7
___夜
夕食もお風呂も済まし、そろそろ寝ようかなと思っていたところ、今日の話がちらっと頭を横切った。あの話は信じていないが、新手の感染症か何かなら対策はしておいた方がいいだろう。マスクの予備はあっただろうか。その程度で防げるものなのかは知らないけど。風邪の予防にもなるし、無いよりはマシか。
リビングに行き、母さんにマスクの確認をしたら、どうやら丁度切らしているみたいだった。本当に必要な時に無いと困るだろうし、仕方ない、コンビニに買いに行くか……。美琴が夜は出歩くなと言っていたが、そこまで遠い距離ではないし、まぁ大丈夫だろう。
「コンビニ行ってきていい?」
「こんな時間に?」
「うん」
「もう遅いから気を付けなさいね」
母さんは私が頑固なのを知っているので、無理に止めたりはしない。一度こうだと決めたら諦めが悪く、意地を張ってしまうのが私の悪い癖だ。
ドアを開けるとびゅうう、と冷たい風が首筋を撫でる。ああ、寒い。朝も寒いが夜は余計に冷えた。これだと湯冷めしてしまうな。家に帰ったらもう一度お風呂に入ろうか。
昼は人通りもあるが、夜になると全く人の気がない閑静な住宅街を歩いていく。
途中、藤花の家の前を通り過ぎる。無意識に二階の彼女の部屋を見ると、明かりが付いていた。23時は過ぎる頃合いだが、どうやらまだ寝ていないらしい。
真面目な藤花の事だ、美琴と違い勉強でもしているのだろう。
美琴も恐らくだが地頭は悪くないのだから、あれぐらい勉強したら成績も伸びると思うのに。かくいう自分も、藤花に勉強を見てもらわなければ悲惨な部類なのでその辺り強く言えないのだが。そんな事を考えながら歩いていると、ようやく目的のコンビニに辿り着いた。