フルダイブ
修正版です
みごとに作戦を遂行したジン達は母艦へと帰還するのだった。そしてそれとほぼ同時にフェイロンとアサヒ達も連合軍艦隊へと到着する。
ACFの母艦ではマナートが補給を受けていた。
長距離移動用に装備された追加装甲を外し本来の姿になるマナートをデッキに併設されたパイロット控室で眺めていたジンは飲料チューブを口に運びながらフェイロンに同行していたアームズを思い返していた。
《あの新型アームズ、やけにアイツに似てやがった、パイロットはまさかな…。》
10年前、ジンの顔に傷を付けたあの機体とパイロットのアサヒを思い返すジン。あの時ジンはテロリスト側にいた。そして連合の傭兵部隊にスパイとして潜入しており部隊長だったアサヒを認識していたのだ。
そしてマナートに取りついて作業をしていた整備長からの連絡が入る。
「あと2分で仕上がるぞ!完璧な状態だ。例のヤツをばっちり捕まえてこいっ!」
「おうっ任せろ!おやっさん!!」
「さあ、こっからが本番だっ!気合い入れてくぞお前らっ!!」
「「うっす!!」」
ジンと仲間達は再び出撃の準備をするのだった。
一方アサヒ達はACF本隊からの攻撃を受けている最中の連合艦隊に、保護を求める為の通信をしていた。
「こちらチェン運送第一貨物フェイロン、襲撃者に遭遇退避してきました。保護をお願いします。」
「通信確認した。しかし残念ながら本艦は作戦行動中につき貴艦の護衛に出せる戦力はない。自力での退避願う。以上だ。」
「は?ちょっとそりゃないでしょ!?」
連合艦隊とACFの艦隊からのプラズマの荷電粒子光が交錯する中、アルが連合の旗艦ラングレーと不毛なやりとりをしているとACFアームズからの攻撃が始まるのだった。
「迎撃態勢をとれ!アームズ隊は何をもたついている!!」
フェイロンが通信をしていた旗艦ラングレーに敵アームズ隊が接近し直掩にいた連合アームズと戦闘になる。その中の一機が連合アームズをコンバットナイフで撃破すると、ラングレーのブリッジに迫り来るのだった。
そして腰部に装着されたバズーカを構えるとブリッジにその弾頭が発射された。
アサヒはラングレーに迫り来るACFアームズが連合アームズを撃破しバズーカを構えるのを視界に捉えると焔を咄嗟に疾らせるのだった。そしてアサヒはラングレーのブリッジに迫るバズーカの弾頭をロックオンするとマシンガンを撃ち放ち、ブリッジ直前で弾頭を撃ち落とすのだった。
そしてラングレーのブリッジでは目の前に迫る弾頭を味方機が撃ち落としたかに見えたが、それを行ったのは保護を求めて来たフェイロンの護衛機だった事に気付くのだった。
「直掩は何をしている!」
「はっ!直ちに防衛に回らせます!」
「それとあの赤と白のアームズは何者だ!?」
ラングレーのブリッジではキャプテンシートの手摺を掴み立ち上がった駐屯軍司令ドナルドが興奮して通信士に叫ぶのだった。
「はい、TTCが開発した新型かと思われます!」
「はぁん?例の新型か……、使えそうだな。」
副官が答えると、ドナルドは何事か思いついた顔でニヤつくと通信士に告げる。
「おい、回線を回せっ!!」
「おいTTCの新型!なぜ貴様は戦列に加わらんのだ!?」
利己的な思考だけは驚く程早く、新型機もケラウノス同様手中に納めようと焔に向けてドナルドが怒鳴るのだった。
「おれは民間人テストパイロットだ!戦闘行為に加わるつもりはない!!」
「バカ者!!この状況で何を言っている!連合軍のアームズに乗っている以上民間もクソもない!!ヤツらを叩き潰せ!命令に従わないなら貴様の船の安全は保障せんぞ!!」
「はぁ?」
「交戦中の事故に巻き込まれたくなければ今すぐ戦え、敵を殲滅しろ!」
ラングレーの砲塔が向きを変えるとその砲身をフェイロンに向ける。そして連合アームズ二体がフェイロンを取り囲むのだった。
「きたない真似をしやがって!」
「どのみちやらなければ、こちらがやられるだけなのは貴様も分かっておる筈だ!あれこれと議論している暇など無いのだ!さっさと敵を殲滅してこいっ!」
先程のジン達のマナートによる攻撃で防衛ラインは手酷く荒らされおり現状では出せる戦力は使いたい連合ではあった。
そしてドナルドの卑劣な手口に苛立ちを覚えるアサヒだったが状況は参戦せざるをえずアサヒは握りしめたスロットルを動かすと敵アームズに焔と共に向かうのだった。
「やるしかないっ!いけるかネェル!!」
『フルダイブの用意はできてるよ』
「よしいくぞネェル!!」
機体に接続したネェルが【焔】の真の力を解放する。専用スーツに内蔵されたセンサーがアサヒの身体に接続の針を喰い込ませると【焔】とアサヒの神経が徐々に同期される。アサヒの五感は12m大の巨人に繋がり意識は拡張され正に人機一体となっていくのだった。
そして機体各所のリミッターが解除され、スラスターノズルのカバーが収納された高機動アサルトモードとなった機体が迫り来るACFアームズの隊列目掛け高速で突っ込んで行く。
「うおぉぉぉっ!!」
迫り来る敵アームズ隊がマシンガンの弾幕を張る。その弾幕の後に敵アームズがアックスを構え焔に攻撃を仕掛けて来るのだが、焔は弾幕を軽々と躱し目前に迫るアックスの一撃を華麗に避けるとすれ違い様に日本刀型のサーベルで腰部を真っ二つに切断するのだった。
そして焔は続け様に敵アームズの上半身を直近にいた敵に目掛け蹴り飛ばすと上半身は爆発し、敵アームズは巻き込まれ戦闘不能になるのだった。
焔は被弾し戦闘不能になった敵アームズに次々とトドメの一撃を加え撃墜していく。その攻撃は次第に荒々しさを増していくのだった。
敵アームズを撃ち倒していく焔のコクピットではアサヒが自らの力を楽しんでいる感覚が芽生えつつある事に気付く。そしてそれが機体に反映される様に焔の戦闘は苛烈になっていく。
新しい焔のフルダイブはアサヒとネェルの神経をつなぎ人間の感覚を超えた拡張領域を与えていたのだ。アサヒの知覚には敵の動きは愚鈍に感じられ、さらに周囲の戦闘領域全ての情報がアサヒの知覚に流れ込んで来ていたのだ。それは戦場を俯瞰で見ている様な感覚であった。
そんな戦いの最中アサヒの頭蓋に自分とは別の思惟が流れ込んでくる。
『アハハ、弱い弱いっ!』
「なんだ?」
『もっともっと遊びたーい。』
「ダメだ、戦いに飲まれるな!」
『なんで?敵を倒せばみんな喜んでくれるよ。』
アサヒの頭に入って来たのはネェルの思惟だった。先程の荒々しい戦闘や高揚感もネェルとのリンクによる影響があったのだ。
そして本来の自我を取り戻したアサヒは戦いを楽しむネェルに語りかける。
「戦争は遊びじゃない。敵も味方もそこには命を持った人がいるんだ。どんな命も他人が簡単に奪っていいなんて無いんだ。そして死んだり傷つけば必ず悲しむ者が生まれる。」
『でも、敵だよ?』
「それでも家族や仲間がいる命なんだ。立場や国が違うだけでなりたくて敵になってる訳じゃないんだよ。」
アサヒが軍人だった頃、自分の国を守る事が正義だと信じていた。それは自分の強さや敵を倒す事を決定的に肯定するものだった。
しかし最愛の人を失くし軍を辞めて以来、会社や立場の違う人たちとの関わりの中で戦争の虚しさや善悪の無意味さを知ったのだ。
「ネェルお前はまだ産まれたばかりだ。もっといろんな事を知って命の大切さを勉強してほしい。世界に敵と味方なんてものは本当はないだよ。」
『よくわかんないけど、アサヒさんが言うならそおする。』
「うんありがとう。これから一緒に世界を知ろう。そして命とは何か考えよう。」
そして焔の動きが変わり先程の凶暴な動きが影を潜めアサヒ本来の動きを取り戻すのだった。
「ネェルいいか?味方の被害を最小限にとどめる。ヒットアンドアウェイで敵の足を止める。戦闘不能にできればいいんだからな。」
『は〜い。』
アサヒとネェル、そして焔が再び戦場を駆け抜けて行く。敵の攻撃を躱し一撃離脱を繰り返して敵アームズの頭部や腕、脚部に損傷を与え次々と行動不能になる敵アームズは次第に撤退をして行くのだった。
そしてアサヒと連合軍の活躍で最前線の敵部隊が下がった時にラングレーから通信が入る。
「戦闘正面より左アームズ三機確認。後方にも部隊有り、直ちにケラウノス方面の防衛にあたれ!」
ラングレーの正面にあった前線は敵の撤退により戦闘は落ち着いていた。しかし第二波はケラウノスに向けられていたのだ。
そして先行している三機はジンのマナート部隊であった。
その頃ラングレーでは敵部隊の詳細を告げる通信が入っていた。
「大佐、偽装されていた敵部隊はACF所属と判明しました。」
「ふん、やはりか。カラードが調子に乗りおって常に勝つのは我々だと思い知らせてやる。」
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