突入
バキバキッと何かが折れる音のあと、空から枝のついたままの丸木が飛んでくる。
小屋の奥の森にいた何人かがその餌食となり、十人程のマゼンダの部下達はパニックを起こしていた。
「なんだ、何が起きた!?」
「あっちだ!!」
一人が指差す方にはうっすらと高さ3メートル大のシルエットが浮かび上がっていた。
そして今度は手に持った大きな石を投げつける。
ズドン、ズドンと矢継ぎ早に飛んでくる石の餌食となる彼ら
「なんでゴーレムがいるんだ!?」
「下行って仲間を呼んで来い!!」
「木のかげに隠れろ!」
誰かが叫ぶと、仲間の一人がアジトに助けを呼びに向かった。
「おい、お前なんとかしろ!」
ゴーレムに乗っている男に、外から声が掛けられる。
操縦席の男は攻撃してくるゴーレムに正面から向き合うが、次の瞬間飛んで来た石が直撃し仰向けに倒れてしまうのだった。
「何してんだ!早く立て!!」
「うるせぇ!やってんだろうが!!」
アサヒはライドスーツに乗り、そこらにある物を次々と投擲する、それは砲弾と化しマゼンダ達に襲いかかるっていった。
「さぁ、もっと出てこい。」
アサヒは投擲を一旦やめ、その身を大木の影に隠す。
「おい!盾を持ってきたぞ!!」
大型の盾を持った何人かがゴーレムに向かい迫り来る。
再び姿を表し、またもや石の砲撃を開始するアサヒ、ガツンと硬い音が鳴り響きマゼンダはアサヒの攻撃を耐えるが、威力の強さにそれ以上は進めずにいた。
そしてアジトから更に何人か飛び出して来たところで、その様子を小屋の近くに潜んで見ていたガンツォ達が行動に出た。
「突入すんぞ。」
ガンツォの掛け声で、ガンツォとアルマ、そして二人の仲間が地下に滑り降りて行く。
「二手に分かれろ!アルマ、シュンお前らは右だ、マックは俺と来い。」
地上では、アサヒのライドスーツがマゼンダに攻撃を仕掛けている、その一方でガンツォ達は広い地下空間を駆け巡るのだった。
「クソッこのアジト、思った以上にデケェな。」
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「ジーンさん!ゴーレムから襲撃を受けてます!!」
「なんだと!?」
「ガンツォか、思っていたよりかなり早いな…」
しばらくの沈黙の後、ジーンはアジトの処分を決める。
「このアジトは潰す、用意しろ。」
「ガキ共を忘れるなよ。」
三人の部下達が地下の最奥に向かう、もちろん子供達が監禁された檻がそこにあり、子供達を、移送する為に急いでいた。
「おい、アジトを処分するみてーだぞ!」
「潰すのかよ!」
「居心地よかったのに、もったいねぇなぁ。」
「巻き込まれる前にガキどもを連れ出すぞ。」
「へいへい」
そんな会話をしながら、通路を走る三人
通路両側にある部屋では、ガンツォとマックが息を潜め隠れていた。そして通り過ぎるマゼンダの部下の後を追い奥に進む。
彼らの会話を聞いたガンツォが、マックに指示を出す。
「ヤベェな、時間がねぇか?」
「マック、アルマんとこに行け。ガキどもは俺が連れ出す、アルマに今の事を伝えてアサヒんとこの兄ちゃんを探すよーに言っとけ。」
「頭一人で大丈夫っすか?」
「お前、俺を誰だと思ってんだ、こっちは任せろ、さっさと行け。」
「はい分かりました、お気をつけて」
マックは来た通路を戻って行った。
「おい、アジトを潰すってよ、もうコイツには用はねぇ。」
「マジか!逃げる用意しねーと!」
アルのいる部屋の見張りに部下が連絡に来ていた。
「おい!なんだよ、何が起きるんだ!?」
部屋から会話を聞いたアルが叫ぶ、しかし返事は返ってこない。
「クソッなんとかしねぇと…」
椅子と身体を繋いだ縄は固く結ばれていて身動きがとれない、それでも身を捩りなんとか動いてみたが、椅子と共に床に倒れ込んだだけで、縄は緩むことはなかった。
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「なんで、なんで、オレがこんな目に遭ってんだよ、チクショウ……」
包帯を巻かれた右腕を押さえながらベットに座るラノ
痛み止めと飲まされたモノのお陰か、痛みは麻痺し、更に目も虚ろになっている。
それは薬と呼べるモノではなく、ただの幻覚剤なのだ、しかもサバトと呼ばれた店に漂っていた煙の何十倍も強いモノだった。
朦朧とする意識の中、ラノはこんな事になった理由を考えていた。
「あんな荷物は海賊に渡しちまえばよかったんだ、そーすれば、戦争に巻き込まれる事もなかったのに。」
「コロニーに帰ってれば、こんなとこに来なくて済んだんだ!」
「オレの手が、無くなったのはアルの所為だ。そーだ、アイツにも同じ思いをさせてやる。」
ふらふらと立ち上がり、残った左手にナイフを握り、アルの部屋に向かうラノ
混濁する意識の中、この世界の事やコロニーの事、色々な記憶が入り混じり、ラノのドス黒い感情が増幅される。
「アルの手をチョン切ったら、次はアサヒだ。アイツら年下のくせに、いつも偉そーにしやがって!」
「ニコルは可愛いから、オレの女にしてやる。」
「レイモンドの野郎、なんでいなくなった、アイツの所為でこんな怖い思いをしたんだ。」
「クソックソックソックソックソッ、全部アイツらが悪いんじゃねぇか!」
独り言を呟きながら通路をふらつく、そしてアルの部屋にたどり着いた、見張りはすでに居らず、中には椅子のまま倒れたアルが居た。
「おーいアル、お前何してんだ?」
飲んだモノの影響で、すでにマトモな判断が出来ないラノは、何故自分がここに来たのかも分からない。
「よいしょ」
椅子とアルを起こし、話し掛ける。
「なぁ、俺お前の事が嫌いなんだよ。」
「何言ってんだ?テメェ」
「あん時だってそうだ。せっかく俺が海賊に教えてやったのに、調子にのって逃げた所為で戦争だよ。バカじゃねーのか。」
「はぁ?お前大丈夫なのか?」
「金があるから奢るって言ってやったのに断りやがってアサヒのヤツ、年上の言うことは従うもんだろ?」
支離滅裂な言動を不審に思うアル、そんなアルにお構い無しに、ラノは話し続ける。
「お前らがバカだから悪いんだ……それでなんでこんなとこにいるんですか?」
「あの、すいません。今日調子悪いんで、早退します。次から気をつけます、はい、すいません。」
すでに会話が破綻しているラノは左手のナイフを落とし、アルの部屋から立ち去って行った。
ラノの居なくなった部屋では、アルの足元にナイフが転がっている。アルは靴と靴下を脱ぎ、ナイフを足で掴みなんとか挟む事は出来たが、そこからは何も出来なかった。
「おい、何やってんだ?兄ちゃん」
アルが突然の声に顔を上げると、そこにはガンツォと名乗った男の仲間が立っていた。
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外ではアサヒの攻撃が続いていた、降り注ぐ木や石が止み、マゼンダ達が動き出す
マゼンダのゴーレムも起き上がり仲間の後に続く。
ドカンッと大きく重量感のある音がゴーレムの後ろ響き、マゼンダのゴーレムが方向を変え、そちらを見ると、アサヒの乗るゴーレムがそこに居た。
アサヒの乗るゴーレムは、素早くマゼンダのゴーレムの懐に入ると、手に持った丸太を振りかざす、振り向き様に攻撃を食らったゴーレムは、反撃はもちろん回避の挙動すら取れず、丸太の一撃を下半身に食らった。
そして、身動きが取れなくなったのだ、
一撃を入れたゴーレムのキャノピーが開き、アサヒが姿を見せる。
「さて、お前ら本気でやるつもりなんだよな?」
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ガンツォは三人の後を追い、アジトの最奥にたどり着いた。
「早く鍵を開けろ!」
「ガキども出てこい!移動するぞ!!」
鍵を開け、怖がる子供たちを無理やり引きずり出していた時、一人の子供が指をさし叫ぶ。
「ガンツォー!!」
「おう、待たせたな!」
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外ではアサヒがライドスーツを降り、マゼンダ達と交戦していた、しかし大半は足や腕を切り付けられ行動不能になっていた
「まだやるか?」
「ちきしょう、なんだこいつは?」
数では圧倒的に優位にたっていたマゼンダ達だったが、ライドスーツの攻撃ですでに半数以上はやられていた。
そしてその数はすでに三分の一以下にまでに減っていた。
その時、爆発音とともに地響きが起きる。
「おい、始まったぞ!」
「クソッ撤収だ!!」
マゼンダ達は慌てて逃げて行く。アサヒも只事ではないとアジト入口のある小屋に向かい走る。
小屋に近づくと、そこには人影があった。
「おいアル!!無事だったか!?」
小屋の外にはアルとガンツォの仲間達がすでに居た、手当を受けているアルが視界に入りアサヒは思わず声を掛けるのだった。
「酷い面になっちゃいました、迷惑をかけてすいません…」
「そおだな…」
「ところで、今の地響きはなんだ?それにガンツォは?」
振り向きガンツォの仲間に、今も小さな振動が続く先程の爆発音と地響きを訊ねた
「アジトの処分をしてるみたいです、ただ頭はまだ中に…」
ジーンは、首領の指示に従いアジトの後始末を始めたのだ、しかしガンツォと子供達は未だ姿を現してはいなかった。




