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「さっきからこそこそと逃げ回りやがって……!」
私だって逃げるのは性に合わないが、今はこうするしかないんだ。痛みに耐えながら必死に走るが、霧江は後ろから飛翔しながら追って来ていた。追撃も来ているし、思うように距離を離せない。飛んでる相手に走って逃げるのは無謀に思えた。
私も飛ぶしかないのか?あの妖精も言っていたが、今の私なら飛べるんだよな……?イメージが大事と言っていた。イメージ、イメージ……。飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ…………。
走りながら脳内でイメージしてみるが、体は微塵足りとも宙に浮いてはくれない。昔から何かを想像する事が苦手な私だった。
将来の夢なんかも思い付かなかったし、美術、音楽等の芸術分野も苦手な科目で。向いてないな、魔法少女……。
そうこうしている間にも霧江は後ろから迫って来ていて、避けるのにも必死でとてもじゃないが飛ぶイメージなんて出来ない。
「どうした、戦えよ」
「くそっ……!!」
それでも今は、逃げる事しかできない。
この辺の路地は入り組んでいるから地元の私に地の利がある。明かりの数も少なく、前が見えないぐらいの暗さだったので、ただ逃げる分には効を成していた。
それに、何故か人とすれ違わないのも救いだった。
どのぐらい走っただろう。時間の感覚も足の感覚もない。あるのは痛みだけ。
軋む体を気力で起こし、ふらふらになりながらも走るが、更に攻撃を食らってしまい、倒れてしまう。体のどこもかしこも出血しており、伏せている一面が血に染まった。
死ぬ、死んでしまう。死が、漠然とそこにある。
直接アイツに殺されなくても、このままでは出血死で死ぬ。動かないと、逃げないと。しかし、地に伏せた体はもう動こうとしてくれなかった。
血で濡れて赤黒くなったアスファルトを眺めていると、ふと思い出がフラッシュバックした。全てが失われ、血に染まった、あの日の事を。藤花。




