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「そういや、妖精は知らない? 一緒に居たと思うんだけど」
「あぁ……玖音さんが目覚めるまで暇だからとか言って何処かへ去っていきましたけど」
「本当、適当だなあいつら……。三日月には付いてないの? 妖精」
「前はいたんですが……。魔法少女になってから一定期間はルールのサポートなどの観点から一緒に行動するみたいですが、ある程度経つと離れるみたいですね。妖精さん、可愛かったのに……」
「そうなのか……」
可愛いか、あれ……? 見た目は確かに可愛らしいかもしれないが、今まで見てきた二匹の中身は性悪だったぞ……。
「あの……」
おずおずと、三日月が何か言いたそうにしている。
「大丈夫ですか……?」
「んー……別に痛い所はないかな。左手もちゃんと動くし」
「そうじゃなくて…………心です」
「え……」
……………………。
あぁ…………そうか…………。拘束していたのは私自身の身を案じてだったのか……。確かに、目が覚めて、あの状態だったからこそ逆に冷静になれたのかもしれない。もし体が自由だったらどうしていただろう。この子の言う通り、暴れていたのかな。舌を噛み切って、自殺していたのかな。今からでも、今からでもまだ遅くないんじゃないか……。そうだ……私は、死ななければならない。生きていては駄目な人間だから。でも、ここでは出来ない。折角助けてくれた彼女に迷惑だろう。これ以上は面倒をかけられない。何処か、ここではない何処かに行って今度こそちゃんと、母さんに償いを……。
泣きたい。大声を出して泣きたいのに、胸が引き裂かれそうな程悲しいはずなのに、涙は流れてくれない。ただ、虚無で、虚ろで、虚しくて、心にぽっかりと穴が空いている。お腹は塞がっているが、心の穴は塞がらない。真っ黒な闇だけが心の中に渦巻いて。
ふいに、項垂れている私を柔らかいものがそっと包んだ。それが、三日月からの抱擁だと理解するまでに数秒を要した。シャンプーの、良い匂いが漂う。どれぐらいの間ここにいたのかわからないが、自分は臭くはないのだろうか。ぼんやりと、そんな事を考える。
「死なないで下さい。死なないで」
「無理だよ。私が生きてると、周りが不幸になるから」
彼女の胸の中で呟く。死が私を離そうとはしない。




