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とおりゃんせ

 そう、偶然にもアサヒ達は取引先のラボで昨日の彼に出くわしてしまったのだ


「昨日、通信機っておっしゃいましたよね?それって言葉を飛ばしたり、受けたりする魔道具ですよね!?」


「やあ、一日ぶりだね、こちらで働いていたなんて驚きだよ、そーだね、君の言う通りだが少し間違っているね、正確には音を信号変換して送受信をしているだね」


「さーすが、ゴーレム技師だなぁ〜、オレは何の事かまったく分からないが、色々知ってるんだなぁ〜」


 慌てて適当な事を言いごまかしたアサヒ、そしてカルロスも追撃の一言を言う

 

「ジェイク、お客様に失礼だぞ!まずは自己紹介と挨拶をしなさい」


「すいません親方」

「初めまして、ジェイクと言います、ここで技師をやってます」


「どうもこちらこそ、私はジョセフ、一応技師をやってます、以後お見知りおきを」


「ジェイク、ジェイコブさんはゴーレム技師をやってらっしゃるそうだ、我々の知らない技術も色々とご存知だと思うがくれぐれも失礼の無いようにな」

「申し訳ありませんでした、彼は遺物の修復やまだ見ぬ技術に大変興味があるようで、よく集荷場で鑑定前の発掘品を物色しているのですよ」


「はい、昨日お会いして少しお話させて頂きました、お若いのご熱心で素晴らしいですね」


 ひとまずその場を取り繕い、ジェイクと呼ばれた青年とはそこで別れ、ラボを後にした


「それでは、今後ともよろしくお願いします」


「ヨシムラさんもご親切にありがとうございました」


 カルロスと別れの挨拶をかわし、アサヒ達はハーレーからシンブに戻るのだった


「いやー、危なかったー、これからは気を付けないとな」


「アサヒさんがですね」


「分かってるよ、不用意に俺たちの道具を使うのはやめるよ」


 元はと言えば、Jの行動が原因なのだが、なぜか言いくるめられるアサヒだった

 シンブに着くと、協会の建物にズーと荷車が停まっていた、中に入ると商人たちがすでに帰りの準備を整え、アサヒ達を待っていたのだ


「よう工房はどおだった?珍しい物でもあったかい?」


 マルコやミゲル、アコも先にシンブに来ており、アサヒ達を待っていたのだった


「色々と話しができてよかったよ」


「それはよかったですのぉ、今後とも我等と共に仲良く商売できるとよいですなぁ」


 昨日のヨシムラの話もあり、白々しさがいっそう増した気がするアサヒだった


「それでは、用意でき次第出発しますぞ」

「今日も山を越えたらキャンプ地で一泊し、明日クバルへ帰ります、よろしいな」


 アサヒたちは帰り支度を素早く済ませ、北の土産と食材を用意し皆に合流した、実はアサヒは予期せぬ物をシンブ、ハーレーで見つけており、それを必ず持ち帰ると固く心に誓っていたのだ

 そして、アサヒたちは北の地を後にする


「ヨシムラさん、滞在中いろいろお世話してもらい本当にありがとうございました、今後しっかり仕事はやらさせて頂きますのでよろしくお願いします」


「はい、こちらこそ期待してるので、お互い頑張りましょう」

「それでは、帰りの道中お気をつけて」


 ヨシムラの見送りを背にシンブを後にした一行は、行き同様【ソードカット】を通り、狭く急な坂道を慎重に進みキャンプ地へとたどり着いた、陽はまだ沈んではいなかったが、無理な移動は危険を伴うためここで一泊し、明朝出発するのだ


「いやいや、ここまで来ればあと一息今日はゆっくり休みましょうな」


 何故か、やけに馴れ馴れしく話しかけてくる商人たち、その手には飲み物が用意されていた


「なかなかお話も出来ませんでしたが、ここまで来れば、帰って来たも同然、新しい仕事の祝いも兼ねて些細ではありますが、酒を用意しました、今晩皆さんで楽しんでくだされ」


「ご丁寧にありがとうございます、頂きます、よろしければご一緒にいかがですか?」


「いやいや、下手に気を遣わせては申し訳ない、我等は遠慮させていただきますぞ」


 やはりその目の奥には親愛の情ではない何かを感じるアサヒだった


「お!酒じゃん、いいもん貰ったな」


「なんか分かんないけど、あの人達にもらっちゃったよ」


「私達はお酒飲みませんし、ミゲルさん良ければ晩酌にどおぞ」


「まじか!?ありがてぇ、いただくぜい」


 怪しげな商人からのプレゼントであり、正直手をつけたくなかったのだが、Jが上手くミゲルに押し付けたのだ


 行き同様三組に分かれて山小屋を使う一行、その一つで商人達は今夜起こる出来事について話ていた


「ホッホッホ、あれを呑めば簡単には目は覚めんぞ、アルコールの強いのを用意してやったでの、しかも飲み口はマイルドじゃで、酌も進むであろう、そして酔い潰れたところを彼奴等に仕事をしてもらえばよしじゃ」


「行きのバブーンはマルコの所為で、事なきを得よったが今度こそな、彼奴等もしっかり準備しておろうて」


「それに今頃クバルでは面白い事になっておるじゃろうな、トリニティにまで仕事を頼むとは、そちらも悪よのう」


「クククッ、楽しみじゃわい、いきはよいよい、帰りは怖いとな」


 その一方で、アサヒ達は夕食の用意をしていた

 ハーレー、シンブでは森のおかげで食糧は豊富なのだが、肉や魚はワイルドな味わいが多く、レンゴに比べてクセが強い、そして森で取れるスパイスも豊富な事から、辛味の効いたスパイス煮込みや、ハーブ焼き等が多い   

 そして北部にはなんと、米が流通していたのだ

 米派のアサヒは北の旅における一番の収穫は米だと見つけた時、一人大喜びしたのだった


「今日の晩ごはんはキャンプの定番カレーライスにします」


「かれーらいすって何?」


「俺たちの故郷の家庭料理だよ」


 スパイスの種類は豊富で、カレールウを作る為の材料はちゃんと揃った、あとはボル(猪的な)の肉と野菜、粉があればカレーはできたも同然なのだ

 そして、やはり大事なのは米!ライスが無ければ、カレーライスではない!!

 漬物は後々作るとして、アサヒはスパイスと米を見つけてから、カレーライスを作りたくてウズウズしていたのだ

 アサヒはスパイスを炒めカレーの準備に取り掛かるのだった


 そして不穏な空気を孕みながらキャンプ地の夜は更けてゆく


「さぁ、できたぞー、これぞお袋の味だ!」


 辺りにカレーの良い香りが漂い、アコやミゲルが待ち切れずにスプーンを手にテーブルに付いていた


「どれどれ、うんうん、スパイシーさが大人味だな、辛さだけじゃなく野菜の甘味と旨味がしっかり出てんな、肉の臭みもまったく無いし、やっぱアサヒすげーなぁ、故郷の料理もすげーわ、よっぽど良いもの食ってたんだな」


「やはり素晴らしいですな、このかれーらいすというやつは是非騎士団のメニューに加えさせたいですぞ!!」


「あー、美味しいけど辛いよー!!」


「アコはお子様カレーじゃないとな」


「お子様じゃねーわ!!でも辛くないの作って!」


 そんな平和なひとときを過ごすアサヒたち、その一方で、商人の小屋には来訪者が訪れていた


 コンコンと商人のいる小屋の扉がノックされた


「はいはい、どなたですかな?」


 扉を開くと、そこには入口を塞ぐほどの大きくゴツい躯体の男が一人で立っていた


「よう」


「な、なぜこんなとこにグスタフ殿が!?」


「なんだよ、嫌そうな顔しやがって、まだ時間にゃ早いが、お前らに聞きてぇ事があってな」


「な、何でしたかのぉ?」


「お前ら、トリニティのマゼンダにもなんか依頼したみてーだな」


「さぁ、なんのことやら・・」


「まぁ、いいや、アイツらとオレたちが敵対してるってのは、もちろん知ってんだよな」

「まぁ、お前らからすりゃーおんなじなんだろーがな、それでもオレ達にも筋ってのがあんだよ、アイツらと一緒にされちゃあ黙ってらんねーんだ、だからよ、お前らの荷物は頂く」


「は!?」


 懐からネムリ草の玉を放り投げ、グスタフは素早く小屋を出た


「な、何を!・・」


「さてと、なんかさっきから美味そうな匂いがしやがんなぁ」


 アサヒ達の小屋では、ミゲルが商人からもらった酒を一人で嗜んでいた

 その小屋の様子を伺う人影が数人


「アルマァ、さっきからすげ〜美味そうな匂いがするんだけど・・」


「黙ってろ、気付かれるぞ」


「あー、ダメだ腹減った」


 腹を減らした体格のよい男がつい一歩前に出てしまう、すると足元にある仕掛けに足が触れてしまった


 カランカランと仕掛けが音を鳴らす、その音に反応したマルコとアコ、そしてアサヒが小屋の外に駆け出して来たのだ


「誰だ!」


 マルコは腰に下げた両刃剣に手をかけ、音の鳴った森に向かい構えをとる

 続き、アコ、アサヒも構えて森を凝視した


「クソッ、ばれちまった、おい、テメェらやるぞ!!」


 森の中から、顔を隠した複数が飛び出してくる、その手には武器を握りしめこちらに身構えるのだった


「痛い目に会いたくなきゃあ、荷物を渡しやがれ!」


「は!?お前ら馬鹿か?渡せって言われて渡すアホがどこにいんだよ!!」


「んだよ、こっちは穏便に済まそうって言ってやってんだぞ!」


「おうおう、何してんだオメエら?なんで見つかってんだよ」


 先程商人の小屋にいた大男が、森とは反対から現れた


「頭!すんません、ポルコがヘマしやがってバレちまいやした」


「オメエら束になってもコイツらにゃ敵わねーぞ、アルマお前は残れ、あとはこっちの荷物を片付けろ!」


「はいよ!頭!!」


 頭と呼ばれる大男とアルマと呼ばれた男が、マルコ、アコ、アサヒと対峙する


「さて、君たち二人が我等の相手をしてくれるのかな?」


「あん?オメエさんは騎士団のマルコ様だな、めっぽう強いんだろ?どんなもんか手合わせ願いたかったんだぜ」


 商人達の前と違い、顔を隠した大男はマルコに向かって挑発をする

 次の瞬間、マルコの剣が音を斬る速さで大男の左脇腹を捉えたと思ったその刹那、丸腰に見えた両腕に直径10㎝以上はあろうトンファーの様な武器を携え、マルコの斬撃を受け止めていた


「おー、速えし重いなぁ、だが、オレ様にゃあちと軽いな」


 トンファーを素早く振り回し、大男が攻勢に出る、マルコは剣で捌くものの、その勢いは凄まじく次第に追い込まれていった

 大木がマルコの背に迫り、トンファーの一撃がマルコめがけて放たれる

 紙一重でかわすと大木にトンファーがめり込み、その隙に大男との距離をとった


 一方、アコとアサヒは、アルマの素早い攻撃に晒されていた

 アルマは細長い剣と短い剣の二刀流で突きと変幻自在の太刀捌きを繰り出しアコを追い詰めるのだった、かろうじて受けてはいたものの、明らかに押されていた


「アコ、下がれ!コイツは俺が相手する!」


「クソッ、ごめん、あたしじゃ力負けしちゃう」


 アコの剣を受け取ったアサヒは、素早い身のこなしで、長剣を弾くと短剣をすり抜け掌底をアルマの胸に叩きこむ


「ぐぁっ、クッソ、お前強いじゃねぇか!」


 大男は、アルマをチラりと見ると声をかける


「おい、そいつは強えのか?」


「はい、オレじゃ無理です!」


「よーし、引き上げるぞ!テメェら片付けはすんだな!!ズラかるぞぉ!!」


 大男の合図とともにアルマが懐から玉をなげる、弾けた玉は煙をあげた


「ネムリ玉だ、煙を吸うな!」


 マルコが叫ぶ、と同時に大男たちは姿を晦ましていたのだった


「じゃあなー、商人のジジィたちによろしく言っといてくれやー!」


 大男の声が森にこだまし、彼らは森の闇へと姿を消したのであった




閲覧ありがとうございます

北へ編終了です、少しはファンタジー感あったでしょうか?

料理パートがこだわり過ぎ?まぁ趣味なのでご勘弁してください

次からはファンタジー感+シリアス+R15って感じにする予定です

みなさんの好みに合うかどおか・・・

感想をお待ちしてますので、よかったら書いてくださいね

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が読みやすい。 [一言] 本格SFかと思ったら普通?のファンタジー風なのね。SF×ファンタジーが上手く描けたらおもしろいかも
2021/09/29 07:35 通りすがり
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