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TTC

修正版です


 翌朝アサヒは着替えを終えホテルにいた。すると部屋のチャイムが鳴るのだった。部屋の戸を開けるとそこにはミハエルが迎えに来ており、その手には資料が握られていた。


「おはようございます大尉。」


「おはよう時間ぴったりだな。昔はもっとフランクな奴じゃなかったか?」


「年の所為ですよ。では参りましょう。」


 ホテルのフロント前には防弾仕様の高級車が停められていた。


「いい車だな。しかも運転手付きだなんて出世したみたいだな。」


「昨晩公安に所属と申しましたが、対テロ治安維持軍所属兵器開発部門の責任者として、佐官に着きました。」


「そっか、上官殿だな。」


「いえいえ、今まで通りミッチーとお呼びください。ところで、資料を用意したので目を通して頂けますか。」


 アサヒは資料を受け取り表示のタイトルを読む。


「アームズの火器管制及びサポート用AIとブラックホールキャノン?」


「昨日大尉にお話出来なかったのですが、お運び頂いた荷物がこれらに関係してます。さらに大尉にお会い出来たのも偶然ではありませんし、大尉にはお詫びをしなければなりません。」


「なんだよ、あらたまって?」


「実は、今回の運送の依頼したのは他でもなく私です。それと、アサヒ大尉に折り入ってお願いがあります。こちらの兵装のテストに参加して頂きたいのです。」


「いやいや待てよ。運送屋の仕事は構わないけどパイロットは勘弁してくれ。」


「ラボに着いてから詳しく説明はするつもりですが、これは新時代の防衛を担う新しい兵器プランの中核です。今までの有人戦闘ではなく、スタンドアローン型AIによる戦闘の実用化を目指しているのです。」


「人的被害と軍事費の削減で一石二鳥、いやそれ以上のメリットか……、そんな大事に民間人のオレの出る幕はないだろ?」


「中佐、お話し中申し訳ありません。セキュリティチェックをお願いします。」


 車内で思いがけない依頼を受けアサヒが困惑している間に車はTTCのラボに到着するのだった。金網のフェンスに覆われたそこは広大な工場であった。入場ゲートでセキュリティチェックを行った車は工場の間を抜け最奥にある小ぶりな建物の正面に横付けられるのだった。


「強引にお誘いして申し訳ありませんでした、しかし中に入って頂いたら懐かしい出会いがあると思いますので楽しみにしてください。」


 アサヒとミハエルがラボに入ると、そこにはゲートがありその傍には屈強なガードマンが二人立っていた。ガードマンはミハエルを見ると敬礼をする。


「ご苦労様です。中佐」


「うん。こちらは連絡しておいた客人だ。」


「はい。念の為チェックを行います。」


 アサヒはボディチェックを受けると、ミハエルとゲートをくぐりその先のエレベーターに向かう。そしてガラス貼りのエレベーターに乗り込み地下へと降ると、そこには地下とは思えない大空間が目の前にが広がっていた。

 そこは民間とは思えない設備があり、降り口付近には研究室がいくつも並び、奥には大型のクレーンやハンガーに咥え込まれたアームズが垣間見え、まるで軍艦のデッキの様相であった。


「完全に軍施設だな、さっきの警備も正規軍だよな。」


「はい、TTCと共同で地下のラボを使用しておりますが管轄は軍が担当しております。TTCのスタッフも限られた者しか入場できない様にしており実質軍の工廠として運用しております。先程少しお話ししたアームズの試作試験機もこちらにあります。すでにロールアウト済みでシュミレーションの結果も問題はありませんでした。」


「連合の秘密工場ってわけだ。」


「その様な大それた物ではありませんよ。こちらの工場ではアームズやライドスーツの生産を行なっているので都合がよかったと言う話しです。」


「だといいけどな。」


 二人がエレベーターを降り研究室の間を通り抜けとしばらく歩くとハンガーに聳え立つ巨体が現れる。

 赤と白を基調にしたカラー、量産型アームズを一回りスリムにしたデザインは機動性を重視したもので、美しい曲線とシャープな直線は芸術的な印象を漂わせてそこに存在していたのだ。


「おいおい!これって焔の後継機か!?」


「そうです。大尉の愛機だった焔をバージョンアップさせた、焔カスタムです。」


「さらに、マスターAIはネェルです。」


『アサヒ大尉ご無沙汰してます。お会いできて嬉しいです。』


「まじかよ!?てか、声が機械音じゃないし!」


「いかがです大尉?」


「いかがも何も懐かしさは半端ないが、それこそ大丈夫なのか、こんな物オレに見せて?」


「いつでも、お戻り頂ける様に手配はできます。」


「はぁ、抜かりはないって事か。」


「その件は後ほどと言う事で、早速コクピットにいかがですか?」


「まてまて、オレに何をさせる気だ?」


「大尉には、データのモニタリングの為のテストパイロットをお願いしたいのです。」


「それなら現役のパイロットでいいんじゃないのか?」


「実はそこに問題がありまして、ネェルの実績を買われてマスターにしたのですが現状使いこなせるパイロットが大尉しかおりませんでした。情けない話ですが未だ大尉に肩を並べる者がおらず能力の50%も使いこなせていないというのが実情です。そこでネェルとの相性も含めて大尉が適任ではないかと至った次第です。」


「シュミレーションだけなら、手伝ってもいいけど……、とは言え仕事があるしな。」


「そちらもこちらから御社に手配します。」


「何から何まで準備万端とはね。けどクルーには連絡したいし、なんにせよ少し時間をくれよ。」


「もちろんです。こちらの準備は出来ておりますので、良いお返事待っております。」


 アサヒはラボの一階にある休憩所にいた。沢山あるテーブルとイスの一つに座り、モニターに流れるニュースの映像を見ていた。


「先日あったコロニー襲撃による死者は、民間人含め26人となっております。引き続きニュースをお伝えします……。」


 各地で頻繁する事件をアナウンサーが淡々と告げる。時刻は午前10時を回ったくらい、アサヒは昼食には早すぎるなどと思いを巡らせながこの二時間を振り返っていた。

 

 軍席を離れ10年、アサヒからすれば受け入れ難い現実から逃げる為に身を引いたのだった。しかしその歳月はアサヒの傷を和らげていたのだ。

 アサヒは昔の仲間からの頼み、そしてチェン運送の仲間との絆を思うと、今自分が出来ることでこの世界を守り平和の為になるのであればするべきだとモニターを眺めながら思うのだった。

 時計は10時半を少し過ぎた頃アサヒは覚悟を決める。そして不思議とこれまでの経緯を素直に受け入れる気持ちになっていたのだ。むしろ今回の運送の仕事を受け積荷の準備をした頃から何か予感めいたものを感じていたのだ。


 そう、それはまるでこの先にある運命に導かれる様に……。


 

閲覧ありがとうございます。


第一部 宇宙編ですが、今のところプロローグ含めて13話を予定してます。

第二部も修正予定ですので、よかったら読み直しをお願いします。

以前より、詳細かつ読み易くしたつもりなので感想等いただけると、ありがたいです。


よろしくお願いします。

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[一言] 句読点抜け、文節区切りは誤字報告したほうがよいでしょうか。
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