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オルガは悪役令嬢の身代わり花嫁にされた!  作者: ジャン・幸田
(1)知らぬ間に花嫁にされていた少女
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ふたりのオルガ

 コンラートから今後のことについて詳しく話し合いでも始まるのかと思っていたら邪魔がはいった。寝室のドアがノックされ、外からノルトハイムの使用人たちが入って来た。朝食の準備が整いましたので、まずはオルガに着替えでくださいというものだった。着替え、といっても使用人たちがやってくれるものであった。


 オルガは戸惑っていた。正体がバレるのではないかとドキドキしていたが、後で知った事であるが、オルガ付きの使用人はその日が初対面だったので、オルガが入れ替わっていることを気付くのはいなかった。オルガが着替えをし始めた時、コンラートはどこかに行ってしまい、そして他の使用人たちが寝台のシーツを引きはがしてジロジロ見ていた。あの処女喪失の痕跡を! すると、使用人たちが何故かざわついていた!


 「伺ってもよろしいでしょうか? そのシーツがどうなされたのですか?」


 オルガが質問した事にその場にいた使用人たちは驚いていた。稀代の悪女と呼ばれているぐらい言葉使いが横柄で有名なオルガが丁寧な言葉使いを使用人にするではないかと! 使用人たちは誰が説明すればいいのか囁き合って相談していたが、年配のメイドが困惑気味で言った。


 「はじめまして、昨日は挨拶する場がなかったので、ご挨拶いたします。わたくしは当家の家政婦長のローザです。大変、申し訳なく失礼な事を申し上げますが、ご容赦ください。ご存知だと思いますが貴族の婚礼は純潔を守った者同士でなければなりません。ですので、オルガ様は・・・はっきり申し上げますけど、殿方との浮名の噂が絶えないお方だったので、すでに誰かに身も心も捧げていると聞いておりました。ですので当家の当主であるコンラート様が不憫だと、下々が思っていたところ・・・オルガ様は処女だったのですね。大変誤解していて申し訳ございませんでした」


 オルガは謝罪されたが、たしかに王女のオルガの評判は良くなく、国中の大多数の民衆さらには貴族の間でさえ嫌うものが多いことを知っていた。彼女は国王夫妻にとって最後に授かった娘で、大変甘やかされて育っていた。そして年頃になると貴族の子弟で年齢が近い男を誘惑するようになっていた。


 誘惑されても王女であるので無下に出来ない事をいいことに、男たちを弄んでいる。そう噂されていたのだ。しかも、婚約者がいる男に対しても容赦なく近づくので、国王が認可した婚姻許可のいくつかが破棄されたといわれていた。


 そんなオルガを、多くの者は恋愛物語に登場する人の恋路の邪魔をする登場人物になぞられて”悪役令嬢”と軽蔑していた。そんな噂が蔓延していたのも王国政府もまた一切否定せず、不敬罪で取締しなかったためでもあった。オルガは王国一嫌われた女であった。


 「そうですわ。わたしはこの日の為に純潔を守ってきたのですから」


 オルガはそういうのが精一杯であった。どんなに豪華なドレスを纏い、指に結婚指輪をしていても、またコンラートと夫婦の契りを交わしても、本当は孤児出身の薬売りの娘オルガだから。でも、それをここで暴露出来ない事ぐらいは分かり切っていた。


 使用人たちはシーツをバルコニーにもっていって、そこに掲げこう叫んだ。「我がノルトハイム家の夫婦は純潔であった! 処女をお迎えできた!」 そのバルコニーの下には多くの民衆がいた。その連中は二人の婚礼を祝福するためでなく、悪役オルガの腰が軽い事が証明されるのを確認するために集まっていた。そのせいか、あちらこちらで一部の人間が多くの人々から銀貨を受け取る光景が見られた。どうやら博打の対象だったようだ、オルガが純潔かどうかの。


 しばらくして、どこかに行っていたコンラートが戻って来た。なにをしていたのかは分からないが、とりあえずオルガを朝食が並べられた円卓にエスコートしてくれた。こんなふうに男の人に貴婦人のように扱ってもらうのは初めてだったので、ドキドキしていたが、このときコンラート・フォン・ノルトハイム公夫人の偽物を演じなければいけない自分に気付いた。


 オルガは孤児院にいたときからの習慣で、食事の前に神に感謝する言葉を唱えていると、執事がビックリしているのがわかった。どうも本物のオルガはそんなことをしないようだった。


 「セバスチャン! そちは口が堅いはずだから残ってもいいが、他の者は食事が終わるまで退室するように。我が妻になった彼女と込み入った話をするから」


 そういうと、使用人たちは退出していった。

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