街道作りは大変
「さて、こんなもんですかね。」
自室で何やら書いているJ
サマンサとの会談の後、彼は工房のレイアウトや、必要設備等をまとめた資料を作っていた。
「アル達には、さっそく工事を始めてもらいましょう。」
Jは資料を持って、ガンツォの屋敷に向かった。
鳥車に揺られ、クバルの街を眺めながら彼はこれからの事を考えていた。
《まずはフェイロンを飛べる様にして、それからこの世界の歴史を調べてみますかね。》
《それにしても、不思議な世界ですね…。マルチバース、並行世界…、本当にそれが正解なんでしょうか?》
深緑がかった黒い長髪を無造作にかき揚げながら、物思いに耽っていると鳥車は動きを止めた。どうやら目的の場所に到着したのだ。
鳥車を降りたJ。初めて来るガンツォの屋敷の周りは貧民街の割にきちんと片付けられており、この付近の治安の良さを醸し出している事に少し驚くのだった。
「もっと悲壮感があるのかと思っていましたが、ちゃんと綺麗にされてます。ガンツォさんがしっかりしているという事ですね。」
Jはガンツォの人柄を鑑みて、一人納得するのだった。
質素だが手入れの行き届いた屋敷の入り口をくぐると、庭から聞き覚えのある声がする、そちらに向かうと何故かアルとガンツォが武器を手に対峙し、その奥にアルマが二人を見守っているのが見えた。
《何をしているのですかね?》
しばらくその様子を眺めていると、アルが弾き飛ばされた後、三人は話し合っていた。正確にはガンツォの話しをアルとアルマが聞いているのだ。
話しを終えたらしいガンツォが振り向きJに向かって手招きをする。
「おう、いつまでそんなとこで見てんだ?こっちこいよ!用があんだろ?」
「バレてましたね、一応邪魔しない様にしてたんですけど。」
Jは三人の光景がアルにとって大事な通過儀礼の様に感じ、黙って見守っていたのだった。
「俺が言わなくてもわかっちゃいたみてぇだけどな、なぁ兄ちゃん?」
「うっス。」
「まぁそれはさて置き、ガンツォさん、アルから話しはありましたか?」
「おう、それな。なんか全然まとまってねぇのに兄ちゃん来たからよ、しょうがねぇから遊んでたんだわ。」
「そんな事だと思いまして、ざっくりですが、計画書を作って参りました。」
Jはガンツォとアル、そしてアルマに計画書の説明をする。
まずは、街道作りと、それに合わせた工房建設、そして不時着地点に拠点の設営と、合わせて三点を話した。
「ですので、まずはやはり街道作りですね。それに関してはまずルートの下調べからやって頂きたいので、アルとアルマさんに早速やってもらいます。ちなみに、資金はサマンサさんと打ち合わせ済みですので概算が出たら、サマンサさんにお願い致します。」
「さすがJだな。」
「アル兄とは違うな。」
「なんだよ!」
「とは言え、未開の森だろ?誰か案内付けて行ったほうが良さそうだな。アンジュの狩人にでも頼んだらどうだ?」
未開の森近くにある村の住人に森の案内を頼み、早速翌日調査に出掛ける事になった。
翌日、朝からアルとアルマは出発の準備の為店にいた。
「んじゃ行って来ます。」
「気をつけてねー。」
チェン運送の仲間に見送られ、アルとアルマはズーに跨り西の森を目指すのだった。
「まずは、アンジュって村か?」
「そ、小さい村だよ。そこで森の案内をしてもらうつもり。」
「まぁフェイロンは隠してあるし、問題はないよな。」
クバルの西門を出て、ハーレーに続く大きな街道を進む二人、しばらくすると脇道に入る。一時間ほど進んだ先に集落が見えてきた。
「さぁアンジュに着いたぞ。昨日連絡はしておいたから、話しは通ってるはずだぜ。」
アンジュの村に着き、案内役の狩人に会う二人
「おはようございますお久しぶりです。今日はよろしくお願いします。」
「あぁ、おはよう。ガンツォからの言伝は承ってるぞ。二人ともそれなりに腕はありそうだな。」
「はい、装備の用意も大丈夫です。」
「アルマ君だな。久しく会ってなかったが大きくなったな。弟は元気か?」
「はい、今じゃぁ僕より身体が大きくなってます。」
「そうか、二人とも立派に育ってなにより。で、君はアル君だね。背中に立派なモノを背負っているが森では少し都合が悪いかな。」
「えっ?そうなんですか。」
「森の中では、長モノは取り回しが悪いぞ。」
案内役の初老の男の名はパオロといった。元騎士団に所属しており、その昔クバルで活動をしていたのだ。ガンツォ達とも顔見知りで、その縁もあり今回の案内を頼んだのだった。
西の森には、レンフォという野獣が住んでおり、パオロはそのレンフォ等の狩りをして生計を立てていた。レンフォは時には村の畑を荒らすなどありアンジュの住人からは厄介な野獣であった。更に群れのボスともなると
巨大になり、一般人では到底かなうはずもなく、元騎士団のパオロはこの村にはなくてはならない存在なのだ。
「詳細はふせられていたが、こちらも詮索はやめておくよ。ガンツォからの依頼だ、金額に文句もない、しかし自分の身は自分で守るつもりでいてくれ。」
「ご配慮ありがとうございます。」
「まずは、目的地の場所を教えてもらうかな。レンフォの縄張りに入らない様にルートを考えないとな。」
「出来れば最短でお願いします。」
「少々の危険はやむ無しといったところか…、まぁ良かろう。訳ありならば、そうゆう事なのだな。」
パオロとアル、アルマはフェイロンまでの道のりを地図を見ながら決めていく。程なくルートが決まり出発する事になった。
「さて、目的はそこまでに道を作るということだったな。道中の確認だが、やはり問題はレンフォになるぞ。安全の確保までは正直難しいし、目的地周辺も縄張りになっている可能性は高い。最悪ヤツらの駆除も考えないといかんな。」
「まぁ何にせよ、行ってみないとわかんないっスよね?なら行くだけだぜ!」
「相変わらずだな。アル兄は、でも、それは正解だな。って事で、パオロさんお願いします!」
「ハッハッハ、若い者は勢いがあって良いな。では行くとしよう。」
そして三人は西の森に入って行くのだった。
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