惨劇の夜を越えて
大通りでの魔族達との攻防の後、アサヒはアコ達と別れ、店に戻って全員の無事を確認した
その日は夜通し行方不明者の捜索と残りの魔族や獣討伐などがあり騎士団と自警団は眠れぬ夜を過ごしていた
翌日の朝も襲撃の後始末に追われ、町は多くの人達で溢れていた
チェン運送も今日は休みをとり、ニコルにはお客さんが来た際の対応の為に残ってもらい、他の皆で片付けを手伝う事にしたのだ
そしてアサヒは一人、皆より早く中央広場に来ていた
「おはようアサヒ、みんなどーだった?」
「あぁ、おかげで全員無事だったよ、ミゲル達ががんばってくれたみたいだね」
「そっか、よかった、でも正門とその付近の被害はけっこうあったみたい」
「まだちゃんと分かってないけど、怪我人や死者もかなりいるみたい・・・」
「アコは大丈夫なのか、昨日寝てないんだろ?」
「アタシとミゲルは、一段落して帰らせてもらったからね、平気だよ」
「ゴメスの怪我も心配だし、あとでお見舞いに行くんだけど、アサヒも一緒にいこうよ」
「うんそーだね、怪我してたし仕事できるのかなぁ」
広場にはアコやミゲル、騎士団の面々も来ており、アサヒを見つけたアコがアサヒの下にやって来た
クバルの西門付近は、騎士団と自警団の活躍により町中への侵入は最小限に止めらていたが、正門の魔族の数は西門の倍以上だったらしく、初めに対応に当たった部隊と、周辺住民の被害は甚大であった
ゴメスの店は正門近くだった為に魔族の襲撃に晒されてしまったのだ
しかし、魔族の目的が町の権力者とレイモンドだった為に魔族は大通りをほぼ素通りした事もあって通り沿いの被害は少なかったのだ
「おーっす聞いたぜ、昨日も凄かったみたいだなぁ、騎士団にでもなった方がいいんじゃねーかい?」
ミゲルもアサヒを見つけやって来る
彼ら自警団は、仕事をしながら依頼や有事の際に活動をしているのだ
昨日もミゲルは仕事中に連絡を受け、現場に駆けつけていた
「ところで、貧民街も被害があったそーでな、子供が攫われたらしいんだ」
「え?そーなの、でも、東門も警備がいたよね、報告くらい出来たんじゃないの?」
「それが、自警団が四人居たんだが、皆やられてたんだ、しかも交戦した跡がなかったらしくてな、皆、一瞬で殺されたみたいだ」
「魔族なの?」
「目撃情報だと、アサシンとゴーレムだったらしいけどな」
「ふ〜ん・・・」
「まぁ、襲撃だけじゃなくて色々あるわけなんだよ、だからさ、自警団に入ってくれよ、そしたら俺たちも心強いし、なぁアコ?」
「そりゃあアサヒが居てくれたら、魔族なんかへっちゃらだよ!」
「買い被り過ぎだよ、昨日もアコが来てくれたからよかったけど、正直びびってたんだよ」
「ウソだねー、アタシはちゃんと見てたし、聞いてたよ、《待てコラ!テメェ!!》って飛び降りてきたじゃん!その後だってアタシ達がトドメを刺したけど、アサヒ一人で全然余裕だったもん」
「ははは、まぁ、自警団の件は考えとくよ」
正直、アサヒとしては本来の目的がある為、必要以上にこの世界に関わるのは遠慮しているのだが、ここで生活していくにつれ愛着も湧き、今後この世界とどの様に付き合っていくかを計りかねてはいるのだ
しかし、アサヒの思惑とは裏腹に事態は彼らを巻き込んでいく
貧民街、時を同じくしてガンツォの屋敷では昨晩の片付けにファミリーと周辺住民が早くから集まっていた
「おう、早くからすまねぇなオメエら」
「とんでもないですお頭、こういう時こそじゃないっスか」
「そーですよ親分さん、いつもお世話になってるんですから、遠慮しないで下さいよ」
「ところで、ポルコさんの具合はどおなんですか?」
「あぁ、まだ意識は戻ってねーな、屋敷で寝かしちゃいるが、治療士もやれる事はやってくれたみてーだが後はアイツの体力次第だとよ」
「昨日ゴーレムが出たとき、私らは何も出来なかったけど、ポルコさんは勇敢に戦ってくれたんです」
「それに子供達もどーなったのか・・」
「そーだな、攫われたガキどもは、俺が必ず助け出してやる」
「実はマリアだけ捕まらずに助かってたんだ、今はアニと一瞬に寝てるみてーだから、起きたら昨日の事を聞いてみるつもりだ」
昨日の中央広場の攻防の最中、屋敷が襲撃に遭い子供達が攫われた事に、何かしらの違和感を感じているガンツォなのだ
《んにしても、色々とタイミングが良すぎだよな?俺たちの留守を狙ったとしか考えられねーしよぉ》
集まった住人や仲間と片付けをしていると、アニータとマリアがガンツォの下へとやって来た
「おうアニ、調子はどーだ?」
「私とマリアは平気よ、それよりポルコが心配・・・」
「それに子供たちも・・・、ごめんなさい私じゃまったく役に立たなかった」
「気にすんな、ポルコのヤツもがんばってくれたみてーだし、マリアだけでも助かったのはオマエ達のおかげだぜ」
「屋敷なんざ直せばいいだけだ、それにガキどももオレがなんとする」
「マリアが昨日の事をあなたに話したいって、聞いてあげてね」
「あのね、キムにいが、たなにアタシをかくしてくれたの」
「それから、ゴーレムのなかから、おじさんがでてきて、まぞくといっしょになにかしてたの、そしたら、おじさんがまたゴーレムにのって、みんなをつれていっちゃったの」
「そーかぁ、よく隠れてた、偉いぞ!怖かったのによくがんばったなぁ」
「マリアが見ててくれたからよくわかったぜ」
「あなたどう思う?ゴーレムから人が出てきたって、どういう事かしら?」
「いろいろと思い当たる節があんぞ、マリアのおかげだな」
「おい、アルマを呼んでこい!ちょっと出掛けるぞ!!」
何か思い付いたガンツォは、近くに居た仲間にアルマを呼びに行かせる
「お待たせしました、何か御用ですか頭?」
「なぁ、今回の件はマゼンダがからんでるかもしれねーぞ」
「え!?どーゆう事なんすか?」
「マリアが言うには、ゴーレムから人が出てきたらしい」
「人が乗れるゴーレムって、あの運送屋の?」
「そーゆうこった、もし運送屋のゴーレムが、すでに盗まれてたとしたら、そいつをマゼンダが使った可能性が高えんじゃねぇか?」
「先ずは運送屋に確認に行きましょう!」
「マゼンダと決まれば、この落とし前はきちんとつけさせてやるぜ!」
ガンツォはアルマ達とチェン運送に出向くのだった
アルとピーター、Jとネェルがアサヒと合流し中央広場の片付けをしていると、一際巨躯な男が現れた
「なんかごっついオッサンが来たなぁ」
「ありゃあ、ガンツォって貧民街の元締めだぜ、賭場や飲み屋を取り仕切ってて、クバルの裏側のボスだ、関わらねー方が身の為だ」
「へぇー、やっぱどこに行ってもそーゆーのはいるんだな」
「アルさんなら気が合うんじゃないっスか?」
「だから、今は真面目に働いてんだろ!」
『ギャングだ、ギャングー』
「誰だ!変な事教えたのは!!」
チェン運送の皆とミゲルがそんな話しをしている中、ガンツォと呼ばれた大男は広場を眺め、何かを探している様子だった
「おーい、みんなー」
モタードに跨り、ニコルがチェン運送の皆の下にやって来る
「さっきお店にとっても大きな人が来てアサヒさんを探してましたよー」
「あ、あの人ですよー」
ニコルは先程ミゲルが言ったガンツォを指さすのだった、それと同時にガンツォもこちらを見つけた様で、その巨体を真っ直ぐにこちらに向かって来た
「おう、あんた運送屋のアサヒだろ?ちぃと聞きてー事があんだけど、面貸してくんねーか?」
近づくと、その巨体は更に大きく感じ、まるでゴーレムが目の前に現れたかの様なのだ
「おうおう、なんの用か知らねーけど、いきなりなんだよ、オッサン!」
ミゲルの忠告にも関わらず、アルはガンツォとアサヒの間に割り込み、ガンツォを威嚇する
「おうそりゃあそーだな、兄ちゃんの言うとーりだ、俺ぁガンツォ、アサヒに話があんだ、別に取って食おうってわけじゃあねぇぞ」
ガンツォはアサヒと話をしたいと申し出てきたのだった
閲覧ありがとうございます
魔族襲来編もうしばらくお付き合いください
ブクマ、感想、評価をしていただいた皆さまありがとうございます、大変励みになってます
これからも皆さまが楽しんで読める様がんばりますので、引き続きお付き合いをよろしくお願いします




