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10年前の出来事


 アサヒは軍のビルを出ると、外にはタクシーが待っていた。ミハエルが気を利かせてビルの前に呼んでいたのだ。アサヒはタクシーに乗り込みホテルに向かう。

 タクシーの窓から見える真夜中のコロニーは静けさに包まれている。そしてアサヒは懐かしい人物との出会いを終え過去を振り返っていた。


「隊長、今回も楽勝ですねー。」


「おう、でも気を抜くなよ。残存兵力はまだあるはずだからな。」


「所詮テロリストですよ、正規軍の俺たちに敵うわけないです。なによりエースの隊長がいますからねっ。」


 10年前の出来事である、あるコロニーでアサヒ率いる連合軍の部隊はテロリストの制圧作戦に従軍していた。もちろんミハエルもそこにいたのだ。

 コロニー中央付近、先行していたアサヒの部隊は回転による疑似重力の束縛を離れた機体で隊列を組み残存兵力の索敵をしていた。その時アラームがコクピット内に響いた。


『後方部隊ニ攻撃ヲ確認、友軍機カラノ攻撃、現在3機大破、サラニ被害拡大中。』


 アサヒの搭乗機のAIネェルからの報告が入る。


「は?どーなってんだ!」


「とにかく戻るぞ!」


「ネェル、随時報告、敵対行動中の友軍機のデータをシェアしとけ!」


『了解シマシタ。』


 3機編成が3部隊計9機のアサヒの部隊は襲撃場所に到着する。すると、そこは一方的に蹂躙された後であったのだ。不意打ちとは言え、合わせて9機のアームズと3機の輸送機そして20人の機甲歩兵が全滅していたのだ。


「なんだこりゃ……。」


 あまりの惨状に言葉を失うミハエル、しかしアサヒは事態の収拾の為に部隊に指示を出した。


「キム、ローディ、最優先で生存者の確認、救出をしろ!残りはオレについて来い!」


 友軍2機を残し、アサヒは襲撃した友軍機を追って部隊を発進する。レーダーが捕捉していた3機が向かった先にはテロリストと合流した元友軍機3機と敵の12機がおり、合計15機のアームズが待ち構えていたのだ。


「見つけたぞ!ネェル、フルダイブ!!」


『了解シマシタ』


 パイロットスーツからは薬剤が投与されアサヒの五感がアームズに染み込んでゆく。意識は極限まで研ぎ澄まされ、バイザーが拡張現実とリンクし、アサヒの意識はアームズに直結してゆき正に人機一体となるのだった。

 そして敵も迎撃態勢に入る。しかし会敵十分足らずで敵機は残り5機となった。敵アームズ10機中7機はアサヒ単独での撃墜で、連合軍のエースの名は伊達ではなかったのだ。

 しかし相手にもエースと呼べる存在はいたのだ。友軍の2機は大破、3機は中破又は小破、まともな機体はアサヒとミッチーの二機となったのだ。


「アサヒ隊長あいつかなりできます。」


「そうだな、かなりの腕前だ。さすがにオレも時間切れになりそうだ。だがその前にケリをつける。ミッチーとアン、ロイ、キヨは他をたのむぞ。」


「これで終わりにする!ネェル気合入れてけよ!」


『理解不能。』


「ハイでいいんだよ!とにかく頼むぞ!」


 この時彼らは目の前の戦闘に集中する他はなかった。そしてテロリストの本当の目的が他にあるなどとはもちろん知りはしなかったのだ。


「ハッハー!時間稼ぎも充分できたし、お前たちと遊ぶのぁもう飽きたな。」


「なんだ戦闘中に話しかけてきた!?」


「馬鹿ヤロウ。わざわざオープンで聞かせてやってんだよっ。おいお前ら聞こえてんな、そろそろ引くぞ!」


 ミハエルが敵エースと交戦している最中に通信回線から敵が話しかけてきたのだった。


「クソッ逃がすわけないだろうがっ!」


「へったくそが当たるかよ。そっちの隊長はかなりヤベェが、雑魚が俺様の相手になるわきゃねぇだろうが!バカどもよく聞けよ。張り切って出張ってきたが本命はここじゃねぇんだ。叩かれてるのはオメーらの方だってよっ!」


「なんだと!?」


「帰るとこが無事だといいなぁアホども。」


「くそテロリストめ!!」


「だから当たらねぇんだよっと、オラァ!」


 ミハエルは敵の言葉に激昂する。そしてアームズがサーベルを抜くと敵機に突進するのだった。


「ズガッ!!」


 しかしサーベルを華麗に躱した敵アームズは身を翻すとミハエルの機体のコクピット付近をサーベルで貫くのだった。かろうじて直撃は免れはしたものの、腹部を貫いたダメージはコクピットをひしゃげさせ内部は惨状と化すのった。そしてミハエルの機体は徐々に地表に向かい落ちていくのだった。


「ミッチーっ!!」


 アサヒは敵エース機に向かう。直往邁進、急激な加速で猛スピードになったアサヒの機体は敵エースに直撃する。そしてアサヒは方向を変え落ちていくミッチーの機体を追うと抱き抱えるのだった。


「ぐおーっ!痛ってぇぞ畜生!!」


 アサヒの機体に吹き飛ばされた敵エースの機体は片腕がもげ、腹部はひしゃげ無残な姿を晒していた。コクピットのパイロットは衝突の勢いでヘルメットのバイザーが割れ破片で顔面が裂けていた。吹き出した血は顔面を赤く染め傷口を押さえるパイロットは憤怒の形相でモニターに映るアサヒの機体を睨みつけるのだった。


「クソったれ、引くぞ!テメーの事は覚えとくぞ!この借りは必ず返してやるからな!」


 アサヒの機体のリミッターが働きフルダイブが解けていく中、ミッチーを抱えたアサヒはAIネェルの言葉を聞くのだった。


『首都コロニーガ攻撃ヲウケタト報告アリ。被害ハ多数、基地オヨビ市街地区域。』


 その当時アサヒは首都に暮らしていた。もちろん彼の妻もそこで暮らしていたのである。



 タクシーがホテルに到着し、過去の出来事を思い返していたアサヒはそのまま帰る気にはならず、近くの飲み屋に立ち寄るのだった。

 飲み屋で一人グラスを傾けながら、アサヒは妻の事を思っていた。


「もう10年か…、葬式の時の親御さんの顔は忘れられないよな…。」


 10年前のあの時、アサヒの妻フェリシアはアサヒが作戦行動中に起きた首都襲撃テロに巻きこまれ亡くなっていたのだった。


「首都は安全だと思ったんだけど、オレの考えが甘かった。すまないフェリス……。」


 そのとき入口から見知った顔が入ってきた。


「あ、あれ、アサヒさん…、一人ですか?」


「お、ラノか、こんな時間に飲みに来たのか?」


「いや、あの、ちょっと用事で出かけてたんで帰りに一杯と思って寄ったんです。」


 ラノは他のクルー達とは別れ、誰かと会っていたのだった。そして何故か挙動不審な素振りを見せるのだった。


「ふ〜ん。」


「ところで、今日の荷物ってアームズの部品なんですよね?何が入ってんですかね?」


「珍しいな、荷物に興味もつなんて。」


「い、いや、そんな特別意味はないですよ。それより金が入ったんで飲みましょうよ。ね、ね。」


「なんだよ、気持ち悪いやつだな。いつもはそんな事しないのに。明日早いからオレはもう帰るよ。お前もほどほどで帰るんだぞ。」


 挙動不審な態度と、なぜ金が入ったのかと疑問が頭をよぎるアサヒだったが、明日朝からのミハエルとの約束もあった為アサヒは早々に店を出てホテルへと足を運ぶのだった。


「びっくりさせやがって、まあバレてはないだろうし問題はないよな。そんな事より酒だな。へっへっへ。」


 ラノはアサヒ達に隠れて何やら企んでいる様子であった。

閲覧ありがとうございます。


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