北へ
チェン運送がクバルで開業し早数ヶ月、仕事も安定し衣食住にも余裕をもてる様になってきた、とは言え、最終目的の一つフェイロンの修理の為の資金や情報はまだまだ不足しているなか、アサヒは次の手を考えていた
「なぁみんな、実はサマンサさんから仕事の依頼があって北のシンブに物資の運んで欲しいみたいなんだ、んで、ついでにハーレーに寄って仕事と情報収集できるかな〜なんて思ってるんだけど」
「いいんじゃないんスか、町の配送も安定してきたし」
「是非ハーレーに行ってみたいですね」
「とは言え、人手が足りないですよー、それに誰を行かせるつもりなんですー?」
「とりあえず俺とJ、あとはまだ決めてないんだよね、それと人手に関してはサマンサさんとゴメスさんが紹介してくれそうなんだ」
「あの二人の紹介なら問題なさそうですよねー」
「つっても、業務拡大ってんなら人材募集はしたほーがよさそうだよな」
サマンサからの依頼は食糧と物資の輸送なのだが、詳しい内容までは聞いていなかった、さらに往復でだいたい一週間ほどかかるため、その間の人手不足を解消するためにサマンサたちの口利きで元商社で働いていた数名をチェン運送の仲間として迎える事になった、元々運搬業務をしていたおかげですぐに仕事を覚え、即戦力として働いてくれた
そしてアサヒはサマンサからの依頼の返事をするために役所を訪れた
「こんにちは、先日のシンブのご依頼なんですが、おかげさまで人員も揃いましたので具体的にお話を伺いたくてお邪魔しました」
「そうでしたか、お仕事順調そうでなによりです、シンブへの配達ですが毎週一度お願いしたいのです、クバル中央市場で荷物はまとめていただけるのでそちらを積んで行って頂く形になりますね」
「具体的に物量はどれほどなんですかね?」
サマンサの依頼は、荷物をまとめてチェン運送に運んでもらうという内容で、今までは各商店が注文ごとに荷物を運んでいたが、その都度運送費と人手がかかっていたがそれらを定期便として、一括で請け負うというもので物量は大型荷車2台程度だそうだ、さらに北のシンブ、南のターキー、ファムへの道中では野生生物や盗賊が出るらしく護衛は必須でそれもコスト増加になっていた、それらの解決の為の依頼だった
「今回は初めてですので、市場の代表者らと護衛の者と一緒に行っていただくつもりでおりますが、よろしいですか?」
「はい、問題ありません、諸々手配して頂いて感謝してるくらいですよ」
市場の代表者2人と護衛の3人とアサヒ、Jの合計7人で、当日の朝市場に合流しシンブに出発する事になった
「ただいま〜、話がまとまったぞー」
仕事場に戻り事の詳細を皆に説明し、早速準備に取り掛かるアサヒだった
「なんか、盗賊とか出るらしいけど、なんか用意したほうがいいのかね?」
「護衛も付くんだし大丈夫なんじゃないっスかね」
「万が一があるから用意しましょーよ」
「もしもの時は私はアサヒさんを盾にしますよ」
「いやぁ〜、護衛すらいらねぇ気がするけどなオレは」
「アルはなんでそんな事いうのー?」
「オレ昔アサヒさんにボッコボコにされたからね〜 笑」
「そんな昔の事はいいでしょ」
アルはチェン運送に入る前、ストリートギャングの一員だった、喧嘩や盗みは当たり前でかなりの武闘派だった
あるときチェン運送の倉庫に4人の強盗が入ったのだが、アサヒが1人で強盗を返り討ちにしたのだ、その中の1人がアルだったのだがアルは最後までアサヒに食らいつき、他の3人を逃すまでアサヒと闘ったのだった、とは言えアルの攻撃はことごとく避けられアサヒは無傷であった
「今回はこっちに被害はないし、お前まだ若そうだな、見逃してやるから次から強盗なんかするなよ、ちゃんと働けバカタレ」
まるで歯が立たず、実力差をまざまざと見せつけられたアルはギャングをやめた
自分でも驚いたのは、アサヒと一緒に居たいと感じたことで、それまで自分の力のみで生きてきたアルが初めて抱く感情だった
「いやぁ、ケンカは自信あったんだけどよ、まったく歯が立たなかったのは初めてだったわ」
「まだ若かったからねぇ、警察はかわいそうかなって」
「しかも、その後頭下げて兄貴と呼ばせてくださいって、いつの時代だってな」
「しょーがないっしょ、全然世間知らなかったんスから」
「アルさん、昔はヤンチャだったんだろーと思ってたんスけど、ギャングって・・・」
「さすがに引くっス」
「昔の話だろー!!今はちゃんとしてるじゃんかー!!」
「じょーだんっスよん 笑」
「まぁ、とにかく無事に帰ってきて下さいねー」
シンブに向かう当日の朝、アサヒとJは集合場所の市場に向かった
「おう、はえーじゃねーか」
市場に着くとゴメスとサマンサが迎えてくれた
「おはようございます、市場の者はもうおりますので紹介しますね、護衛の方々はもうしばらくお待ちくださいね」
紹介された市場の商人達と挨拶を交わし、早速荷物の準備に取り掛かる
荷物の積み込みが終わる頃護衛が現れた
「おはようございます、護衛をさせてもらう王国騎士団マルコといいます、今日からしばらくよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
「こちらの二人は同行するミゲルとアコです」
「ミゲルさんご無沙汰してます、ゴーレム回収の時はお世話になりました」
騎士団の下位組織の自警団に所属するミゲルはアサヒたちを襲った仮面の者たちの一員で、置き去りになっていたライドスーツ回収など、その件以来何度か顔を合わせていたのだ
「アコさんて、あの時の女の子ですよね?道中危険みたいだけど大丈夫なんです?」
「は?女だからって舐めてもらっちゃ困るんだけど、それよりあたしはまだあんた達を信用してないし、上手くやってるみたいだけど変なことしたらただじゃ済まないんだから」
どうやら、まだアサヒ達を疑っているらしくあからさまに敵意の眼差しでこちらを伺うのだった
「すまねーな、いくら言っても納得しねーんだ、まぁ、色々あったヤツだから勘弁してくれ」
「まぁ、構わないよ、少しづつわかってもらえばさ」
「あぁ」
ゴメスの何か含んだ言いように、アサヒは何か理解したように返事を返した
準備も整い出発をする一行
「それでは道中くれぐれもお気をつけていってらっしゃいませ」
「マルコ様もよろしくお願いいたします」
「ミゲルもアコも頼んだぜ」
「任してよ!」
「アサヒ達も気をつけてな」
「わざわざ見送りありがとう、んじゃ行ってきます」
一行は出発する、初めての土地北へ向かって
おはようございます、今日からお仕事、学校の方がたくさんいらっしゃると思います
通勤、通学時間に間に合えばよいのですが・・
もしお気に召していただけたら、コメント等いただけると嬉しいです
よろしくお願いします




