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「美味い。めっちゃ美味い」
「良かったです」
私と対照的に三日月は上品だった。あんな姿勢よくスープを掬えるものなのか。
「ジェノは食べないの?」
「妖精は食事を摂る必要がない。大気中のマナからエネルギーを得ているからな」
「便利だね……」
「お前達人間が不便なだけだ」
「でも食事をするって事自体も幸せの一つですよ、ジェノちゃん」
「そういうもんかね……」
そうなのだ。こうやって美味しいもの食べる事、それだけでも些細な幸せ。私はこの小さな幸せでさえ、赦されるのだろうか。
「玖音さん、また難しい事考えてませんか?」
「え、あぁ…………そういや、三日月は何歳なの?」
図星を突かれたので、急遽話題を変えてみる。動揺したのはバレバレだ。
「14です」
「じゃあ私と一緒だ」
この歳で一人暮らしなんて彼女にも色々理由があるんだろう。聞かれたくない事かもしれないし、触れないでおく。
「何で魔法少女に?これ、世界を救う為とかそんな理由以外に良いことないでしょ?何より殺し合いなんて危ないし」
「んー……世界の存亡とかどうでもいいんですけど、魔法が使えるなんて素敵だなって……それに、ご褒美も貰えるみたいですし」
「そ、そっか……」
「魔法少女、可愛いですしね」
実際血みどろになりながら戦ってて、可愛いなんてもんじゃないのだが……あえて何も言わない私だった。というより、今の会話の中に気になるワードがあった。
「ご褒美ってのは何のこと?」
「えっ…………。玖音さん、聞いてなかったんですか…………?」
「聞いてないけど……」
「ジェノちゃん……?」
「おい、よせ!決して忘れてたんじゃなくてだな!後で言おうと思ってたんだよ!」
「今すぐに玖音さんに説明してあげて下さい」
何やら三日月に急かされ言葉を紡ぎ出すジェノ。
「『器』を満たすべく最後まで残った魔法少女には、さっきそいつが言ったご褒美……つまり報酬が、『器』から与えられる仕組みになっている」
「…………考えてみたらそうだ。霧江かなみみたいな奴が自分を犠牲にしてまで世界の為に戦ってるだなんて思えないし」
「その通り。大多数の人間はその報酬を目当てに契約し、魔法少女になった。そしてその報酬とは…………何でも一つだけ願いが叶う、真の『魔法』だ」
何でも一つだけ願いが叶う………魔法…………?
「魔法とは本来、マナを動力に変換した魔力から成り立つ方程式の事を指す。だから前にも説明した通り、魔法は万能ではなく出来る事と出来ない事に分かれるが、『器』によって与えられる真の『魔法』は全てを可能にする、文字通りの魔法だ」
なるほど……道理であの魔法少女たちは必死になっていた訳だ。待てよ…………それなら。
「死んだ人間を生き返らす事も出来るの?」
「ククク…………可能だろうな」
新しい目標が生まれた。やはり私は、死ぬ訳にはいかないらしい。何が何でもこの戦いに勝って、生き残らなければならない。




