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あべ&こべ!!リアル 1  作者: フレナ207
1/3

No1

さらさらとした霧雨が日常の色彩を隠す時期。電車の揺れを不思議と大きく感じたその日。

「にゃん……公…?」

俺の日常は大きく変わった。


アステリオスオンライン。総プレイヤー数、国外含め1億を越える超大手MMOオンライン。PC、スマートフォンで楽しむことができる。課金者が必ずしも強くなるゲームではなく、長くやりこんだものが強くなることができるゲームだ。

☆にゃんまる☆:アニバイベント周回するのビショップだと辛い~‼

微々神:まぁ回復職は満ち足りててどこも募集してないからね。

☆にゃんまる☆:貧乏さんも一緒に狩りましょ~よ~♪

微々神:今回のアニバイベントやってもこっちのマジシャンあんまり強化されないからな。

☆にゃんまる☆:貧乏神さんは貧乏神なのにお金に困ってないんですか!!?別にドロップしたもの要らないなら売ればいいじゃないですか~…

微々神:いや、貧乏神はにゃん公が勝手に付けたあだ名…

☆にゃんまる☆:むぅ~…もういいです!!明日仕事早いので寝ます!!!

微々神:いや~ごめんね?お疲れさま。明日早い時間から会えたら殺ろ!

不吉な文字変換を見届けてPCの電源を落とす。

「ふぅ、つっかれた。」

先程までの可愛いげのある話し方はリアルに戻った瞬間から一変し

、暗闇の部屋に若い男の声が響く。

「アニバーサリー周り、明日会えたらって言ってたし」

椅子を離れ、夏用の布団に身を預けた。彼の名前は「九重未来」。ネットでは女を演じる男。ネカマと呼ばれるものだ。

「明日は学校、何時に終わるっけ…」

予定表へと手を伸ばし、確認をしようと考えたが愛しの布団が彼を包んで離さない。明日でいいよと、説得されるかのように彼は抵抗せずに瞼を閉じた。その翌日、人生が大きく変わる出来事があるとも知らずに。


「くぁ……」

カーテンの隙間から射し込む光が瞼を貫き、未来は目を開いた。

いつもアステリオスオンラインを終える時間は未定だが、彼の生活リズムが崩れることはない。太陽と体が彼を安らかな世界から引き摺りださんと手を組むからだ。両親とは暮らしておらず、朝から晩まで全てに至ることを自分でしなくてはならない。唯一しなくても良い日は両親が生活金を渡すついでに、アパートへ泊まっていく時だ。そういった日はアステリオスオンラインにログインすることはできないが、両親が家事をしてくれるため心待ちにしているとまではいかないが、疲れた日は今日来てないかなと毎度思っている。

男手で作られた粗末な料理を食べ、洗濯を済ませ、着なれた「霧島高等学校」の制服に身を包み家を出た。先程瞼を貫いただけだった太陽の光が全身を照らす、朝は助かると思いつつも憎い光だがこうして外に出れば気持ちの良い光となるのだ。

「本当に不思議な光だな。」

ポツリと呟いた。どこかの小説のように可愛い幼馴染みや彼女が自分を迎えに来ることは一切なく、誰にも聞かれることのない独り言を時々呟くのだ。

駅の喧騒は先程までの独り言さえ呑み込む静かな道のりとは大きく変わる。誰かと電話をする人、物を探す人、学友と会話をする生徒など。足音一つしか聞こえなかった世界が無限の足音と声に汚される。とはいえ、未来の行く方向のホームにはさして人は居らず、そこまで辿り着いてしまえば雑音も多少はマシになる。周囲に人が居なくなり誰からも邪魔をされず、誰の邪魔もしないと分かったタイミングでアステリオスオンラインを起動する。

現実とはまるで違う、反転世界。魔法を使えたり、ドラゴンが空を飛び回ったり。大衆の言うファンタジーの世界が未来にとっての理想の世界だった。

☆にゃんまる☆:おはよ~♪通勤電車待ちなうです‼

微々神:おはよー、にゃん公。こっちも電車待ちながらプレイしてるー。

ログインをすればいつもの人が居た。微々神。通称、貧乏神。男口調で喋り、語尾にいつも「伸ばし棒」をつけるまったりとした人だ。キャラクターは女の見た目をしているが、自らが男であることを隠す気が全く感じられないのでただ可愛いキャラを作りたかっただけだと考えている。

☆にゃんまる☆:びんぼーさんは学校??頑張ってね!!!

自分こそ学校に行くのだが、「設定上」彼は言わない。

成人女性OL、それがアステリオスオンラインでの未来。絶対に暴かれないためにもバスト、ウエスト、ヒップの設定は勿論、普段つけている化粧や新しく出た化粧まで詳細に調べあげている。

微々神:おー、頑張るー。今日は8くらいに帰れそうだけど、どう?

☆にゃんまる☆:それってアニバイベント一緒にやってくれるってことですか!!?

微々神:うむ。どう?そっちはどれくらい?

☆にゃんまる☆:私もそれくらいには行けるように頑張ります!!!ワガママを聞いてくれてありがとです~♪♪

微々神:お、電車来た。乗るからちょっと無言ー。

そういえば電車、と思いふと顔をあげるとちょうどのタイミングで電車が来ていた。

(まぁ、あっちが無言って言ってるし言わなくていっか。)

どうせわずかな時間だと思い、彼は電車に乗った。

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