知らない大陸
修正版です。
「おーい、目が覚めたぞ!」
聞き覚えのない男が大きな声を出していると気付いたアサヒは、自分達に起きた出来事を思いだす。それと同時に自分が気を失っていた事に気付くのだった。
「ニコルとネェルは……。」
自分が気を失った後、彼らに捕まったであろうニコルとネェルの安否が気掛かりになったアサヒは、彼女達を確認しようと横になった身体を動かそうとした。しかし思う様にいかずにドサッと大きな音を立てどこからか落ちてしまうのだった。
「おいおい無理すんなよ。まともにネムリ草すってんだからなぁ。」
先程聞いた野太い男の声と共にガタイの良い中年の男がアサヒに近づいて来ると、アサヒを抱き起こしベッドへと乗せる。
「うぅ、誰だ……。」
「すげぇな。普通なら丸一日はまともに気がつかねぇはずだぞ。」
ベッドに寝かされたアサヒは、起きあがろうとして転げ落ちたと理解した。そしてまだはっきりとしない頭を整理するために、男に話しかけるのだった。
「……なぁ、あんた誰だ?それに…、ここはいったい、どこなんだ?」
「おう。さっき仲間のねえちゃん達を呼んだから、まずは顔見て安心してくれよ。」
男はそう言うと、アサヒに飲み物の用意をするのだった。
そこへドアが勢いよく開き、ニコルがアサヒの横たわるベッドへと走り寄って来たのだ。
「アサヒさん分かります!?ニコルですよ、気が付いてよかった!ネェルちゃんも無事ですからね。」
「ニコルよかった…、どお、なったんだ?」
あの後ニコルとネェルは自分たちのことを仮面の者達に説明し、諸々の誤解を解いた事を告げる。そしてこの町に連れて来られアサヒ達は介抱してもらっていたのだ。
そしてニコルから現状の確認が出来たアサヒは、再び目を閉じ眠りにつくのだった。
翌朝、アルとJそしてピーターも意識が戻り、アサヒの下にクルーは集まっていた。
そして、アル達もニコルから事情を聞き、とりあえず安心するのだった。
「それで、ニコル達は大丈夫だったのか?」
「はい、私とネェルは大丈夫ですよ。事情を話したらとっても親切にしてもらったんですけど…。」
「どおした?何かされたのか!?」
アルが顔色を変えて訊ねると、ニコルは困った顔をして答えた。
「えっとそうゆう事じゃなくって、とにかく皆んなもあの人達と話したら分かると思います。それより、皆んな身体はもう大丈夫なんです?」
そしてニコルはアサヒ達の身体の心配をする。
「昨日は動けなかったけど、今日はなんとかね。」
昨日は目が覚めたものの、まともに身体を動かす事が出来なかったアサヒだったが丸々二日寝込んだおかげで例の煙の効果はほとんど無くなっていた。
「俺も問題ないぜ。」
「多少痺れがあります。」
「僕もまだいまいちっス。」
そしてアル達もアサヒと同じくほとんど回復しており、とりあえず皆の無事は確認できたのだ。その時部屋のドアがノックされる。
「おーい。入っていいか?」
アルが扉を開けると、そこには昨日ベッドから転げ落ちたアサヒを抱き起こした男が立っていた。
「朝メシの用意ができたから、こっちで一緒に食うか?」
「グゥゥ〜。」
ピーターの腹の虫がタイミングよく音をならす。
「はっはっは、若い衆は正直だな。さあこっちこいよ。」
「えっ…。」
「ありがとう。皆んな行きましょう。」
男は手招きして促す。少し戸惑うアサヒ達にニコルは大丈夫だと告げるのだった。
案内された部屋には大きなテーブルが用意され、ニコルとネェルに促されるままアサヒ達は席に着いていく。
「まぁ、メシでも食いながら話そうや。」
男の名はゴメスと言い、夫婦で宿と食堂を経営していた。彼は食事の用意をしながらこれまでの経緯をアサヒ達に話す。
「そんで、ニ日前にうちへ運ばれて来たってわけだ。まあ色々と物騒な事があるからな。とは言えちゃんと確認しなかった自警団が悪いんだけどな。すまなかったな。」
「いえ、誤解が解けてよかったです。」
「それでな、この街の首長が直接詫びをしたいって言ってんだけど、どおする?」
そして、アサヒ達への襲撃が勘違いだった事への謝罪を街の代表者がしたい旨を伝えるのだった。
「そうですか…。俺達も色々と伺いたい事がありますし、お会いしますよ。」
アサヒ達はそれを承諾し代表者と会うことにするのだった。
そして程なくして街の首長と、襲撃に関わった者達がアサヒたちを訪ねて来るのだった。
「はじめまして皆さん。私はこの街で首長をやっておりますサマンサと申します。我々の勘違いで貴方達に大変酷い事をしてしまいました。本当に申し訳ございません。」
深々と頭を下げる女性の名はサマンサと言った。言葉遣いからも滲み出る品の良さと佇まいから為政者としての誠実さを感じるアサヒ達だった。
「はじめまして。俺はアサヒと言います。他の皆んなは仕事の仲間で、アル、ジョセフ、ピーター、ニコル、ネェルって言います。」
一通り、仲間を紹介したアサヒが何かを思い出す。
「……ラノは?」
「ラノさんはボコられたから、怖がって部屋から出てこないんスよ。」
「ちなみにあの人ケムリ吸ってないんで動けるんスけど、部屋から出てこないから色々と世話してるのはニコルみたいっスよ。」
ピーターとアルがラノの状態を知らせるのだった。
「はぁ、相変わらずだな…。」
一名を欠いて、こちらの自己紹介を終えるとサマンサが話しだす。
「それで、アサヒさん達を襲った自警団の者も連れて参りましたのでご挨拶よろしいでしょうか?さぁ皆さんきちんとお詫びして下さいね。」
サマンサに促され、自警団と呼ばれた男の一人が話しだす。
「はじめまして自警団代表のブルーノと申します。この間は大変すまなかった。きちんと確認すべきだったよ。申し訳ない。さぁアコお前も頭を下げるんだ。」
男に促されアコと呼ばれた女の子も頭を下げる。
「すいませんでした!でもやっぱりコイツら怪しいよ。サマンサ!」
しかし、アコはいまだにアサヒ達を訝しんでいるのだった。そこへ自警団の一人が話しに入ってくる。
「こらアコ!ちゃんと謝れ。俺はミゲルって言うんだ。いやぁ躾がなってなくてすまんねぇ。とは言え、あんたらゴーレム連れてたし、盗賊か魔王の手下かなんかだと思ったんだよな。とは言えこっちが悪いし本当に申し訳なかった。」
《ん?》
「あ、はい。もう充分ですので頭を上げてください。」
アコと呼ばれた娘は疑いの眼差しでこちらを睨み付けていた。しかしサマンサと他の者たちは、あらかたの話をニコルから聞いて納得はしている様子であった。
そして今度はサマンサがアサヒ達の事を訊ねるのだった。
「それでアサヒさん。ニコルさんから道に迷われていると伺ったのですが、どこか他の土地と勘違いされておりませんか?」
「ええ、そうなんですよ。俺たちも違和感はあったんですが…、ここは北アメリカ大陸ですよね?」
「あの…、ニコルさんからもそれは伺ったのですが、ここはチェロキー大陸と言ってヴァル・キルマ王国の中ほどに位置するクバルと言う街なのですよ。」
「は?」
まるで聞き覚えない地名と物語でしか聞いた事が無い王国と言う単語にニコル以外は、サマンサの話しの意味が分からずに困惑の表情を浮かべるのだった。
「チェロキー大陸ってどこだよ…。」
アルが独り言を呟く中、アサヒはサマンサに訊ねた。
「あの、連合のAOA、アメリカってどこにあるんでしょうか?」
そしてサマンサの答えにアサヒ達は絶句するのだった。
「大変申し訳ありませんが…、私が知る限りその様な大陸や国は、聞いたことがございません。」
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