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アサヒ厨房に立つ

 アサヒがゴメスを訪ねて数日後、アサヒはゴメスと一緒だった。


「思ってた以上にできるじゃねぇかアサヒ、

本当に料理人でやってけるぞ。」


「まぁ、ずっと料理は作ってたんで。」


 厨房ではゴメスとアサヒが仕込みをしている。そして従業員の女性が久しぶりの開店の客席を丁寧に掃除していた。


「店長、いい料理人が見つかりましたね。」


「そおだよな、このままうちで働いてもらいたいぐらいだ。」


「お手伝いくらいは出来ると思いますけどね。」


 仕込みも無事終わり、開店の時間になると続々と客が来店する。


「盛り付けこんな感じでいいです?」


「おう、いいねぇ、やっぱセンスいいなぁ。」


「あざーっす。」


 手際良く仕事をこなし、注文をこなすアサヒ、しばらくするとチェン運送の面々とマルコ、ミゲルそしてアコが来店した。


「アサヒ殿ご無沙汰しておりました。魔族襲撃の際はご活躍されたそうで感謝致します。」


「いやぁ、たまたま居合せただけですよ。」


「ところで、アコから伺ったのですが、例ののカレーライスを祭りでおやりになるそうですね。」


「そおなんですよ、なんかアコちゃんの勢いに押されちゃって。」


「私も応援させていただきます。是非優勝してください。その暁には騎士団メニューに必ず加えさせていただきますゆえ。」


「カレーなんて俺達からすりゃあ、家庭料理の定番だからなぁ、何ってないよな。」

 

「とは言え、こちらではカルチャーショックなんでしょうね。」


「まあまあ、皆が喜んでくれるんならいいんじゃないですかー。」


「僕は大好きっス!カレー最高っス!!」


『ネェルもカレーライス好きー、ミシェルおじさんもよく作ってくれたよぉ。』


 アサヒは軍人だった頃に部隊の給食にカレーを作っていた。それを手伝っていたのはミシェルだったのだ。

 ネェルの言葉にその事を懐かしく感じたアサヒはそのカレーを再現しようと思うのだった。

 店の閉店を迎え、アサヒは早速カレーの仕込みを始める。

 当時のカレーは、牛バラ肉の塊を煮込み、それとは別に野菜でルーを作り最後に合わせるタイプなのだ。

 なので、この世界では毛長牛のバラ肉の塊と野菜を煮込みフォンドボーを作る。

 まず、余分な脂と筋を綺麗に取り除いたバラ肉をフライパンで焼く、全面に焼き色を着けたら大きな鍋に入れ、更に焼き色を着けた野菜とともに一日煮込む。沸騰するまでは強火で、沸き出したら弱火でコトコトと煮てゆき初めに出る灰汁のみすくい取り、あとはそのままでよし。(ちなみにフォンドボーの仕込みは開店前からなので、すでに6時間は煮込んでいる)

 そして、その間にオニョン(玉ねぎ的な)とキャロ(人参的な)、そしてガリックをみじん切りにし飴色になるまで弱火で炒める。

 そこにすりおろしたフルーツを加える(とりあえず林檎や梨は無いのでこの辺りの森で取れる無花果のような果物を加えてみた)、そしてペースト状になるまで煮詰める、出来上がったら皿に出す。

 次にカレールーを作る、まずはスパイスの調合である、ちなみにスパイスは市場でほぼ一通り揃っていたので、あとは配合するだけなのだ。

 とりあえず、香り、辛味、色と三つの成分毎に、スパイスを選ぶ、幸運な事にアサヒの世界とほぼ同じスパイスが手に入ったので簡単にだが、カレースパイスの説明をしたい。

 まず香り、クミン、コリアンダーの二種類、次に辛味のチリペッパー、唐辛子である、最後に色味のターメリック、カレーの黄色はターメリックなのだ、飲み過ぎた次の日に飲むウコンの事、あればオールスパイスも欲しいところだったが残念ながらないので省略。

 そしてこれらのスパイスをクミン、コリアンダー、チリペッパー、ターメリックの順に1・2・2・5の割合でパウダーにする

 初めに粒のままのクミンを冷たい油から弱火で炒め香りを油に移す、強火では焦げてしまう為、弱火でじっくり炒める香りが出てきたら粒を取り除き、そこに粉(小麦粉的な)を入れ弱火で馴染ませる。

 茶褐色の色になるまで炒めたら、一旦火から下ろし、一日煮込んで、出汁の出たフォンドボーをお玉一杯加え手早く混ぜる、ダマが出来ない様に素早く混ぜる、そこへ更にフォンドボーを加え、火にかけるととろみのついたルーが出来る。

 そこへペースト状にした野菜と、ポモド(トマト的な)のピューレ(弱火でじっくり煮て、皮や種を取り除き濃度がつくまで煮詰めた物、旨みと甘味が増している)、スパイスパウダーを加え味を整えればカレールーの出来上がりなのだ。

 しかし、フォンドボーが明日にならないと出来上がらないので火を止め、今日はスパイスの配合までで仕込みは終わりにした。

 翌朝アサヒは厨房に居た。昨日の続きを朝から始めていたのだ。

 そして昨晩来店したチェン運送のメンバーと、アコ、ミゲル、そしてマルコに昼に食堂にて試食を依頼したいたのだ。

 スパイスを炒め香りを出す、食堂にスパイスの香りが充満する。そこに粉を入れブラウンルーの元を作り、出来立てのフォンドボーを加え、更にスパイスパウダーとペースト、ピューレを入れカレールーか出来上がる。

 取り出した毛長牛のバラ肉を適当な大きさにカットしカレールーに加え弱火で煮込んでいく。

 その間に具材の野菜を仕込む、キャロやポタタ等を煮てカレーの具材にするのだ、そして仕込みを一通り終え客席で休憩をしていたアサヒの下へゴメスがやって来た。


「おう、カレーはどおだ?」


「とりあえず出来ましたよ。良かったら試食お願いできますか?」


「おう、まかせろ!」


 出来たばかりのカレーを小皿に盛り付け、ゴメスに渡す、ゴメスはまず香りを確認し、そしてルーをひと匙すくうと口に運んだ。


「うんなるほどな、香りは良し、野菜の甘味と肉の出汁もよく出てる、だが味の深みがもっとあるといいな…」

「こいつを煮詰めて入れてみるか?あとガリックとジン(生姜的な)のすりおろしもかな。」


 ゴメスが出してきたのは葡萄酒であった、フルーツの芳醇な香りと奥深い味を加えてみるのと、ガリックとジンも仕上げに入れてみるかと提案してきたのだ。

 葡萄酒を鍋に入れ煮詰めたものと、すりおろしたガリックとジンをカレーに加える、しばらく煮込み再度味見をする。


「うん、こんな感じじゃないか?」


 出来上がったカレーは味に深みが増し、ガリックとジンが全体を引き締め、全体のバランスが整ったのだ。


「さすがゴメスさん、完璧ですよ!」


 宮廷料理人のゴメスの腕前に感嘆するアサヒだった。

 そして昼、チェン運送のメンバー、アコ、ミゲル、マルコが店に現れた、そして何故かアルマとポルコも一緒だったのだ。


「おぉ!美味そうな匂いだなぁ。」


 店に現れたミゲルが開口一番に告げる。


「あん時の匂いだ!!やっと食べられるよ、アルマァー!!」


「よかったな。ポルコ」


 何故かやけに嬉しそうなポルコ、そしてクバル初のカレーライスの試食会が始まる。


「うむ、これはあの時とは違うカレーライスですな?」


 マルコが笑顔でアサヒに訊ねる。


「あん時のも美味かったけど、こいつも美味そうだな!」


 ミゲルも興味津々でカレーライスを眺め、香りを楽しんでいる。


「ねぇねぇ、辛い?」


 アコが心配していた。


「大丈夫、アコ用に辛くないのも作ってあるよ。」


「さっすがアサヒ!」


 斯くして試食会が始まった。


「いただきます!」


「もぐもぐ」


 それぞれカレーライスを口に運び噛みしめながら食べる。


「うま〜い!!」

「すげーよアルマ!こんなの食べた事ないよー!」


 何故か周りより一際熱量の高い喜び方のポルコ。


「素晴らしい!キャンプで食べたカレーライスも美味でしたが、こちらも上品に仕上がってますなぁ、しかも味の深みは更に増しております!」


「おう、肉も柔らかくて、ルーの旨味とスパイスの刺激も抜群だぜ!」


「こっちも辛くないけど、とっても美味しいよぉ。」


 皆一様に満足した顔でアサヒを見る。


「いや、仕上げはゴメスさんにやってもらったんだよ、さすがだよね。」


「まぁな、宮廷料理人は伊達じゃねーぜ!」


 カレーライス試食会は大成功で幕を閉じるのだった。

 そんな中、Jがネェルとアコに何やら話しかけていた。


「ちょっとよろしいですか?アコさん、ネェル」

「実は…考えて…」


「歌なんて…あいどる…わかんないし。」


『ネェルはいいよぉ。』


「大丈夫です…用意は…任せて下さい。」


 二人に何か話した後、真剣な面持ちで皆に語り出したJ。


「皆さんちょっとよろしいですか。提案なのですが我々も音楽祭にも参加してみませんか?もちろん全員ではないのですが、」


閲覧ありがとうございます。

最近考えがうまくまとまらず、執筆スピードがあがらず……、しばらくのんびりペースになりそうですが、お付き合いよろしくお願いします。

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