ニコルとピーターとネェル
今回までのお話で、チェン運送それぞれの立ち位置をある程度ハッキリさせようと思い、タイトルに名前をつけさせてもらいました。
次回から、それぞれの活躍を書いていきますんで、ひきつづきお付き合いをよろしくお願い致します。
「みんな行っちゃったねー。」
「そっスね。」
『ネェルたちはどおするの?』
「どおしよっかな〜?」
「まぁ、色々とやる事が決まったらまたお手伝いすればいいんじゃないっスかね。」
「そおだね、じゃあ私達はお買い物にでも行こっか。」
『賛成ー!』
ニコル達は三人で買い物に出掛ける事にした。ゴメスの店を後にした彼女達はまず噴水のある中央広場に向かう。正門からの大通りを歩く三人、ふとピーターが話しだす。
「なんかすっかりこの街に馴染んじゃったっスね。僕ら」
「そおだねー。」
「なんか変な感じ…」
「何がっスか?」
「だってすっかりここの生活になれちゃったけど、私達宇宙で暮らしてたんだよ。地球なんて全然知らなかったし、それに昨日のアサヒさんとJさんの話しだって、本当は信じられないよ。」
「確かにそーっスよね。普通に仕事してたら戦争に巻き込まれて、しかも気付いたら、異世界って言われても信じられないっスよね。」
中央広場に着き、飲み物とお菓子を買った三人はベンチに座って話だす。
「ここもすっかり元通りっスね。」
「本当に街の皆んな頑張ったよねー。」
「確かに、この街の人って頑張り屋が多いっスよ。それに良い人が多い気がするっス。」
「でも最初に街の人達に出会ったときは、本当焦ったよねー。」
「地球に降りて二日目っスよね。あの時って、ミゲルさんとアコちゃんも居たんっスよね?」
「そおそお、私とネェルちゃんが攫われてると思ってたんだよー。」
「ニコルさんのおかげで何とかなったんスもんね。しかも街の皆んなが良い人達でよかったっス。」
「ね。そのおかげで仕事も始められたしねー。」
「その後も色々あったっスね。」
「ライドスーツは盗まれるし、ラノさんは居なくなっちゃったし、元気なのかなぁ。」
「そっスね。アサヒさんはもう探さないって言ってたけど気にはなるっス。そのうち戻って来る様な気もするっスけど。」
アサヒはラノの詳細を話してはいなかったのだ。そしてアルに話した様に、ラノは自分の意思で出て行ったのだと、そしてその責任は自分が負うと彼女達にも告げていた。
「だといいよね。」
「その後に魔族が来たときもビビったっス。自警団のおかげで僕達はなんともなかったっスけど、あれはヤバかったっス!!」
「そおだよね。でも私はその後にアルが飛び出して行っちゃったのが凄く心配だったんだよー。」
「ライドスーツを盗まれて、それを子供の誘拐に使われたから責任を感じたんスよね。アルさんらしいっスけど。」
「アサヒさんとガンツォさん達のおかげで無事に帰って来てくれたから本当によかったって……。」
「あれ?ニコルさんアルさんに惚れちゃってんスか?」
「えっ!?別にそーゆーのじゃなくて、そおそお、そんな事よりネェルちゃんの事を教えてよ。私達と出会う前の事、ねっ、ねっ。」
ピーターに心を見透かされた気がしたニコルは気恥ずかしくなり、話しを逸らそうとネェルに話しを振るのだった。
『えっとね。ネェルのボディーが作られたのは、皆んなに出会う一ヵ月くらい前だよ。その後はミシェルおじさんと暮らしてたの。』
「それまでは、アームズのAIだったんだよね。アサヒさんと一緒に戦ってたの?」
『うん。』
「なんか想像つかないっス…。」
『データはもちろん在るけど、ネェルは戦闘できないよ。』
「だよねー。とても強そうには見えないし。ところで、ミシェルさんて誰なの?カレーの時にも言ってたよね。」
『ミシェルおじさんは軍の偉い人だよ。昔はアサヒさんの仲間だったの。」
「アサヒさんが、僕達と別行動してた時に会ってた人っスね!」
『そおだよ。ミシェルおじさんはネェルが生産された(産まれた)時からずっと一緒で人間の生活を色々教えてくれたんだよ。お仕事の事も教えてくれたし、そしたら今度懐かしい人に会わせてくれるって言って、それでアサヒさんと会ったんだー。』
「そおだったんスね。」
「その後はアサヒさんから聞いた通りって事だよね。それからは私達と一緒だもんねー。」
「改めて思い返すと、僕達ってネェルちゃんの事よく分かってなかったっスよね。」
『ネェルもこの街に来てからの事しか知らないから皆んなの事教えてよー。』
「そおだよねー、それじゃあ私達が暮らしてたスペースコロニーの事からね。」
「僕達が暮らしてたのは工業コロニーの一つっスね。工場がたくさん在ってそこで作られた物をいろんなとこに運ぶのが僕達の仕事だったんス。」
『今と同じだね。』
彼女達が暮らしていたコロニーは地球と月の間にある重力の安定した場所に建造された物の一つで、連合と呼ばれるアメリカを中心とした国家群に所属していた。
資本主義経済で成り立ち、文化や文明も程々に発展していたのだ。
その中にある工業区コロニー群にチェン運送はあり日々配送を行っていた。
「コロニーは、その一つ一つが、街になってて、私達のとこみたいな工業コロニーや商業コロニー、居住コロニーって感じで分けられてたんだよー。」
「買い物は近くの商業コロニーに行ってたんス。」
「都会じゃないけど、私達のコロニー群はそれなりに栄えてたんだよ。ネェルちゃんとアコちゃんがやったDガールズみたいなアイドルの音楽祭とかもあったんだよ。」
「音楽祭もだけど、お祭りもあって楽しかったっス!復興祭もサイコーっした!!ネェルちゃん可愛いかったっス!!」
『お化粧してくれたのはニコルさんなんだよ。』
「本当に、すっかりここの人みたいだね私達。」
「僕はこの街好きっスよ。このままここで暮らすのもありかもなんて。まぁ、魔族とかは怖いっスけど。」
『ネェルもクバル大好き、アコちゃんやミゲルさん達も大好き!』
「そうだねー、私も好きだよ。でも…」
「でも?」
憂いのある表情で口籠もるニコルにピーターが訊ねる。
「私はやっぱり帰りたいな…。だって、パパもいるから、あっ、ごめんなさい…。」
慌てて謝るニコル、なぜならピーターは戦災孤児であった。元の世界には肉親はおらず施設を出てチェン運送で働いていたのだ。
「いや、大丈夫っスよ。僕は皆んなが家族だと思ってるんで。ニコルさんもお姉さんと思ってるっス。だから皆んなと一緒ならどこでも平気っス。」
「そっか、そんな風に思ってくれてたんだね。ありがとう。」
『ネェルも皆んな家族だと思ってるよー。』
「ありがとうネェルちゃん。私もしっかりしないとねー。」
つい本音が出てしまった事とピーターとネェルの優しさと前向きさに、少し情けない気持ちになるニコル、しかし二人の姿に勇気をもらうのだった。
「そおだよね。二人のお姉さんなんだから私も出来る事をがんばるね。ピーターにネェルちゃん、ありがとう。」




