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「そして、その負の感情が大きければ大きい程魔法少女としての力は強くなる。藤花さんとアナタとでは比べ物にならない。そこに転がっている霧江かなみとでさえ比較の対象にならない。別格なんですよ、藤花さんは」
「そん、な…………」
「私そこまでメンヘラじゃないんだけどなぁ。ま、いっかどうでも。もう少し話していたいけど……玖音、私そろそろ行かなくちゃ」
「藤花…………?」
「やる事があるの。その子も連れていくね」
「ちょっ、藤花待って。何を言ってるのか全然分からないよ。どこに行くの?」
「それは教えられない。巻き込みたくないし。玖音はもう普通の生活に戻って頂戴。今までみたいに」
「なんだよ、それ……。おい、妖精!!お前が藤花を唆したんだろッ!?」
「違いますよ。ボクは説明しただけで、選んだのは彼女です。さて、一緒に行かないといけないのでこれ以上はお話できないですが。アナタには代わりの者が派遣されるでしょう」
「訳が、わからない……。何でだよ…………」
「それと、まさかアナタが霧江かなみを倒せるとは思っていなかったですよ。素晴らしい。これだから魔法少女は素晴らしい……。魔法少女は可能性の塊だ…………無限の………………」
知るか、どうだっていい……。もう立てなくなって、項垂れる私の前に、藤花がしゃがみ込む。青白い街灯が二人を照らしていた。
「玖音」
石鹸の匂いが微かに漂う。藤花の匂い。私の好きな、匂い。
「藤花……行かないで、行くな…………」
そうだ。藤花に私が必要だったんじゃない。私に藤花が必要だったんだ。
「好きよ」
口づけを、された。初めてのそれは血と涙の混じった最悪の味だったけれど、相手が藤花のせいか、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
「さよなら」
夜の常闇に彼女が消えていく。手を伸ばしたが、届きはしない。声が枯れるまで藤花の名を叫んだが、それから、彼女が戻ってくる事はなかった。




