宇宙②
修正版です
広大な宇宙空間を疾走するフェイロンはリニアレールから飛び立つと徐々に最大船速にまで加速すると慣性航行に移行する。そして貨物船はクルーズモードへと変形していく。
船は胴体から翼を展開し、コクピットにあたる管制ブリッジは斜め前方に伸び、フェイロンはその名の通りドラゴンに似た姿になっている。そして貨物船内では機体チェックを行なっていた。
「速度確認OK、各所バルブ開閉異常無し、スラスターノズル稼働OK、圧力計異常無し、通信ライン確保OK、燃料残量フル確認
、その他センサー類稼働状況通常確認と、んじゃマニュアルからオートに移行するぞ〜。」
クルー達はそれぞれのチェックを済ますと緊張の面持ちを崩すのだった。
「皆んなハーネス外していいぞ。さて配送先は工業団地だね。時間あるからTTCのラボまではのんびりするかね。」
「ねぇアサヒさん、船の部品らしいけど実際どおなんスかね?新造戦艦とかだったりして。ちっとキナ臭いっスね。」
「そうだなぁ、まだまだ情勢は不安定だからね。その可能性はなくは無いよな。」
アサヒとアルの話しにピーターが加わる。
「情報のリークや漏洩は大丈夫なんスかね?海賊に狙われてたら面倒っスよね。」
「そうなったらアサヒさんに頑張ってもらえばよろしいんじゃないですか?」
ピーターが不安がると、それにJが答える。
やはりクルー達は積荷に興味がある様で、それぞれ好きに想像を働かせていた。事実十五年前の大戦以来、各地でテロや紛争が頻発し情勢が不安定になっていたからである。
あの戦争で、苦い思いをしたアサヒにとってはあまり関わりたくはない事柄ではあったのだった。
「でも依頼主の話しだと、ただの新型宇宙船の部品って事なんで心配はいらないと思いますよ〜。とにかく明日の昼前にはコロニーに着きますから、皆さん事務関係を片付けたら少しのんびりしましょうね。」
アサヒ達の会話を聞いたニコルは、そんな心配より目の前にある仕事を片付ける様に促すのだった。
その一方で、ラノは他のクルーに気付かれない様にどこかに通信を入れていた。そして手首に装着されたマルチインターフェースモバイルのディスプレイには、入金完了の文字が浮かんでいた。
《へへっ、ありがてぇ…。》
受け持ちの業務をこなしクルーたちが束の間の休息を楽しんでいたその時であった。フェイロンの船内に唐突に警戒アラームが鳴り響くのだった。
「なんだ!?こんなとこでデブリの類か?」
「いや違います!所属不明の小型機です。現在50km後方、さらに加速して接近中!」
「搭載機2機射出!!サイズからして中型ライドスーツ!」
全高7m強の人型ロボット、それは戦闘用にカスタムが施されたライドスーツであった。
彼らの不安が的中し海賊が現れたのだ。しかし大半のクルーに焦りはなく、むしろ余裕すらあったのだ。
「おいおい海賊かよ。本物のゴミが出やがったな。どうします振り切ります?」
アルが操縦席に飛び移ると、オートパイロットをマニュアルに変更しながらアサヒに問いかけるのだった。
「ライドスーツがミサイル発射、右舷側っス!」
「はいよっと。」
アルが操縦桿を握り、操縦をマニュアルに変えた直後、海賊は攻撃を仕掛けて来たのだ。
「面倒はごめんだ、逃げるが勝ちだな。」
「了解っ!みんなしっかりつかまってな!」
アルがスロットルを絞ると同時に急激な加速が貨物船を前方に推し進める。飛竜、その名に恥じぬ推力で、瞬く間に海賊の小型機と射出されたライドスーツは遠のいていった。
民間企業の中型航宙機とはいえ、フェイロンの船足は非常に優秀であった。もちろんJによるカスタムが施され、そのポテンシャルは元の倍以上にされている。その一連の出来事にラノは驚きの表情を浮かべるのだった。
そして、海賊との遭遇があったものの、無事工業団地コロニーに到着した彼らだった。
「ふぁ〜やっと着いたぜ、休める〜。」
海賊との邂逅から、アルはパイロット席を離れることなくここまで操縦し続けた。そのおかげで到着予定より半日程早く到着したのだ。
「9時か早かったな。アルご苦労さんしっかり休んでくれ。」
「検疫が終わったら、機体チェックと荷下ろしな。終わったら自由行動でいいよ。約束の時間までは十分あるからそれまでは好きにしてね。」
アルに労いの言葉をかけ、クルーに指示を出すアサヒ、アルはさっさと休みたいとホテルの場所を問うのだった。
「ホテルってどこでしたっけ?」
「街中のビジネスホテル、遅い時間だけどチェックイン出来るはず」
港内の支持アームに接続したフェイロンに検査の為に港湾職員が近づいてくるのがブリッジの窓から見えた。ブリッジ側面にある二重扉のロックを解除すると職員が船内に入って来るのだった。
「失礼します。検査を行います。」
アサヒ達はタブレット職員に渡し貨物室を開ける。そして後方のハッチを開くと職員達は手際よく検査にとりかかるのだった。
「検疫とチェック終わりました入港許可します。積荷も降ろしてOKです。」
しばらくして港湾職員の検疫とチェックが終わり、クルー達は貨物船から積荷を降ろしていく。
「ところで海賊が出たそうですね。無事でなによりでした。念のため代表者は調書をとりたいので、警察にご足労願えますか?」
一通りの検査が終わった職員が、キャプテンのアサヒに警察への出頭を促す。
「特に被害もなかったけど警察で調書とるんですか?」
「念のためってやつです。最近多いんで、軍も警戒してるみたいで通達があったんですよ。小さな事でも情報を集めてるみたいですね。」
「そうなんですね。」
昨今の世界情勢が絡み、思いがけず警察に足を運ぶ事になってしまったアサヒは、若干憂いを感じるのだった。
この時代の警察業務は軍に統合され、警察署は軍内部にあったのだ。そして軍籍を離れたアサヒは過去の出来事から軍とは意識的に距離を置く様にしていたのだ。
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