一話 ひとときの日常(1)
「高校生活って、もっと楽しそうっておもってたんだけど、こりゃ中学校と変わんねーな。」
入学式後の教室の中で、新生活を楽しみに待っている生徒達の中、テンションの低そうな声がした。
「そう言うなよ。本来この学校はな?県立トップ高校で、勉強を目的に来た生徒が多いんだ。女の子と昼休みに屋上でイチャイチャ…なんて青春があるわけないだろ?」
こう俺に言っているのは、小、中と共に過ごし、9年間でなんと1度もクラスが離れたことのない、俺の親友である悠皇寺悠斗だ。今回もまたまた同じ高校で、同じクラス。ここまで来ると少し気持ち悪いまである。俺はこいつと結婚する運命なのか?そうなら神様よ、死んでくれ。
「でもまだ入学初日だ!俺はこの学校で青春を楽しむぞ!高校生活エンジョイだ!まずはこの学校で友達を増やしていって…そんで…」
「お前はいつでも楽しそうだなほんと。1人でも生きていけそうだな。」
「1人はダメだ!絶対結婚するからな!?最悪、俺はお前になるのかも…」
「絶対に無理だ」
「俺も無理だ」
こんなしょうもない会話を楽しんでいると、最初のホームルームの始まりを告げる鐘がなった。
「俺の高校生活は終わったな…」
学校の放課後、神奈と悠斗は街中を歩きながら話していた。2人はこれから、悠斗はスポーツウェア、神奈はスニーカーを買うために駅前のデパートに向かっていた。
「ま、まぁ、まだ諦めるなよ。確かにあの自己紹介は親友の俺でも引いてしまうレベルだったけど、むしろ皆の記憶に焼き付いただろ」
「あんなしょうもない一発芸をしたのが間違いだったのか…そうか…俺はどうすれば…」
そんなことを心配しながら歩いていると悠斗が何か見つけたようだ
「なあ、あれ、同じクラスの子じゃないか?
道に迷ってるのかな」
「あれは、神崎幸奈さんだな。俺の好みだから覚えてる。」
「もっと普通に覚えてやれよ。とりあえず行ってみよう。」
2人は道に迷ってそうな神崎さんの元に向かっていった。
「神崎さんだよね?道に迷ってるのかい?」
(悠斗は良い奴だからな、困ってる人は助けない訳にはいかないんだろうな…)
「私の名前を? あ!同じクラスの!
悠皇寺くんと…お、すべっちゃった佐倉くん!」
「おい、その覚え方はやめてくれ!
俺は今深く傷ついているんだから!」
「あはは、ごめんごめん〜
えっとね、私今迷ってるんだ。私、事情があって引っ越してきてさ、一人暮らしするんだ。それでね、そのための買い物をしたかったんだけど、どこで集めたらいいのかわかんなくて…」
今年の春から引っ越しをして一人暮らしをするという彼女である。この、ラブコメのような展開は俺は嫌なんだがなあ…
そんなことは関係なく、悠斗は話を続ける。
「俺たち、今から駅前のデパートに行くんだけど、そこならいろいろ売ってるだろうから、一緒に行く?」
「え、ほんとに!ちょーたすかる!
二人ともありがとう!じゃあ、ついて行かせてもらうね〜」
俺はまだ知る由もなかった。
俺だけでなく、この2人まで俺の物語に関わってくるなんて……。
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第一章 運命の出会い編 よろしくお願いします。