連合軍
修正版です
「そろそろ追いつく筈だけど、あいつら無事なのか?」
戦闘の爆破光が煌めくコロニーを傍目にアサヒはネェルと共に焔とブースター替りのアームズ専用無人航宙機のスロットルを全開にして漆黒の宇宙を駆っていた。その時、焔のレーダーがこちらに向かってくる機体を補足した。
「え?フェイロンか、なんで戻って来てんだ。」
『あのね、フェイロンは大部隊に追われてるみたいだよ。』
サブシートに収まっていたネェルがアサヒに声をかける。
「マジか!?襲撃者の本隊が出て来たのか。」
アサヒが確認をする前に、焔に連動したネェルがレーダーの補足範囲を広げるとフェイロン後方に部隊が展開しておりその後ろには四隻の艦艇の姿がマーキングされていた。
「かなりの数だな、本気で仕掛けてきてるじゃないか。不味ったな本隊の隠れてたコロニーに向かってたとは……、クッソどうする?」
アサヒは現役時代であればこの様な事態を予測は出来たのだろうが、あまりにも唐突に事態に巻き込まれてしまった為に判断を見誤ってしまったのだった。
しかもこちらの現状は新型とは言えアームズが一機、さらに本物の戦闘は10年ぶりで後方の連合軍は未だに交戦中とあり孤立無援の状況でアサヒは考え込むのだった。
そんなアサヒに反応したのは後部座席のネェルだった。
『アサヒさんフルダイブ出来るよ。新しい焔はネェルにおまかせだよっ!』
ネェルはアサヒにフルダイブでの戦闘が可能だと告げる。
「とは言え、さすがに数が多すぎる。フェイロンを守りながらは厳しいぞ。合流したらコロニーまで下がらないと流石に対応できない。やるなら連合軍と一緒にだ。」
『は〜い。』
この時アサヒは不思議とヒューマノイドとの会話に違和感を抱くことはなかった。むしろそんな余裕はなかったのだ。
そしてネェルとの会話のすぐ後、アサヒはフェイロンとの再会を果たすのだった。
「前方にアームズ確認、アサヒさんの機体です!」
「了解、収容する暇なんてないから通信はオープンにしといてくれ!」
フェイロンのブリッジではニコルがアサヒと焔を捉えていた。
「アサヒさん繋がってます!?」
「あぁニコル無事だな。大丈夫聞こえてるぞ!他のクルーは無事か!?」
「はいっ!全員ここにいます!」
フェイロンからの通信が入り皆の無事を確認したアサヒは安堵するのだった。
そして、ニコルからの通信に割り込む様にアルがアサヒに現状の報告と対応を聞いてくるのだった。
「さっきのヤツらの仲間が居たんで引き返して来ました。俺らはどこに逃げたらいいんスかね!?」
「一旦ひいて連合軍に合流する。うちらの戦力じゃ話にならないからな。」
「了解です。とりあえず収容は無理なんで護衛をお願いします!」
「分かったまかせろ!全員無事に逃げ切るぞ!」
アサヒとクルーたちが合流した頃、コロニー周辺では連合軍がケラウノスを防衛しながら襲撃者達との戦闘を続けていた。
「初手は見事だったが所詮テロリストどもだ。我が連合部隊が出撃したからには即座に駆逐してやるわっ!卑怯にも隠れておる本陣もついでに叩きつぶしてくれる。」
「左様でございます。この様な僻地の民間企業の子守など本部は大佐を侮辱しております。ミハエルとか言う公安の犬に大きな顔をされては敵いません。」
「その通り!!吾輩の真の力を見せつけてやろうではないか!我が隊の重装アームズで本部の目をさまさせてやるわ。そしてブラックホールキャノンとやらもワシが頂いてやるのだ!!ガッハッハッハー!」
防衛の為に出撃した軍艦の中では、コロニー駐屯軍司令大佐ドナルドと補佐官ゲイリーが襲撃者殲滅とその本隊を叩くと息巻いていた。そしてあわよくば新兵器搭載艦ケラウノスを駐屯軍所属にと画策するのだった。
この襲撃をチャンスとばかりに防衛隊とともに数名の機関士をケラウノス送り込んでいたのだ。そして旗艦ラングレーと共に戦場に姿を現すのであった。
「おうおう、ドンパチが見えますなぁ。選り取り見取りってやつだぁが〜、俺様たちの獲物はっと……、見つけたぜぇ。」
フェイロンを素通りしたジンたち3機はケラウノスと敵艦隊をレーダーに捕捉するのだった。彼らの任務はその機動力及び攻撃力で本陣が到着するまでの敵の足止め、ならびに連合軍への強襲による陣形崩しであった。
そして後方の本隊が到着したら戦闘正面は本隊に任せケラウノス奪取に回るという手筈であった。
連合の部隊数は相当数が予測されていたが、それをたった三機で強襲するとなればその部隊への負担は大きくなるのだが、ジンのマナート部隊には本作戦を行うだけの力量があるのだった。部隊数で不利なACFからすればエース部隊による一点突破と、新兵器奪取は正にジン達の功績にかかっていたのだ。
その頃、コロニー周辺にいた旗艦ラングレーは襲撃者達の撤退行動に合わせ、ケラウノスを僚艦に加え掃討作戦に移行していた。
「さて、テロリストどもは撤退行動に入ったな。我々はこれから掃討作戦に入る!ヤツらを叩き潰して我らが軍団が連合最強だと知らしめてやるのだ!全機発進せよっ!!」
旗艦ラングレーの着艦デッキのハッチが開き、重装備の量産型アームズが次々と出撃する。傍を堅める僚艦からもアームズが射出されていき艦隊の前方には約二十機が戦線を構築していくのだった。
「大佐、敵増援確認!アームズ三機小隊と思われます。」
「ガッハッハッ、たった三機の増援なぞ屁でもないわ!ヤツらの戦力もたかが知れておるわい。全戦力で返り討ちにしてくれる!!」
「迎撃体制をとれっ!!」
防衛部隊と合わせて三十機あまりのアームズがスラスターを瞬かせ、ジン達を迎撃すべく前線に躍りでる。
「わらわらと出て来やがったぜ。本隊がくるまでは陽動だ。だが遠慮はすんなっ!引っ掻き回してやるぞ!」
ジンたちのアームズが凄まじい加速で後退する先発隊とすれ違うと連合部隊の隊列に突っ込んでいく。
「はっはーっ、おっせーんだよ!!」
ジンのマナートと僚機は先頭の部隊に突っ込むと直前で急上昇をする。そのタイミングで背部にマウントされたブースターを切り離すと、先頭にる連合部隊にブースターが直撃をし被弾したアームズは爆散し機体を四方に飛び散らせながら火球へと姿を変えるのだった。そしてそ爆発に巻き込まれた僚機も腕部や脚部を破損し戦闘不能に陥るのだった。
そして直前で別れた僚機もヒットアンドアウェイを繰り返し連合アームズは次々と攻撃していく。
「何をしておる!あんなすばしっこいだけの貧弱なアームズにっ!!隊長機だっ!隊長機を狙え!!あれさえ抑えればあとはどうとでもなる!!」
機動力による近接でのヒットアンドアウェイ戦法を直感で理解したドナルドだったが、残念ながら相手が悪すぎたのだった。
歴戦をくぐり抜けてきたジンの部隊と新型アームズ【マナート】の組み合わせは見事なものであった。スピードを活かした一撃離脱を得意としたジン達と、機動力を大幅に向上された【マナート】は正にジン達の為に開発された機体で一騎当千の働きを見せる。
彼らは周囲からの一斉射撃をなんなく躱し、猛スピードで戦場を駆け抜けるとすれ違いざまに一撃を入れては次々と連合アームズを血祭りに上げていった。
ジン達の技量は正真正銘のエースのものであったのだ。
「おう俺に狙いを定めたみてぇだな。ただの能無しじゃあねぇみたいだが、甘ぇんだよ。」
「さぁそろそろ本隊のお出ましだ。一旦補給に戻るぞ。」
連合アームズ部隊の半数以上を行動不能にしたジン達は、次の作戦の為に自軍へと補給の為に戦場を後にする。
そして彼らと入れ替わりに本隊が現れるはずであったが、ジン達とすれ違ったのは先程遭遇したフェイロンとアサヒの駆る【焔】だったのだ。
「隊長、前から民間機が来てます。それと一機アームズが付いてますよ。」
「あん?ありゃぁさっきの船だな。それにあのアームズは……。」
「まぁいい、今は補給が先決だ。いくぞっ!」
ジン達はフェイロンと【焔】を横目に母艦へ向かうのだった。
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