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……一瞬、思考が停止する。
いや、分かっていた、理解っていたよ。昨夜の出来事は悪い夢じゃなかった。夢だったならどんなにいい事かと期待していた。夢なんかじゃない。これが、現実。
「おい、とりあえず座れ。要点だけ説明してやる」
思考は止まったままだが、身体は勝手に動いていた。持っていたカバンを目の前の何故だかわからないが無性に腹が立つ謎の生き物……妖精に向けて降りおろす。
バシッ。
「ってーな!!!いきなり何しやがんだお前!!!」
昨日の奴とはまた別個体に見えるそいつが吠える。フェイ、とか言ってた妖精よりも髪が短く、声も服の色も違う。フェイは緑の服だったが、こいつは紺色だ。
「いきなり人の部屋に不法侵入してたのはそっちでしょ」
「人間のルールなんて俺様に関係あるか!」
「じゃあ好都合だ、殺すからそこ動かないでね」
机の上のカッターナイフを手に取り、刃をそいつに向けて付き出す。
「待て待て待て、俺様が悪かった、落ちつけ」
「そこから動かないで。妙な動きしたら刺すよ」
「はいはいはいわかりました、これでいいんでしょうが」
「はいは一回」
「はい!!!くっそアマ後で絶対殺す……」
「なんか言った?」
ちゃき。
「言ってない」
「で?何?藤花は?アンタの仲間が私の親友を連れ去って消えたんだけど、どうしてくれるの?」
「あーあー、ちゃんと説明するから待てって。先輩何にも話してねぇんだろうなぁ……めんどくせーなぁ……」
「多分、そういう状況じゃなかったしね」
「わかった、じゃあ順番に説明していくぞ……。玖音だったかお前の名前は」
「そうだよ」
「俺様は名をジェノという。これからお前の監視役をすることになった妖精だ」
「監視って、それあのフェイとかいう奴じゃないの? アイツと契約させられたんだけど」
「契約とは魔法少女を降臨させる為の儀式であって、誰と誰が契約しようがそこに特別意味を持たない。本来なら先輩がそのままお前の監視役を務めるべきだったが、もう一人のガキの方に付いていったからな。詳しい理由までは知らねーが、『その方が面白くなるから』とかなんとか言ってたぜ。だから代わりに俺様が派遣されたって訳だ」
あの妖精も次会ったら絶対殴る……。




