プロローグ 世界
「どうして…君がここに居るの…?」
月の光がよく見える、快晴の空。
1人の少女は、涙ながらにそう言った。
「お前の悲しそうな顔が頭から離れなかった。だから、助けに来たんだ。」
乱れた服に長い白髪、本来はとても凛々しくあるはずで、誰一人手の届かない高嶺の花のようで、今ある状態のように、地に倒れていることなど考えられもしないような少女と、そんな子に手を差し伸べようとする、少し変わった少年と、非日常的な日常の、魔術と錬金術、そして異能者の存在する世界で起こる大きな大きな物語………。
4月の温かな空気につつまれるある日のこと。多くの入学生で蔓延るこの日に、俺、佐倉神奈は、高校入学式に新入生の1人として向かっていた。
信号を待っているとき、隣の人が、音を出してニュースを見始めた。
おいおい、イヤホンとかつけろよ…。
迷惑がる彼に、気になるニュースが耳に入った。
「続いてのニュースです。昨夜、イタリア・フィレンツェにおいて、魔道士による殺害事件が…」
うわ、こんなニュースこの前も聞いたな。魔道士ってそんなに血の気が荒いのかよ。
でも、能力かぁ…俺にもあったら、人生少しは変わってたのかな。
16年前の7月20日、突如と現れ始めた、魔術を使用する人間。彼らは神への祈りにより魔術の使用を、神から許可されていると語っていた。実際、神は存在しているのだと言うのは、いまでは宗教に所属していることなど関係もなくそれが信じられている。過去に世界に起きたとされる大災害、「ノアの方舟」「ラグナロク」などは、全てその人間より上位の存在である神、その中の最高神に値する神によって防がれていたという。
だが、最高神は他の神により下位の存在に堕とされ、地球におとずれる災害を防ぐことが不可能になった。それを危惧し、地球上の中で、知性、言語、感情などを持ち、全生物の中のヒエラルキーで最も上位に存在している人という存在の中で、神への祈りが強いものには神からも干渉がしやすいため、自らの能力を分散させた結果、魔術という概念が蔓延るようになったそうだ。
それから2年後に、魔術概念を応用し、錬金術という概念が誕生した。錬金術といっても、木から金を作り出すような考え方ではない。今現在の錬金術というものは、錬金術に必要とする力、変成力と呼ばれる力を使い、変性原子と呼ばれる他の原子に変換できる原子を用いて、炎、氷など、実際に存在可能なものを生み出すことが可能だ。
魔術と錬金術の二つを扱うことはできず、扱おうとすれば命を落とすことになる。
現在の世界は、魔術を司るアジア、ヨーロッパ、アフリカと、錬金術を司る北アメリカ、南アメリカ、オーストラリアの二極分化が完成してしまっている。
ただし、日本を除いて、という話だが。
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