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ラボと白シャツと私(後編)

「おーい、こっちこっち」


「勝手に行かないでよ!」


 Jが戻り、荷物を建物に下ろしたのち彼らは隣町のハーレーに向かう


「そーいえば、さっきの集荷場で通信機使うとこを見られちゃいましたよ」


 ズーの荷車に揺られながら、Jは先程の出来事を話した


「うそ!まじかよ!俺たちの事話してないよな?」


「ええ、逃げてきました」


「気を付けてくれよー」


「いや、アサヒさんが通信してくるのが悪いんです」


「う・・・、まぁいいや、何のことか分かんないだろうし・・・」


 悪いのはアサヒとばかりに素知らぬ顔をするJなのだ

 アサヒはといえば、この世界ではないであろうテクノロジーならば何をしているか理解できないだろうと考え、深く追及をしないのだった


 ハーレーはシンブ入口の町からほど近く、すぐに到着した


「さっきシンブの組合長さんが今後の事も含めて話しがしたいってんで、夕食でもどうかって誘ってくれたんだけど、どお?」


「もちろん行くぞ」


「私も行くー」


「はい、もちろん」


「時間になったら迎えに来てくれるみたいだから宿で待ってるかね、それとミゲルさんはマルコさん迎えに行ってもらえるかな?」


「はいよ」


 一行は宿で迎えを待ち、ミゲルは駐屯地へマルコを迎えに行くのだった


 マルコとミゲルも集まり、部屋で談笑していると、コンコンと扉をノックする音が聞こえ宿の従業員が部屋に入ってきた


「ヨシムラ様がお迎えにいらっしゃいましたよ」


 一同はヨシムラに連れられ宿近くの食堂に向かった


「同行した商人達も声をかけたんですけど、ご遠慮します、ですって」


「そうですか、好都合かもしれませんね、お疲れでしょうし、まずは腹ごしらえしましょう」


 テーブルに料理が運ばれ、ヨシムラが仕事の話を切り出した


「事務所の話しの続きなんだが、まず今回の感想はいかがかな?」


「はい、我々は運ぶ事が専門で、ある程度危険な仕事も受けてきました、なのでこの程度のリスクであれば問題なくこなせる自信はあります」


「うん、素晴らしい、サマンサから聞いていた通りだね、アサヒさんは腕に覚えがありそうだし、安心して仕事を任せられるかな」


「そうですよ、途中でミゲルがやられそーになったのをアサヒが助けたんだから」


「バカ、あれくらい自分でなんとかしたし、ちょっと危なかっただけだし」


「はっはっは、まぁいいじゃないか、アサヒ殿の腕前は私が保証します、並の騎士団より腕も知恵もありますぞ」


「それでだ、この先の話しなんだが週一とは言わず来てもらえると、こちらとしては都合がよいのだが、そしてハーレーの製品をクバルに運送してもらいたいので、クバル、シンブ、そしてハーレーの定期便として今後お願いしたいのですよ」


「それはこちらとしてもありがたいお話です、ぜひお受けさせて頂きます」


「ただ、気掛かりな事がありまして」


 今後、定期便を確立したいとヨシムラから提案され、チェン運送としては願ってもない大口の仕事になるのだが、依頼者からは心配事がある様だった

 今までは、各商人が独自で配送にあたっていたが、今後チェン運送が受け持つとなると、新たに参入する商人が増える事が予想された、すると自由競争が活発化し既存の価格等に影響が出る、そこで今まで独占的に利益を得ていた商人からの妨害が出るのではと懸念していたのだ


「これまでのやり方では経済力のある者はより富を得て、そうでない者は細々とやるしかなかったんだが、サマンサの考えから今回の依頼に繋がった様なんだよ」

「彼女の理想は、貧しい者も等しく幸せになれる世界だと聞いているからね、女性ながらクバルの為政者に着いて苦労が絶えないだろうが、よくやっていると思うよ、私は」


「なるほど、色々考えてらっしゃるんですね」


「私も彼女に賛同しているから、微力だが力になれればとね」

「仕事の話しに戻るんだが、ハーレーはモトや、家庭用魔道具を製造しているので、こちらからは、それらを運搬して頂きたいので、明日ハーレーの工房の責任者と会って頂くつもりなんだが、よろしいかな?」


「はい、是非お願いします」


「では明日の朝、宿に迎えに行くので工房見学も兼ねて一緒に参りましょう」


「ありがとうございます、お待ちしてます」


 ほどなくして、夕食を終えた彼らは今夜の宿に帰り、シンブ、ハーレーの夜を迎えるのだった



      ーーーーーーーー



 アサヒ達がシンブに無事到着しハーレーににて夜を迎えている一方、クバルに残っていたチェン運送では事件が起きていたのだ


「なぁニコル、ライドスーツが一体ないけど今日ってまだ作業してんのか?」


「市場の荷役作業の後は何もないはずだよー」


「おかしいな?ピーター、昼からラノと一緒にやってたよな、そっからどーしたよ?」


「え?仕分けして配達行ってたんで知らないっス」


「んじゃラノは?」


「そっちも分かんないっス」


「ニコル、伝票は?」


「ちょっと待ってね」

「今日のラノさん分がないですー!」


「はぁ?アイツ何してんだ!?」


 いつもなら、朝、市場から仕入れた食材や物資を昼過ぎに仕分けして配達、夕方には仕事を終え明日の用意をしているはずが、ラノの姿はなくそしてライドスーツも消えていたのだ



      ーーーーーーーー



 一夜明け、朝ヨシムラが宿に到着し、アサヒとJはハーレーの工房を訪ねた


「おはようございます、先日話した運送屋さんを連れて来ましたよ」


「やぁ、お待ちしてました、初めまして、こちらで工房を開いているカルロスと申します」


「ご丁寧にありがとうございます、チェン運送のアサヒと申します、よろしくお願いします」


 すでにヨシムラから話しは通っており細かい内容は業務をこなしながら決めていく事に決まった


「せっかくなので工房を案内しましょう」


「我々が発掘した魔鉱石で鑑定が済んだものがこちらで加工されてるのですよ、モトや魔道具など面白いものが色々ありますよ」


「是非お願いします」


「魔道具、興味が尽きませんねぇ」


「ほぅ、そちらの方はうちの仕事に興味がお有りのようですね?」


「はい、彼はジョセフと言って、我々のゴーレムの技術者なんですよ」


「なんとゴーレムをお持ちでしたか、更に技術者とはビザンツの関係ですかな?」


「いえ、我々はシンワの出身です」


 この世界に来て数ヶ月、得た知識と情報から国家間の交流は盛んではない事が分かったアサヒ達は、シンワというヴァル・キルマから一番離れた国から来たという設定で、仕事中、飛行艇の不具合でヴァル・キルマに流れつき、クバルに居着いて仕事をしているとしていた、ぶっちゃけた話しシンワ人に出会ったらどーするつもりなのかは定かではない


「なるほど、シンワとはあまり縁はありませんがお互いの見聞が広まるとよいですね、それではこちらから案内しますね」


 まずモトの製造をしている建物に案内された、モトとは魔鉱石から発生するエネルギーを原動力にした発動機である、シンブで発掘された魔鉱石を生成、加工をしモトと組み合わせる事で、町中で見たモタードや、農耕器具等に利用している

 他の建物では家庭用魔道具を製造しているそうだ


「この奥に魔鉱石や遺物のラボがあります、よろしければそちらも見に行かれますか?」


「せっかくなので、見させてもらいます」


 この世界にて運送業が軌道にのり出したものの、彼らの目的はコロニー(故郷)への帰還であり、その為の情報収集としてハーレーに訪れている、ここで有益な情報を手に入れれば目的達成に近付く事になると、アサヒは

本懐を忘れてはいなかった、しかしJはラボと聞いて違う意味で目を輝かせるのだった


「さぁ、どうぞ」


 ラボの扉を開き中に案内されると白シャツを着た数人が夢中で何やら分解、組み立てを行っていた


「発掘された遺物は聖教が鑑定して安全性が確保された物を我々が研究しております」


「全てではないんですね」


「はい聖教により禁止されている技術や、神々の奇跡と呼ばれる技術は彼らが厳重に保管していますので今現在使われている技術の応用程度の研究のみこちらで行っているのが実情ですね」


「じゃあクライスでは、その技術はあるという事ですか?」


「そうですねぇ、どこまでかは計りかねますがありますよ、例えば飛空艇やゴーレムに関してはあります、実際軍事目的として利用しておりますから」


 どうやら、たびたび起こる魔王たちとの戦いにおいて軍備は整えられているらしく、その為に聖皇国クライスの従属国家筆頭のフィルモアをはじめ、何ヵ国かは技術を持っているそうなのだが、詳細は秘匿されているそうだ

 そして各国の王族や、一部の経済力のある富豪らはその様な魔道具などの所持が認められているのだという


「なるほど、色々と勉強になりました、ありがとうございます、っておい、J勝手に触っちゃダメだぞ!」


 カルロスと話し込んでいる隙にJがテーブル上の物体を触りだしていた


「ちょっと、勝手にいじらないでください!」


 離れた場所にいた白シャツの男が、慌ててJの下に駆け寄って来た


「コレがモトで・・」


「ちょっと!ってあなた昨日の人!!」


「?、あー、昨日はどうも」


 昨日、集荷場で通信機を使っているところを見た青年はこのラボの研究者だったのだ



次回で北へ編終了です

夜、次話を投稿予定です、よければ閲覧お願いします

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