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Jとサマンサ

 サマンサを訪問し、今後の方針について大筋で説明したJは、問題になるであろう技術者の確保について相談していた。


「サマンサさんやゴメスさん達の様に、信頼出来る方が良いのですが、部外者を引き入れるというのは、我々の情報が外部に漏れる危険を孕みます。それに今回は皆さん我々に協力をしていただける事になりましたが、ハーレーで上手くいくとは限りません。むしろ難しいかと…。」


「素直に話せば十中八九そうなりますでしょうね。…そうなると技術者の確保は断念されますか?」


「いや、それは困りますね。ですから何かしら別の理由でクバル近郊に工房を作って、そこに技術者を招き、船の修理を手伝ってもらおうかと、ちなみに技術者に関しては一人心当たりがあります。彼なら本当の事を話しても大丈夫かと。」


 現状フェイロンの状態は外装の損傷が酷く、片翼は着陸の衝撃でもげ、飛行すらままならないのだが、幸いエンジンや駆動関係には大した問題はなかった。

 とは言え、大気圏内での飛行が出来る様に修理するには簡単にはいかないのだ。

 外装に使う部材も宇宙にまで上がるとなると、表面加工などが必要になる為、今ある技術ではとても修理は不可能なのだった。


「なるほど、工房をハーレーだけでなくクバル近郊にということですか。そうですね、それならば理由を作る事は容易でしょうね。無難な理由としては、そこで魔道具やらの修理を行うという体で資材も集めて船の修理にあてると、そうゆう算段でございますね。」


「はい。」


「ちなみに、船はどちらに?」


「クバルから北西の森の中です。我々が初めて皆さんにお会いした森の更に西です。一日あれば着きます。街道の整備もできれば、もっと早く着きますね。」

「船の近くに工房を建てるのが一番良いと思いますが、理由に合いませんからやはりクバル近郊にはなりますね。とは言え、ハーレーと比べれば格段に近くなりますので。」


「分かりました。ちなみに真実をどなたにまでお話しするつもりですか?」


「そこなんです。カルロスさんやヨシムラさんは聖クライス教会に近い方達ですから、真実は明かさない方がお互いによいかと。とは言え、組織のトップに話さない訳にはいかないので先程の話しの魔道具修理の技術者を招くという事の方が辻褄は合いますよね。」


「正直なところ、Jさん達の技術は確実に聖教では御法度ですから、私どもも報告義務がございます。ですが、昨日も話した通り私どもはチェン運送にご恩がございますのでよろこんで協力いたします。しかし彼らがあなた達の正体を知れば…、古い神々、又は悪魔の技術、魔族と同じ危険分子ですからね。」


 フェイロンとJ達の存在自体が危険分子だと言うサマンサの話しはもっともで、それを取り締まる聖クライス教会には見つからない様に配慮をしなければならず、Jやアサヒはそういう事も含めサマンサ達を巻き込んでしまう事に躊躇はあるのだ。


「我々にそんな意識はまったくないのですが、やはり世界が異なる技術は要らぬ争いを起こしかねますから、出来ればこちらの世界に影響のない形をとりたいとは思っています。」


「そうですね。私個人の意見は生活が豊かになる程度の技術の発展は喜ばしい事と思ってはおりますが、やはり行き過ぎた物は争いの元だと思います。そこは聖教の教え通りかと、ただ、我々とあなた達は住む世界も違いますし、何よりどんな技術もその使い方を間違えなければよいのかと。」


「使う人間次第という事ですね。私も同感です。我々の世界の技術の進歩はそれは目をみはるものがありますが、私はこちらに来て技術の進歩が人間の豊かさとは別な物の様に感じました。」


「Jさん達の世界はどんなところですの?」


「そおですね。私達の世界の人類はほぼ宇宙に暮らしています。スペースコロニーと呼ばれる宇宙空間に建造した島に一千万単位の人々が暮らしています。そして人類の故郷の地球は汚染が進み、暮らせる土地は少なくなっていました。」


「それで宇宙で暮らす様になったわけですか…」


 Jはサマンサに自分達の世界の事を話す。


「宇宙とはどういった場所なのです?私どもは神話でしか知りませんが。」


「空気と重量のない漆黒の闇が果てしなく続く空間です。さすがに我々もまだ宇宙の果てには辿り着いてません。しかし、少しではありますが他の星には辿り着きました。そのおかげで化学という分野は飛躍的に進歩しました。そして技術も向上したんです。」


「人の探究心は素晴らしいですね。」


「ですが技術が進歩し、自分達が汚した地球を離れ宇宙で暮らす様になっても人類は幸せになった訳ではありませんでした。」

「地球の汚染は人類の歴史そのものなんです。進歩による生活の豊かさがもたらしたのは自然破壊で、個人や国の争いは絶えずありました。そして破壊行為の果てに地球を傷付ける。それらが続いた果てに人は地球に暮らせなくなったんです。」


「なるほど、しかしそれは私達も同じ、だからこその聖教の教えだと思います。」


「私達人類は結局は同じ事を繰り返す愚かな種族なんですよ。ですが、その問題を解決しようとするのもまた人だと思ってます。少しでもよりよい方向へ進もうと努力する人達がいる限り絶望してはいけないんじゃないかと思うんです。私もそお在りたいと考えています。」


「信仰も同じでしょうね。正しく在りたいと願うのは、世界が違っても同じではないでしょうか?結果は分かりませんが、その想いは誰かに受け継がれいくと信じたいのです。私は…」


「私もそう望みます。」


「話しが逸れてしまいましたわね。でも少なくともJさんのお考えを知る事ができました。そんなJさんと一緒にいる皆様もきっと同じなのでしょうね。私の目に狂いはなかったと確信できましたわ。」

「宇宙から来たとか、色々なお話しとても想像出来ませんでしたが、今日あなた達の心の中を覗かせていただけたのはとても良い事でした。改めて協力させていただきますよ。」


「ありがとうございます。まずはハーレーですね。」


「はい。具体的にお話しを詰めましょう。」


 サマンサが話したとおり、この世界では神話や言い伝え、物語にしか出てこない技術や乗り物、さらには空のはるか上空の島、そしてとてつもない破壊力の兵器、どれをとっても現実にはあり得ない話しでしかなかった。

 そして昨晩のアサヒの話しも、にわかには信じ難かったのだか、Jとの話し合いで異なる世界の人も自分達と同じ人であり、その心には同じ想いがある事が分かった事で彼らへの信頼はさらに深まるのだった。

 

閲覧ありがとうございます。

あと数話それぞれのストーリーが続きます。


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