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第九十七話 シップランド攻略

「はははっ! ついに見えたな、シップランドが」


「陛下、あとは攻略命令を下すのみです」


「そういえば、降伏交渉とか抜かしていたあのアホ。トレスト男爵の使いの者。奴はどうした?」


「無条件降伏して平民になるか、一族で死ねと言ったら、涙目でシップランドまで戻りました」


「そうか。防衛陣地を構築しているようだが、随分とお粗末な出来だな」


「シップランド軍の主戦力は、実力のあるハンター有志による傭兵です。防衛戦よりも、奇襲や後方かく乱に注意した方がよろしいかと」


「であろうな。それにしてもこの二ヵ月、酷い目に遭ったな」


「まったくでございます」




 ようやくシップランドまで辿り着いたが、我がバート王国軍の補給状況は最悪だ。

 食料も水も少なく、それらを仕舞っていた魔法箱も夜襲でかなりの数を奪われている。

 航行停止になるまで破壊された船は一隻もなかったが、帆、舵、魔法炉などを損傷させられ、進軍中のため修理も応急処置がせいぜいで、おかげで性能が落ちたままの船が多かった。

 そのせいで進軍速度も落ちてしまい、ますます食料と水不足に拍車をかけた。

 悪循環と言っていい。

 それでも、夜襲部隊が船体に撒く砂獣の血により誘き寄せられた砂獣たちの肉と、商人たちが水や食料を売りに来ていたのでなんとかしのげていた。

 連中が、魔法箱を売ってくれればよかったのだが……。


「(とにかく、まずはシップランドを落とすことだ。さすれば、水も食料も得られる)」


 そうすれば、我が軍が補給で苦しむことはなくなる。

 シップランドには大規模な水源があるので、少なくとも乾き死にすることもないはずだ。


「陛下、例のトレスト男爵たちですが」


「あんな奴、貴族の美学に殉じさせてやれ」


「住民たちですが、略奪は許可されますか?」


「当然だ」


 とにかく今は、兵士たちの士気を回復させなければ。

 復興が面倒だが、そのためには多少のことにも目を瞑らなければなるまい。

 次はオールドタウンなので、ここで英気を養ってもらわなければ。


「一秒でも早く落とすに限る。攻撃開始だ!」


「「「「「「「「「「おおっーーー!」」」」」」」」」」


 略奪を許可したら、みんな元気になったな。

 まずはシップランドだ。

 ここから俺の、グレートデザート統一に向けた戦いが始まるのだから。




「はっ? もぬけの殻だと?」


「はい。あと、シップランドの水源は枯れておりました。だから住民たちは逃げ出したのだと……」


「そんなバカな!」


 シップランドはすぐに落ちた。

 防衛陣地でトレスト男爵を名乗る男の一族か家臣、さらにその家族。

 一部住民有志もいたようだが、たとえ粗末でも防衛陣地に籠られると、こちらの犠牲が大きくなってしまう。

 一気に魔法で焼き払ったのだが、一人でも生かしておいてシップランドの状況を聞けばよかった。

 一体いつから水源は枯れていたのだと。

 さらに、略奪に期待してシップランドに乗り込んだ兵士たちは、そこになにもないことを知った。

 当然建物は残っているが、家屋敷は略奪できない。

 とにかく、地面に固定しているもの以外はすべて持ち去られていた。

 これは焦土作戦に近い。

 ウォーターシティーの時とまったく同じ状態なのだ。

 しかも今回は、連れてきた兵士が多いので補給に爆弾を抱えている。

 これはどうしたものか……。


「陛下、水と食料を売ってくれた商人が、数名の同業者を連れてきました」


「早速嗅ぎつけたか……」


 足元を見られているようで気分が悪いが、連中がいなければ我々はシップランドで乾き死にしてしまう。

 次のオールドタウン侵攻の準備が終わるまで、このシップランドも維持しなければなるまい。

 王都や近隣オアシスからの補給網を構築し終わるまでは、少しでも水や食料を確保しておかなければ。


「シップランド子爵家の連中め! どうせオールドタウンに逃げたのであろうが、必ずや捕らえてその首を刎ねてやる!」


 必ずや、この世界を統べてやる! 

 それこそが、俺の生まれた意義なのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全滅させるだけなら夜襲での食料と水の略奪、砂獣の攻撃、商人活動を全面的に禁止してシップランド陥落後も無視しておけば水無くて全員生きて帰れなかったでしょうね。
[良い点] 武器をもって戦うのだけが戦争ではない。 [気になる点] 帰れないのでは。 [一言] 商人から奪うと次は来ない。
[良い点] これ、陛下は商人脅して根こそぎ物資奪い取ったりしないのかな 何律儀に取引してんの?と思えてきた
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