2 強敵!ブサメンマン
「いつも熱血、自然を大切に。レッドグリーン!」
「いつも陽気でたまにブルー。イエローブルー!」
「天使の笑顔。時に腹黒。ピンクブラック!」
「「法で裁けぬ悪を討つ! 人呼んで、二重人格戦隊3人でも6人ジャー!」」
ビシィ、決まったな!
ただ、やはり3人だと寂しい。
怪人は、オレ達を睨みつけ高笑いをした。
「ハーッハッハッハ!いくら6人ジャーでも3人になったら戦力半減だよな。まあ、死んだのは弱っちい奴らだろうから大して影響ないか?ハハハハ!」
「お前、あいつらのことを馬鹿にしてるかYO!」
イエローブルーが怒っている。オレも同じ気持ちだが、挑発しているのは明白だ。
あいつらのことはオレ達が一番わかっている。
「戦士は、死んでも死なない。志をわかってくれる者がいる限りッッ!」
「レッド……」
「グリーン、ブルー、ブラック……みな素晴らしい人だった。グリーンたちは死んでもオレ達の心の中で生き続けているッッ!!」
「さすがレッド、熱い男だぜ!……そうだな、グリーンたちはオレ達の中で生き続けているな!」
緑を大切にしていたグリーンはオレことレッドに。
いつも憂鬱で眠れなくてハルシオンを常飲していたブルーはイエローに。
ツイッターやネット小説サイトの感想欄でクソコメント書きまくって炎上していたブラックはピンクに。
あいつらの思いはオレ達が受け継いだ。
だから、安心して眠ってくれよ。
オレ達は今日から6人ジャーじゃない。
二重人格戦隊3人でも6人ジャーだ。
お前らの志を背負って、オレ達は歩くよ。
見ててくれよ、グリーン、ブルー。ブラック!
「「オレ達は6人ジャーじゃない。そう、2重人格戦隊!3人でも6人ジャーだッッ!!」」
オレ達が平和を守るんだッッ!
「そこの怪人!お前の名前を聞いておこう。これから死ぬものへのせめてもの情けだッッ!!」
オレは、戦ったやつらの名前はすべて覚えている。
ケモスキー大佐、BL夫人お菊、ロリィタ男爵――みんなみんな手ごわい敵だった。
オレは、オレの拳がぶちのめした奴らを覚えておく義務がある。
あいつらは悪だった。
だが、オレと何も違わない。
あいつらにも守りたいものと壊したいものがあって、
その守りたいものと壊したいものがオレと違っただけの話だ。
そして、オレは大衆から受け入れられ、あいつらは唾を吐きかけられた。
ただ、それだけの話だ。
オレは、オレだけは――世界中があいつらのことを忘れても――覚えていてやる。
それがオレがしてやれる、オレの拳で下してきた者たちへの唯一のはなむけだ。
「ハハハハハ!言ってくれるなレッドグリーン。お前はそう言って多くの者たちを始末した。ボクもお前に殺されるのかもしれない。でもね、ボクにはボクのプライドがある。お前たちを片付けたのち、ボクの話を聞いてもらうぞ、レッドグリーン!」
男は拳を力強く構えた。
「ボクの名はブサメンマン。かかって来いよ、レッドグリーン!」
「まずは私が相手よ、ブサメンマン!」
ピンクブラックのネコパンチが炸裂する。
いつものように手をグルグル回し、
「えい、えい!」
ブラックピンクはブサメンマンをポカポカ殴った。
ブサメンマンは頬をポリポリとかき、ブラックピンクの胃に正拳突き(ヘビィブロウ)をかました。
「か、かはっ」
ピンクブラックはボディにしこたまダメージを受け、昨日食べたリコッタチーズのゆるふわパンケーキと生クリーム多めのカルボナーラを吐き出していた。
「お前、それが女の子にすることかYO!このクソヤロー!」
「ハハハハハ!殴られる覚悟もないものが戦場に出てくるんじゃないよ。」
イエローブルーが拍手しながら悪口をかました。
ブサメンマンはイエローブルーのディスを相手にせず、オレに手をクイクイッとして挑発してくる。
「来いよ、6人ジャー最強の戦士」
「なかなかやるな、ブサメンマン」
オレとブサメンマン、二人で間合いを測りあう。
「あれ、お前どこかで……」
「気のせいだろ、お客さん!」
ブサメンマンが飛び掛かってきた。
ブサメンマンのハイキックをすんでのところで後退して躱す。
ハイキックの回転を利用してのミドルキックを肘で防御するが体重差で吹っ飛ばされた。
流行りの味噌ラーメン屋のレンガ積みのアプローチに激突させられ、白煙が舞い上がる。
「か、かはッ」
なにも食ってないオレは血と胃液を吐く。
クソ、頭がくらくらして立ち上がれない。
「ギャハハハハ!弱ええ!弱えなあ、レッドグリーン!弱いアンタは、ブラックピンクがボクの攻撃でブサメンになるのを指を咥えて見てるがいい!」
ブサメンマンは寸胴鍋からお玉で黄色い濁った汁を取り出し、いまにもブラックピンクにかけようとしている。
だ、ダメだ。ブラックピンク、逃げろ……。
「オレがいるYO!」
イエローブルーが腕を前に出してチェキラッチョしながらブサメンマンの前に立ちふさがる。
そうだ、まだお前がいる。
オレと並ぶ実力者のイエローブルーが。
た、頼んだぞ!イエローブルー!
「よし、これで片付いたな」
「おい、無視すんなYO!」
ブサメンマンはイエローブルーを温かい目で見ている。
「やだなあ、イエローブルー。ボクが仲間を攻撃するわけないじゃないか」
「え?」
イエローブルーは混乱していた。
「大変だったよな、ボクら。だって、僕ら同じブサメ……」
「うわあああああ」
ブサメンマンからのハグを受けるイエローブルー。ブサメンマンの声を遮るように叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待てYO!意味が分からないYO!オレはお前とは違うYO!」
イエローブルーは混乱してリズムを刻みながらチェキラッチョ(check it out yo)していた。
「いいや、アンタはわかるはずだ。ボクとアンタなら、分かり合えるはずだ。アンタはボクと同じだ。来てよ。同じブサメ……」
「うわあああああ」
ブサメンマンは、両手を広げ歓迎(welcom)のポーズを取った。
「あああああああ!聞こえねえYO!オレはお前とはちがうんだYO!」
ブサメンマンの言葉を遮り、頭を抱えるイエローブルー。
じっと動かないイエローブルーに近づき、抱きしめるブサメンマン。
「知ってるよ、アンタの苦悩。アンタの陽気に隠した陰鬱を、ボクならわかってあげられる」
胸を抑え、鼓動を早くするイエローブルー。
「あー!あー!誰が味方なんだYO、だれが敵なんだ、わからない、オレには何もわからないYO!」
イエローブルーは震えだした。
「薬、薬くれ、ハルシオンをくれよ、このままじゃ眠れない……」
「だ、ダメだイエローブルー。今、ブルーに身を任せると憂鬱に持っていかれるぞ!」
オレは残った体力、気力を振り絞ってイエローブルーに声をかけた。
イエローブルーはいつも陽気な分、ブルーになると反動がひどいのだ。
「イエローブルー、ボクはアンタの味方だ。ボクの誠意を見せるべく、今からアンタにボクが怪人になるまでの話をするよ」
ブサメンマンは、イエローブルーを抱き締める。
そして背中をさすり続けた。
それは、母親が子どもにするように。
怖い夢を見なくて済むように。
読んでいただき、ありがとうございます。
全5話。MBSラジオ短編賞応募中です。




