告白
後夜祭翌日、グラスを片手にアサヒは席から立ち上がった。そんな彼を食堂にいる全員が見つめるのだった。
「みんなご苦労様でした。それじゃあ、優勝を祝してかんぱーい!!」
「乾杯!」
「かんぱ〜い!」
「かんぱーいっス!」
ゴメスの店にはアサヒをはじめチェン運送の面々、アコ、ミゲル、ガンツォファミリー、そしてサマンサの姿があった。そして、アサヒの乾杯の音頭とともに祝勝会が始まるのだった。
「お疲れさん、アサヒ」
「やったなぁ、腕っぷしだけじゃなくて美味いメシも作れるなんてモテモテだな。中年期待の星だぜ。」
発言がおっさん臭いミゲル
「まぁ俺様が認めた奴なんだから、これくらいは当たり前だぜ。」
ガンツォも自分の事の様に喜んでいる。
「ありがとう、みんな。ゴメスさんにガンツォファミリーの皆んなも色々と手伝ってくれたおかげだよ」
「アタシは分かってたよ。カレーライスがテッペン取るってね!」
渾身のドヤ顔を決めながらアコが鼻息を荒くする。
「Dガールズもすげぇ良かったぞ〜♡」
「いつもあの恰好でいて欲しいよ、俺」
ポルコが目を♡にしてネェルを見つめる
「まぁまぁ、みんな頑張ったんだから今日は飲んで食って楽しんでくれよ。」
ゴメスは労いの為に料理と飲み物を用意してくれたのだった。
「ニコルはおかわり何飲む?」
「リモネの炭酸割お願いしまーす。」
「俺はビーアね。」
「俺もアル兄と同じでー。」
「おっ?若者は飲みっぷりがいいねぇ。負けちゃいられねぇな。俺にも同じのよろしくっ!」
「あらあら、皆さんお元気ですこと。私も負けてはいられませんわ。」
「おいおい、サマンサ無理すんなよ。」
「お忘れになったのかしら、あなたより私の方がお酒は強かった筈ですよ。ホホホッ」
「サマンサさんもお強いんですねー。いつもは大人で淑女なのにあんなに情熱的なダンスもお上手なんて、憧れちゃいますー。」
「お褒めくださってありがとうございますね。ニコルさんもいつも可愛いらしくて、お仕事もしっかりとお出来になられるのですから、私の方こそ尊敬いたしておりますよ。」
「そんなとんでもないですよー!」
皆がそれぞれ盛り上がる中、Jがアサヒの席にやって来た。
「アサヒさん、ちょっとお話しが…。」
「うん、どおした?」
「フェイロンの件ですが、そろそろ本格的に修理の準備をさせて頂こうかと思います。ただ、前回の北への訪問で分かったのはこの国、いやこの大陸の技術レベルでは、完全な修理はおそらく不可能ではないかと…、それと修理にはこちらの方の協力が必要ですね。」
「そおだな。俺も丁度それを考えてたんだ。正直ここに来てから色々あった所為で、変にクバルに馴染んじゃってたからね。俺達の目的は故郷の宇宙に戻る事だからな。」
「はい。まずは宇宙に上がる手段ですが、それと同時にこの世界、と言うよりもこの惑星についてももっと調査すべきではないかと思います。なぜなら……、いや、やめましょう。まだ不確定な推論を話しても意味はありませんね。」
「なんだよJらしくないな。不確定でも話してくれよ。」
「う〜ん、そおですね。では以前話したマルチバースの事を覚えてますか?簡単に説明すると、よく似た世界がいくつも重なり合う様に存在し、それらは干渉しあいながら別次元で存在しているという説です。ここからはあくまで推論ですが、本来、別次元なので何者であろうと重なり合う次元の壁を行き来はできないはずです。しかし何らかの影響でその壁が壊れたなら、そして壊れた壁の隙間が繋がってしまったとしたら、」
「超重粒子加速砲の超絶高エネルギーならばあるいは……」
「いやいや、待てよ。確かにその多次元とかの概念は知ってるけど、その存在は確認されてないだろ?いくら反物質のエネルギーがすごくてもさすがに……」
「そうなんです。だから不確定と言いました。あくまで推論の一つですし、他の可能性だってもちろんあります。」
「それじゃあ、俺達の知識の地球はウソで、本当の地球はこうだったってのはどお?」
「いや、高い確率でそれはないと思います。そのようなウソの情報を我々に流す意味はありませんよ。」
「だよな…」
「ちなみに、この世界の文化や文明について何か思い当たる事ってありませんか?」
「えっと、昔っぽいとかかな…」
「確かに、……これは私の意見です。断片的ではありますがこの世界の技術と我々の技術の共通点が多い事と、それに言語が似通っている、いや、ほぼ同じだと思いませんか?」
「仮に地球ではない別の惑星に来てしまったとしたら、なぜこれ程の類似点が多いのか私には不思議でなりません。と言うよりもあり得ませんね。確かに、ここに来てから知らない単語はいくつかありましたが、言語や文字の解読はすんなり出来ました。これは文明が共通している事の証拠だと思うのですよ。さらに技術に関しても同じ事が言えます。ただ気になる点はいくつか残りますが…」
「そして、先程アサヒさんがおっしゃった様に文化の古めかしさも、なぜか我々が知っている歴史に似通っていますしね。」
「だから異次元の地球って事か…」
「異次元とはいえ、ある地点から分岐したものだとしたら、この世界のルーツは我々と同一の可能性が高くなります。だとすれば文化や文明のルーツも同じはず。であれば技術や言語も近くても納得はできます。ですが、疑問はまだまだ山ほどありますけれど……」
「それじゃあ、あながち異世界ってのは的外れじゃないって事なのか……」
「まぁ、元の世界とは異なる世界という意味では異世界となりますかね。」
無言でグラスを見つめるアサヒとJ。
お互いに思うところがあり、Jも何かしら覚悟を決めてこれからの事に向き合うつもりでいる。アサヒも今の手詰まりの状態を打破する為にするべき事を考えるのだった。
「お〜い、何難しい話ししてんスか?アサヒさん主役なんスから、さぁ飲んで下さいよ〜。」
酔いの回りだしたアルに絡まれ、一旦話しをそこで中断する二人だった。
テーブルの向こうでは、ポルコが相変わらずネェルに話しかけている。
「ネェルちゃん、また今度【君に届け♡】歌って欲しいな」
『うん、いいよ〜。ねっアコちゃん?』
「えぇ〜、そう易々と見せるものじゃないしな〜。」
渋る素振りのアコには、素直なピーターの発言が公開覿面なのだ。
「僕も見たいっス!アコちゃん可愛いかったっスよ。」
「まぁあんたが、そこまで言うならやってもいいけどね。」
いつものツンデレ発動!
「なんだかんだ言っても、結構気に入ったんだろ?面倒臭い娘だなぁ。」
「うるさいよっ!ハゲミゲル」
「ハゲてねーよっ!!」
相変わらずのミゲル、《残念だが前頭部から若干薄毛になっているぞ》そのうちあだ名が付きそうな気配であった。
宴会は深夜まで続いた。そしてアコやピーター、ネェル達は先にゴメスの宿で休む事になった。
いつも通り酔い潰れたアルもニコルとアルマに連れられ、彼らとともに部屋に行くのだった。
「うぇ〜い、ニコル〜。」
「んったく、アル兄は酒弱すぎだな。」
「ふふっ、そぉだねー。」
「いつもニコルちゃんが世話してんの?」
「いつもじゃないけどね、普段は強気だけど可愛いでしょー。」
「……ねぇ、ニコルちゃんはアル兄の事どお思ってんの?」
「えぇ〜、どおって大事な仕事仲間だよ〜。」
「そっか、あのさ、こんな時に言うのもあれなんだけど、俺ニコルちゃんが好きなんだ。」
「えっ!?いきなりそんな事言われても……」
「いや、付き合って欲しいとかじゃなくてね。まだ知り合ったばっかだし、これから俺の事を知って欲しいなってさ。」
「うん、そぉだね。」
「ニコル〜、可愛いなぁ〜……」
「アル兄もニコルが好きみたいだね。」
「うん…」
アルマとニコルに甘酸っぱい空気が流れる。
「いきなりごめん。とにかく、これからも仲良くしてよ。」
「うん、分かった。いつもお手伝いありがとね。アルマ君」
二人はアルをベットに寝かせると食堂に戻るのだった。
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