩人達は木の陰に身を潜めながら、風下からレンフォに近づく。その手には片手弓を携えじりじりと距離を縮める。
狩人達が射程内に入ると、その一人が手信号を仲間に伝えた。
「プンッ」
「プンッ」
「プンッ」
「グギャーッ!」
弓が矢を放つ音を立てると、矢はレンフォの胴体を捉える。怯んだ隙に狩人達は一斉にレンフォに飛びかかるとショートソードが首をはねていった。
「やったぞ!」
「よしよし、いい金になるな!」
狩人達は、早速首をはねたレンフォの血抜きを始める。ふと、彼らの背後から気配がするとレンフォが一匹現れたのだ。
「ギギャーッ!」
「お?なんだ、また出やがったぞ。今日は大漁だな。」
狩人の一人が嬉しそうな顔をすると、今度は違う方から、レンフォが現れた。そして気がつくと、狩人の周りには何匹かのレンフォが姿を表していた。
「グゲッ」
「グゲッ」
「不味いっ!囲まれてるっ!!」
「逃げるぞ!!」
狩人の一人が逃げようと背中を向けると、頭上から不気味な羽音がなった。
「バサッバサッ!!」
ドスッと重量感のある音と共に巨体が彼の行手を塞ぐ。通常サイズのレンフォはその身体を茶色がかったくすんだ灰色の羽根で覆われていた。しかし彼の前に現れたそれは首元に少し灰色の羽を残し身体と翼を白い羽根で覆われ一見すると美しくあった。しかし白い全身から生える首と頭、そこにある大きく鋭い瞳と嘴は凶悪さを醸し出し、そして地面を踏みしめる太い脚とその鉤爪は凶暴な力をまざまざと見せつけていた。
「し、し、白い悪魔だーーー!!」
「レンフォの白い悪魔が出たぞーーー!!」
驚愕の顔と声で叫ぶ。他の狩人が声の方を見た。しかし彼らが見たのは凄惨な光景であった。
叫び声をあげた狩人は、頭から胸あたりまで巨大なレンフォに噛みつかれていたのだ。大きな嘴に挟まれた狩人は、逃げようと巨大な嘴を両手で掴みもがく。
少し身体が抜けたその背中には鋭い嘴が食い込んだ跡が生々しく、千切れた服の下からは大量の血が流れ出している。
しかし、身体が抜けた事で頭だけ嘴の中に残ってしまった彼は、その後更に悲惨な状態になるのだった。
白い悪魔と呼ばれるレンフォは彼を無造作に持ち上げると嘴を左右に振る。人間一人を咥えているにも関わらず、さも事なさげに狩人を振り回すのだった。
「ブチブチブチッ」
鈍い音がした後、白い悪魔の嘴から狩人は離れる。
「パキャッ」
その嘴が何かを噛み砕く音を鳴らすと、隙間から赤い色の何かが垂れ落ちていく。
投げ飛ばされた狩人の身体は、ピクピクと痙攣し、あるはずの頭はそこには無く、代わりに白い脊骨と吹き出す血が鮮やかな色でそこに現れていた。
「おーい、アル君、アルマ君無事か!?」
森から戻ってきたパオロは目の前の光景に驚愕をした。
「おいっ!ジャガヌートじゃないか!!」
少し離れた場所で寝転んでいた母親に気が付かなかったパオロは、テント付近に居たアルと撫でられているネロに近づいてから、その存在に気付いたのだった。
「あ、パオロさん、とりあえず大丈夫みたいです。」
驚くパオロにアルマが声をかけた。
アルとアルマは、先程の出来事を話すのだが、パオロは終始信じらない様子で聞くのだった。
「いや俄には信じ難いが…。この子、いやネロとこの母親が特別なのか…。とにかく、やはり知能が高いという事か。」
すると、その時母親が何かに気付き森を振り返る。そして立ち上り威嚇の声をあげた。
「ガァルルルルッ!!」
アルと対峙した時とは比べ物にならない殺気を纏った母親、睨みつける先の森では蠢く気配がいくつもあった。
そしてレンフォの群れが飛びだしてくると、ジャガヌートの母親を囲む。
「なんだよっ!またレンフォか!?」
アルとアルマは、それぞれ武器を手に母親に襲いかかろうとするレンフォに向ける。
「ちょっと待て、様子がおかしい。いつもならすぐに襲うはず…、もしや、ヤツが来ているのか!?」
何かを気取ったパオロが、アル達に忠告をしたその時である。
「バサッ、バサッ!!」
森から白い羽を羽ばたかせ白い巨体が飛んで来る。
「なんだありゃっ!?」
「アイツがレンフォの親玉だ、アル兄!!」
「クッ!白い悪魔か…、不味いぞ。」
「ギィゲェェェェェーーーーッ!!!」
耳障りな雄叫びをあげる白い悪魔、その咆哮を合図にレンフォは一斉に母親に攻撃を始める。パオロはネロを抱きかかえ、木陰に身を潜める。
「グァッ!」
「グゲゲッ!」
飛びかかるレンフォを次々と噛みつき投げ飛ばす母親、そこにアルとアルマも加勢し、二人と一匹はレンフォの群れを倒していく。
「おらぁっ!」
「せりゃっ!」
アルとアルマも飛びかかるレンフォの首を見事に切りつける。アルは一度だけではあるが戦闘を経験し、持ち前のセンスで見事に剣を扱うのだった。
「やるじゃない、アル兄!」
「あったり前だぜっ!一回やりゃあ後はまかせろやっ!!」
「バサッ!」
頭上に黒い陰を感じた二人が飛び退くと、白い悪魔は母親と二人の間に飛び込んで来た。白い悪魔は母親と向かい合うと、ジリジリと攻撃の機会を伺う。
「グゲッゲッゲッ」
不気味な鳴き声を上げる白い悪魔に背後から剣を振り下ろすアル
「こっちにもいんぞ!こらっ!!」
しかし、アルの刃は空を切り剣は振り向いた大きな嘴に噛み捕まれてしまう。そして白い悪魔の膂力は凄まじく呆気なく剣を奪われてしまうのだった。
振り返る白い悪魔、獲物を取られたアルは素手で対峙するほかになかった。
白い悪魔は大きな嘴をアルに向けると鋭い突きを何度も繰り出す。なんとかそれを躱すが武器のないアルは防戦一方になってしまう。
「お前はここにいるんだぞ。」
ネロに言い聞かせたパオロは、片手弓に矢を番え、アルと白い悪魔に向かい走ると、その矢を放った。しかし、放った矢は分厚い羽と皮に阻まれ突き刺さる事なく、ただ白い羽根を一枚宙に浮かせただけで地に落ちる。それでも片手剣を両手で握り、ありったけの力で首をめがけ振り下ろした。
「ドガッ!」
しかし、パオロは白い悪魔の大きく太い脚の一撃の餌食となるのだった。
吹き飛ぶパオロは、蹴りの勢いを全身で受け地面を転がる。
「パオロさんっ!!」
アルマがかけ寄ると、額から血を流したパオロだったが意識はあった。
「クソッ、腕が上がらん、折れたか。」
起きあがろうとするパオロ
「痛ッ!」
どうやら肋骨も何本か折れたようで、動く事が出来ないでいる。襲いくるレンフォからパオロを守りながらアルマは次々とレンフォをなぎ倒す。
母親は白い悪魔に挑みかかっていく。
「グワァォッ!」
母親は白い悪魔の背に飛びつくと、鋭い爪を身体に食い込ませ、その首に噛み付く。
しかし白い悪魔は羽を広げ羽ばたくとその脚力で高くジャンプし、母親を地面にたたき落とす。そして母親めがけ着地すると大きな爪を突き立てる。直撃は免れたものの、鋭い爪の一撃を食らってしまった母親だった。
全身から血を流す二匹の野獣、しかし激しい戦いは終わらない。
二匹が対峙す最中、アルはテントに向かい走ると、ガンツォから譲り受けた刀身の長い両手剣を背に携えると二匹に向かい走る。
「おいっ!母ちゃん俺を乗せてもう一回アイツの背中に飛びつけっ!!」
「アル兄!何するつもりだっ!?」
「アルマ、白いヤツの注意を引きつけてくれっ!!」
アルマは、言われた通り剣戟を白い悪魔の顔に見舞い注意を引く。そして母親はその背にアルを乗せ白い悪魔の側面から飛びかかり脂肪と羽根に覆われた胴体に食らいつく。
アルは背中の長剣を抜くと母親の背中から更に高く跳躍すると、振りかぶった刃に全体重を乗せ白い悪魔の首に狙いを定めると、渾身の一撃を喰らわした。
「ガツンッ!!」
硬い音と、全身に走る衝撃のままアルは白い悪魔に激突した。
「いってぇぇっ…。」
地面に叩きつけられる様に落ちたアルが振り向くと、そこには白い悪魔が地面に横たわる姿があり、激しい戦いの終わりを悟ったのだった。
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