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混乱の町

 魔族の襲来からしばらく過ぎ、町はあちこち惨状と化していた


 西門付近ではゴーレムと騎士団及び自警団が戦っていた

 ゴーレムの後ろには魔導士とそれを守る様に獣が騎士団達と交戦をする

 建物を破壊し、その瓦礫を手当たり次第に騎士団達に向けて投げつけるゴーレム、魔導士達は魔道具による炎を撒き散らし、騎士団達のゆく手を遮る、そしてその間をぬって獣が襲い来るのだった

 防戦一方に見られたが、魔導士の炎とゴーレムの攻撃を防衛隊が防ぎながら、その距離をじりじりと縮めていく騎士団達

 ボーガンを携えた一団が一斉射を放つと獣の群れに決定打を与え、魔族達の前線に隙が生まれた

 それを見逃さず騎士団の数人が飛び出し、ゴーレムから投げられる瓦礫をかいくぐり魔導士を仕留めると、ゴーレムは膝を落とし身動きを停めるのだった


「アコ、ゴーレムと魔導士は片付いた、獣とアサシンが町に入り込んだから、五人程連れて町中に行ってくれ!」

「ついでにゴメスんとこも頼む、くれぐれも無理はすんなよ!」


「分かった!」


「各部隊、町中の魔族の追撃を行う!残りの魔族を見つけ次第退治するぞ!!」


 西門からの襲撃に騎士団と共にミゲルとアコ達自警団も応戦していたのだが、ゴーレムと魔導士に対応している隙に、何体か町中に入り込んでしまったのだ


 アコは仲間と共に町中に入り込んだ獣とアサシンの掃討に向かう、町中ではあちこちに逃げ惑う住人達おり、魔族は手当たり次第に襲撃をしていた

 アコ達や他の部隊も何隊か町中に迎撃に来ていたのだが、魔族の数はかなりいたのだった


「けっこう入り込んでるじゃん!正門は何してんだよ!」


 西門からの侵入は少ない様に思えていたのだが、町中の魔族の数が予想以上で、正門の襲撃の規模の大きさを物語っていた


 町中の獣を探しては倒し、正門側に移動するアコ、しばらく行くと何体か倒された獣が道に横たわっているのを見つけた


「どっかの隊がもう来てたのか?」


 アコの部隊はアコをはじめ皆の実力もあり、他の部隊より早いペースで町中を進んでいた、辺りを見渡し交戦している部隊を探すが見当たらず、道の先にあるゴメスの店を目指して進もうとした時、アサシンが建物の2階窓から飛び出して、アコ達の前に現れた

 そしてそれを追う様にアサヒも2階窓から飛び降りて来るのだった


「待てコラ!テメェ!!」


「アサヒ!!」


 突然の出来事に、驚くアコだったが、瞬時に状況を判断しアサヒに剣を投げ渡す

 アサヒの両手には、小さなナイフが握られていた、しかしそれは家庭用包丁だったのだ

 よく見るとアサシンの服はそこかしこ切り傷で破れ、身体には小さなナイフ数本と棒切れが突き刺さっており、どす黒く赤茶色の体液が流れ出していた

 アコが来る直前、アサヒは獣を薙ぎ倒し住人に襲いかかるアサシンを追いかけ建物内に入って交戦していた、しかしモップの柄は木製だった為、アサシンとの攻防で短くなり、やむなく台所の包丁で戦っていたのだ


「おう!」


 鞘に収められた剣を左腰に構え、両の手に異形の剣を持つアサシンと対峙する

 次の瞬間、アサシンがアサヒ目掛けて突っ込む

 常人ならば、その勢いに吹き飛ばされるであろうスピードで襲い来るアサシンは、その勢いのまま直角に右側の壁に叩きつけられるのだった

 アサヒは襲い来るアサシンにタイミングを合わせ、居合斬りで薙ぎ払ったのだ

 そして動きを止めたアサシンに、アコと自警団がトドメをさした


「ふぅ」


「アサヒ無事だったか!?」


「ああ、ありがとう、大丈夫だよ」

「それにしても、コイツらが魔王の手下ってヤツか?」


「そうだよ、てかここら辺に転がってる獣はアサヒがやったのか?」


「うん、そーだよ」


「一人で?」

「じゃあ、アサシンも一人で相手してたって事!?」


「あぁ、でもあの人みたいなヤツは手こずったよ、殴っても蹴っても怯んでくれないからさぁ、しかも武器が無くてね」


「アサヒすげーな・・・」


「騎士団より強いよねぇあの人・・」


「あの人に任せた方がよくない?」


 アサヒの強さを知っているつもりだったアコと、その仲間たちは驚きを隠せずについ本音を漏らすのだった

 獣一体であれば、強さを比較するとバブーン程度だが、二、三体で群れをなして攻撃してくるので、こちらの数が少ないと強敵であった、そしてアサシンは知能もあり武器も使用する、さらにその身体能力は高く建物二階程度の高さをジャンプできる、それ故に騎士団でも手練れでなければ一対一では対応できない相手であった 


「確かに動きは早いし、変な動きするけど慣れたらね、攻撃は単調だったし」


「まぁアサヒが強いのはありがたいよ、で、これからどーするの?」


「うん、店に戻ろかなって」


「市場の方はミゲル達と騎士団が向かってるはず、それに町の西側は多分片付いてると思うよ」


 西門とその付近及び市場周辺はアコが町中に迎撃に来るのとほぼ同時に他の部隊が展開し、ほぼ魔族を殲滅し終わっていた


「そっか、とりあえず大丈夫そうかな、アコは正門に向かうのか?」


「うん、町中を片付けながらゴメスの店に寄って、んで正門大通りに行くつもり」


「そっか、じゃあ俺も一緒にいくよ」


「やったね!めっちゃ心強いしー!」


 アサヒはひとまずアコ達と行動を共にするのだった



     ーーーーーーーー



 アサヒとアコ達が合流した頃、正門側の魔族は正門を破り大通りの中程まで差し掛かろうとしていた


『ユクゾ、オマエタチ、コノマチノシハイシャドモト、レイモンドヲネラエ!!』


 大通りの魔族には指揮官らしきアサシンがいた、通常の魔族は人語を話さず人類とはコミュニケーションはとらない、しかし人語を使う知能の高い者もいたが友好的だった事は一度もなかった


「こいつらの目的はレイモンド殿達だ!報告に行かせろ!!」


 レイモンド卿の来訪とクバル周辺での魔族の目撃、及び町の外での被害は重なっていたのだ、クバル、キルマー間での交易をしている商人達から報告が上がっており、今回の襲撃がレイモンドを狙ったものの可能性は高かったのだ

 魔族は国や町の混乱を狙い貴族や豪商などの有力者を襲う事もしばしばあり、そのたびに町の行政に影響が出ていたのだ


「失礼します報告です!魔族の目的はやはり御方々であると判明しました!引き続きこちらに避難していただき、部隊を集結させ全力で防衛致します!!」


「お、おい、本当にここは大丈夫なのか?」


 怯えるレイモンド卿がつい口を出す


「ヤツらの目的が判明しましたので、こちらの防衛を最優先します、町中は手薄となりますが、中央広場にて迎撃、殲滅を致します!!」



      ーーーーーーーー



 アサヒと行動をともにしたアコ達は、正門大通りを目指し動きだしていた


「ゴメスの様子を見たら、そのまま大通りに出るからな」


 アコがアサヒに告げる、移動の間にも獣を撃退しながらゴメスの店を目指す彼ら

 ゴメスの店に到着し、アコが中に入りゴメスを呼ぶ


「ゴメスー!無事かー!?」


「おう、アコ!俺達は大丈夫だ、客も皆上に避難させてんぞ」


 二階からゴメスが降りて来て、アコに無事を伝えたその時、獣数匹が店に入り込んで来るのだった、続けて自警団の仲間が入って来た


「ゴメス下がって!!」


 外ではアサヒがアサシンと対峙していた


「なんだよ、どんだけ町に入ってんだ!?」


 店内では獣を相手にアコと仲間が交戦する、飛びかかる獣を仲間が盾で防ぎ、アコがその瞬間斬りかかる

 しかし獣達も連携して、矢継ぎ早にアコ達に襲い来るのだった

 しばらく攻防が繰り返さる中、厨房に隠れていたゴメスが何かを放り投げた


「そりゃ!お前らにゃもったいねーが、毛長牛の肉でも喰らえ!!」


 投げ込まれたのは、血の滴る毛長牛の肉であった、獣達はそちらに気を取られ一瞬隙が生まれた

 その隙を見逃さず、アコが一匹仕留めたが

獣の一匹はゴメスに向かうのだった


「うおぃ!こっち来んな!!」


 ゴメスは手当たり次第に、物を投げながら厨房に逃げていった、獣も後を追う様に厨房の中に飛び込んで行った

 そのとき外のアサシンを倒したアサヒが店内に駆け込んで来る


「厨房に一匹行ったから頼む!!ゴメスが襲われてるよ!!」


「分かった!!」


 厨房に飛び込んだアサヒの目に飛び込んで来たのは、獣に右腕を噛みつかれ、作業台の上でねじ伏せられているゴメスだった


「こんちくしょう!」


 左手に持った調理用の麺棒で獣を殴りつけるゴメスだったが、力強い前脚で肩を押さえつけられ身動きが取れなくなっていた


「よいしょーっ!」


 アサヒは咄嗟に転がるフライパンを持ち、ゴメスの目前にある獣の顔目掛けてフライパンを叩きつけた

 フライパンを叩きつけた勢いで、獣はゴメスから離れる、そしてアサヒの手にはフライパンの取手だけ残っていた


「こんなとこでも、取手が取れるヤツかよ!?」


 そして怯んだ獣にトドメの一撃を刺して攻防は終わった


「ゴメスさん大丈夫です!?」


「いててて、右手は噛まれちゃいるが、命はあるぜ!」


「すぐ手当しないと!アコ、ゴメスさんが怪我したから、なんかないか?」


「上にアンナが居る、薬箱もあっから呼んで来てくれ」


 アコがアンナを呼びゴメスの治療をする、ひとまずの安全を確認し、アサヒ達はゴメスの店を後にした


「俺たちはこのまま大通りに向かうから、このまま店の上で避難しててくれ」



      ーーーーーーーー



 町が魔族の襲撃で混乱している最中、東門近くでは魔族とは別の者たちが集まっていた


「さぁて、俺たちもそろそろ始めるとするか、おう新入り、失敗るんじゃねーぞ」


「はい」


「これが終われば、大金入って酒も女も好きほーだいだぜ、それにクスリもな」


 彼らは魔族風の衣装に身を包みその時が来るのを待っていた、そして、偽装されたゴーレムもその中にいた

 新入りと呼ばれた男はゴーレムの操縦席に座っていたのだった



閲覧ありがとうございます

シリアス展開いかがでしょうか?


もしよろしければ感想等いただけると嬉しいです

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