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職業:救世主 ~世界の危機にシスコンとストーカー召喚してなにさせる気!?~  作者: 弐逸 玖
2-2 各々(おのおの)の想い、それぞれの立場
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お召し替え ~従者の皆さん編 モリガン~

「アリスにリオさん、もう来ていたのか。速かったな。――ん? なんかあったのか?」

 アビリィさんと入れ違いで、ごく自然に、何気なく入ってくるのは黒いコートのモリガンだが……。

「マイスターも仮の服とは言え、似合って居るぞ。アリスはまた、変わった服を着ているな」


 ボロボロでヨレヨレだった元のコートでは無く、つや消しなのに綺麗な黒い生地。

 袖口と裾の部分が多小広がって、スタンドカラーの襟元と袖口からは白いフリルが見える。


 すねまでキッチリ長さはあるが、前のものより明らかに歩きやすそうで、でもショートブ-ツがヒール以外ほぼ見えないのだから、むしろ前より裾は長くなったんだろうな。

 そして歩く度にチラチラ生足が見える。

 今回はコートの中身、なに着てるんだろうコイツ。


 そのヒールも更に細くなって上がったようだ。

 ……女らしさ、なんてことは一切気にしてないモリガンのはずだが。

 ヒールには拘りがあるんだな。

 服装から行くとMと言うよりは、まんまSの女王様だけど。


「リオさんは昇格したのか、おめでとう。一息に大巫女とはすごいものだな、聞いたことがない」

 やはりこの世界の人間には、その辺。服で見分けることが出来るらしい。

 しかし、そんなことよりもだ。



「モリガン、お前。その服……」

「そうなのだ。仮の服とは言えアリスまでそんな変わった服だというのに、私は代わり映えが……。どう言うことだと思う? マイスター」


「この莫迦、逆だ逆! ホントに鏡見たのか!? あからさまにおかしいわ! そこまで身体の線が出るコートなんか見たこと無ぇよっ!!」

 ……しかも浮き上がった線が、ものの見事になにもえがいていないというおまけ付き。


 見てるこっちが恥ずかしい。どんな羞恥プレイだよ……。

 あ、そう言えばコイツの場合は。


「そうか、フィット感が上がっているのだな? ……おぉ、言われればこれはこれで」

 失敗した、露出癖があるんだった……。

 それならそれで。むしろ喜ぶんだよ、コイツだったら。


「えーと。……メルカさん、服選びの責任者は?」


「わたくしです。皆さんのお好みと特性を参考にしてご用意しました。あのコートは物理攻撃をある程度無効化する上、魔導索敵にかかりづらく、汚れも付きにくい。更には伸縮性に富み、夏に着ていても涼しく、冬は暖かいと言う素材の良さの……」


「あの。……うん、もういいです」

 お好み、と言うかもはや性癖だろ!

 そこは参考にしちゃダメなところだってば……。



「そうだ、マイスター! 言われて上着の見てくれもすっかり気に入ったのだが、なにより中の服がだな……」

「……う、しまった! 前にも言った! 人前で脱ぐなっ!」

 ……すこし遅かった。


 何かの“事案”の容疑者のごとく、モリガンは自慢げにコートの前をはだける。

「そう言わずに今だけでも良いから見てくれ! こんなに気に入った服は今まで無かったのだ!」


「う、な。これは、お前………。俺には刺激的すぎるから。もう、しまえ」

「……聞いた限り、マイスターなら見慣れているかとも思って居たが」

「んな訳あるか! 誰に聞いたんだよ、そんな話!」

 まぁ、一人しか居ないんだけど……。

 しかし、なんでこの世界にこんなもんが!


「なんだ、ワンピースだし、大変そう。っていうかまぁ。日々、なにがしかの苦労はあるだろうけど。……気に、いってんのな?」


「気に入るどころか。――この良さがわからんと言うヤツが居れば、そいつの感性を疑うレベルだぞ。マイスターもそう思うだろ?」

「ど、どうだろう……」

 良さはわからんでも無いが。あまり表だって公言出来んヤツだよ、これ。



 気に入ってるそうだし、だったら人前で脱がなきゃ良いよ。もう……。

「……人前で。脱いで見せるなよ?」


「それこそ前にも言った通り、私はいまや身も心もマイスターの所有物だ。もちろんお前以外の男には見せない、その辺はわきまえてるさ」

 それはそれで少し困るというか。


「女にも見せるな! 本気で莫迦なのか!?」

 つーか、その台詞で頬を染めてうつむかないでくれ。ホントに困るから……。



 中身はともかく。見た目は美人のお姉さん枠、アテネーとはすこしベクトルが違って、コイツもきつめの美少女。そこはもう、間違い無いわけで。

 体の凸凹は無いにしろ、偏見無しで見ればそうとしか言えない。

 だから、リアクションに困るんだってば!



「こんなに扇情的かつ慎ましやかに見える、矛盾した服は始めてだ。胸の神聖文字なのか古代文字なのか、これも読めないが、いかにも私を表しているようで気に入っている。……うん、一生大事にする!」

「……せっかくメルカさんが作ってくれたんだ、一生は大袈裟だが、そうしてくれ」


 

 ――それで。だ。

「……亜里須。わかってると思うが、後で。話があるからな?」

振り向いたが、伊達眼鏡の奥の目は。微妙に俺の視線からそらされる。

「な、なんの。こと、……かな?」

 

「まさか本気で誤魔化せるとか思ってないよな? ――この場で俺とお前以外の誰が。スクール水着のデザインを知ってるっつーんだ?」


 しかも胸にわざわざ白い布を縫い付けて『モリガン』と少し歪んだカタカナで、しかもマジック風の字体で書いてある。と言う、もろにアニメ仕様。

 そもそも。この場でカタカナが読み書きできるのは。――俺以外なら、それはお前しか居ねぇだろ!


「うぁ、あ。こ、こう言うの。もりちゃん。……好きかな、って。思って」

「だいたい。いつ、どうやって、誰に、デザインを伝えたっ!?」

 まぁ、それを素材含めてキッチリ再現するメルカさんもメルカさんだが。


 この調子だと他の従者の皆さんの服装も、ちょっと不安になってきたな……。

「他の二人のデザインにも干渉してるんじゃ無いだろうな?」

「……もりちゃん、だけ」


「ホントだろうな……?」

 こくん、と頷く。

 そこまで器用なタチでは無いのは知ってるけどな……。


「メルカさん。あの中の服、ツーピースに直せますか?」

「ワンピースの方が見た目も良いような気がするのですが」

「ほら、アイツは一切考え無しなんでアレだけど。……なんて言うかあの服だと、普段、生活全般に色々大変だろうし」

 普段からスクール水着を着て“ちょっとお花摘みに”。なんて、いかにも大変だろうな。とか。


 ……なぜ俺が。そんなことまで気にしなくちゃいけないんだろう。

 スク水を普段着にして苦労する、それはモリガンなのであって俺じゃ無い!


「なるほど、言われてみればそうですね。……予備のこともあります、何処で分割すると不自然に見えないか、つなぎ方も含めて後で考えてみましょう」

 ……予備も用意してるのかよ。


「……お願いします」

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