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サイキョウの二人

「なぁアサヒ、ゴーレムの弱点とかねぇのか?」


「う〜ん、強いて言うなら関節だな、膝の可動部を横から強い衝撃をかければ脚は潰せるはず。」

「動きを止めて操縦席を強制開放すれば中の奴を引きずり出せるかな。」


「強い衝撃か…」


 アサヒとガンツォそして部下達総勢六名は迷いの森にいた。

 アサヒとガンツォ、部下の二人はズーに乗り、残りはズーと荷車で森を走り進む。

 ニコルが店に飛び込んで来た後、アサヒはガンツォの屋敷で装備を整え、子供達の救出に向かったのだ。

 しかし、アルの件もあり充分に準備が出来た訳もなく、マゼンダのアジトへの道中に作戦を立てているのだ。

 ガンツォはあらかじめ、マゼンダとのやりとりになる事を想定しており大まかな段取りを決め、更に出撃の準備をしていたのだが、アルの状況次第で事が大きく変わる為、結局は出たとこ勝負は否めない状態であった。


「マゼンダのアジトの戦力は少なくとも三十は居るはずだ、俺達の目的はガキどもの救出だからよ、よけーな交戦はさけてぇんだ。」


 ガンツォの作戦は、アサヒに外で陽動をさせ、その隙にガンツォ達がアジトに潜入、子供達を連れ出し撤退するというもので、仮にゴーレムと対峙するとしたら、地下のアジトではなく地上になると予想していた。

 

「ところでそんな片手剣と手甲だけで、大丈夫か?装備は持ってこさせたから変えたらどーだ?」


「あぁ、コイツが丁度よさそうだからね、俺にはあんたみたいな怪力はないからな、取り回しのいいコイツで充分だよ。」


「アサヒさんは体捌きに自信があるって事ですよね。」


 隣を走る部下の一人がアサヒに話すのだった。


「それなりにね、ところで今日もレイピアと短剣を用意してるのか?ガンツォさんはあのごっついトンファーかな。」


 アサヒに話し掛けた部下がギョッとした顔をしガンツォに振り返る。


「あん、気付いてたのか?」


「あんたみたいなデカいヤツが、そんなごろごろいる訳ないだろ?」


「そりゃあそぉだ!あん時は楽しかったぜ、次はオメエに遊んでもらいてぇなぁ。」

「おう、これで隠し事無しだ!お互い信用していいよな?」


「いやダメだ、色々聞きたい事があるから帰ったらキチンと説明してもらうよ、もちろん皆無事に帰ってからだけどな。」


「分かった!!皆無事に帰ったら俺の知ってる事は全部話すぜ!」

「頼りにしてんぞ!アサヒ」

 

「はいはい、かしこまりました。」


 ガンツォが満面の笑顔でアサヒを見る、その顔にふたごころなく感じたアサヒも、軽口ではあるが快諾の気持ちを込めた返事を返した、即席の仲間ではあるが、お互いの腹の内をさらけ出し信頼を築く二人なのだ。




 その頃、マゼンダのアジトの一室では、気を失ったアルが椅子に縛り付けられている。


「おい、起きろ!」


 水を全身に浴びせかけられたアルは、目を覚まし顔を上げる。

 左側頭部にズキズキと激しい痛みが走り、先程の場面を思い出させる。

 二人の男の後ろで不気味な装飾の握りの杖を持ち、椅子に腰掛ける仮面の男がいた。


「お目覚めかな?泥棒さん」


「なんだ!テメェら、ぐはっ!!」


 アルが口を開くと男達の一人が、木の棒でアルの腹部を突いた。


「黙ってろ!」


「首領様が聞きたい事がある、お前はそれに答えればいい。」


 違う男が冷静にアルに話し掛けた。


「さて、君はいったいなんだい?」

「騎士団ではないし、自警団という感じでもない、子供を助けに来た様子からガンツォの手下のようだが、仲間が他にいるわけでも無し、なんで君だけなんだね?」


 首領は立ち上がり杖をコツコツと鳴らしながら、アルの周り歩く。


「俺はガンツォとかいうヤツの仲間じゃねぇ!」

「うちのライドスーツをお前達が盗んだんだろぉが!しかもそいつでガキを攫いやがって!!」


「おぉ、あなたラノの元お仲間ですか。」


「お前ら、ラノをどおした!?無事なのか!?」


 木の棒が視界に飛び込んで来る、衝撃と共に痛みが頬に走った。


「首領様が聞いてんだ!お前じゃねぇ!」


 言葉を発した後、拳が顔面に打ち込まれる

 二発、三発と続け様に打ち込まれアルの顔が次第に変形する、口からは血が流れ出し、瞼は腫れ痛々しく変色していく。

 最後に正面から蹴りを喰らい、椅子ごと床に倒れ込むのだった。


「そぉ〜でしたか、運送屋さんの方でしたか。うんうん」

「おい、お前ラノを連れて来なさい。」


「はい、分かりました!」


 先程までアルを痛めつけていた男は、ラノを呼びに部屋を出る。


「どうぞ腰をお掛けください。首領」


 冷静に話しをする男が、椅子を引き首領が腰を掛ける。

 そして、床に倒れたアルも引き起こした。


「ラノは…、無事なのか?」


「すぐに分かる、黙って座ってろ。」


「なぁジーン、面白そうじゃないかい?」

「フフフッ」


「はい、首領」


「なんだよ…クソッ」


 首領は、この先の展開に期待し口元を歪め笑う、ジーンと呼ばれる男は短く答えるのだった。

 

「あの、何か御用ですか?」


 入口から聞き覚えのある声がし、入って来た男を見るとアルは愕然とする。


「なんやってだよラノ!!」


「えっ!?」


 ラノは椅子に縛られて動けないアルを見つめ固まり、その場を動けなくなった。


「やぁラノ、元お仲間がいらしたんで挨拶でもしたらと思ってねぇ。」


「ラノは我々の組織に入った、そしてゴーレムを盗ませたんだ。」


「なんだよ、そりゃあ…」


 アルは驚愕とともに落胆し、俯いたまま顔を上げる事すら出来なくなる。


「さて、感動の対面も済んだ事ですし、もう彼に用はありませんね。」


 首領はラノを連れてきた男の腰にぶら下がった剣を抜くと、アルの首筋に当てる。

 アルは下を向いたまま顔を上げる事すらしない。


「あぁ、そうだ!ラノ、君が後始末しなさい。」


 首領が大袈裟な身振りで、ラノに話しを振った。


「えぇ!?」


 首領は満面の笑みで、ラノの手をとり剣を握らせた。


「さぁ、遠慮せずにどおぞ。」


 舞台俳優の如き手振りでラノを促す首領、

しかしラノは剣を持つ手を震わせ振り上げる事が出来ずにいた。

 初めて持つその武器は実際の質量より重く彼にのしかかり、今から行う行為をこの瞬間なんどもラノの頭の中を駆け巡る。

 覚悟を決めたラノはその重い剣を振りかぶる、しかしその腕はすぐには振り下ろされない、その一瞬が数時間にも感じたラノは、疲れ果てた顔で腕を下ろした。

 剣はアルの首をはねる事が出来ず、床に硬い音をたてただけで、ラノの手に握られたままだった。


「つまらん。」


 その一言の後、シュッと風を切る音と腕に何か触れた感触の後、ガランと何かが落ちる音がする。それと同時に首領の持つ仕込み杖がカチリと音をたてた。

 右半身が、軽くなった錯覚でふらつくラノ、音がした床を見ると握っていたはずの剣と血が滴る腕が目に飛び込んできた。


「えっ!?」


 軽くなったのは錯覚ではなかったのだ。肘から先の無くなった右腕からは血が噴き出る様に流れ、瞬間何が起きたかラノは理解する事が出来なかった。

 腕を切られた!そう理解した瞬間、激痛が全身に走る。


「うぎゃぁぁぁぁーーー!!」


 襲い来る激痛に右腕押さえ、血まみれになった床を転げ回るラノ


「飽きました、私は町に戻ります。」


「はい、乗り物を用意させます。」


 興味を失った首領は、ラノに一瞥もくれず部屋を後にした。


「おい、ラノを連れて行け目障りだ。」


「分かりました。」


 ラノの叫び声に顔を上げたアルは目の前に広がる惨状と飛び散る生暖かい血に言葉を失っていた。


「よかったなお前、首領は気が短い。ラノのお陰で命拾いしたぞ。今はな」


 ジーンはアルに次はお前だと、暗に語るのだった。

 そして首領はジーンが用意した鳥車に乗り込む。


「さて、町では何をしようかな?今から楽しみだよ。」

「そうそう、すぐにガンツォが来るからここは片付けなさい、じゃあね。」


「はい、お気を付けて」


 首領を乗せた鳥車が立ち込める霧の中に消えていった。




 一方、アサヒ達は沼の手前にたどり着いていた。


「止まれ!何か来るぞ、隠れろ。」


 薄靄の中、鳥車がそのシルエットを覗かす、アサヒ達は気配を殺し通り過ぎて行くのを見守る。


「なんでこんなところにあんな鳥車がいるんだ?」


 通り過ぎた鳥車は、装飾を施された一般に使われる荷車ではなかったのだ。


「まぁいい、今はガキと兄ちゃんが優先だ。」


「頭!あれ見てください、あそこ!」


「どおした?アルマ」


 大木の影に座したライドスーツがあったのだ。アサヒが近づき中を確認すると、操縦席にアルの姿はなかった。


「てことは、アルは中にいるはず。」


「兄ちゃんが出てってからもう一時間は過ぎてんぞ、捕まってんじゃねぇか?」


「クソッ!無事だといいんだが…」


「まだわかんねぇが行くしかねぇな。」

「そんで、そいつは使えそうか!?」


「あぁ、大丈夫だ。」


「よし、アジトはすぐそこだ、行くぞアサヒ!!」


「あぁ、任せとけ!」


 腰の片手剣と手甲を確認し、アルを心配する気持ちと裏腹に久しぶりの戦闘に少しの高揚感と緊張を感じるアサヒ


「よし、テメェらスピード勝負だ、さっさとガキと兄ちゃん見つけて、皆無事にクバルに帰るぞ!!」


閲覧ありがとうございます

あと数話で魔族襲来編おわります。


次は明るめの展開で行こうかな〜と思ってます

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