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なんだか久しぶりに入るような気がする湯船を堪能する。身体に異常はないのだが、どっと疲れが取れていく気がした。
さっきのやり取りを頭の中で反芻してみる。色々と謎の多い彼女だが、私に生きる理由を思い出させてくれた。死ななくても良いと言ってくれた。正直、その言葉は私にとっては呪いと同意義だ。だけど、その呪いは甘んじて受け入れなければならない。生きて生きて、もがき続けなければならない。それだけが死んでいった母さんへの償いなのだから。
そして、藤花の事もだ。壊れてしまった私の日常は取り返せない。しかし、藤花だけでも、親友だけでも取り返す。今度こそこの手で。もう、逃げ出したりはしない。
お風呂から上がり、キッチンに行くとスープを入れる三日月の後ろ姿と、食器を運ぶジェノの姿があった。
「何で俺様が人間の手伝いなんてさせられてんだ」
「ジェノちゃんこの家に居候してるでしょう?家賃の代わりですよ」
「いや俺様は監視官という仕事をだな……」
ジェノはぶつくさ言いながら手伝わされているようだ。何だかんだこの妖精は面倒見いいよな……。
「あ、玖音さん。もうご飯出来ますよ」
「ありがとう。ジェノも」
「全くよぉ~、妖精が人間にこき使われるなんて世も末だぜ」
「ははは……」
食卓に並んだのはオムライス(何故か私のだけケチャップでハートのマークが描かれているが、あえて突っ込まない事にする)とサラダとかぼちゃのスープ。良い匂いがするし、非常に美味しそうだ。
「どうぞ、召し上がって下さい」
「頂きます」
「一人暮らしなんで簡単な物しか作れなかったんですけど。美味しいかは分からないです」
「いやいや、これだけ出来たら凄いよ。私には作れない」
もうお腹はぺこぺこで、みっともなく人前で料理にがっつく私。




