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イベントの必要性についての考察

 所属:無所属 (未登録の第三勢力)

 灰色世界の救世主:卯棟 裕利 



「おや。お早いことですね。湯浴みはお嫌いですか? ユーリ様」

 通された部屋ではヴェールを外したメルカさんが、品良く腰掛けて待っていた。


「俺は男だからね、ここまでだって川やなんかでも簡単に身体は流せたさ。……ウチはがさつでデリカシーなんて無縁な奴しか居ないけど、でも。この状況下で全身隈無く、なんてのは女には無理でしょ?」



 ホントは男だって無理だけどな。

 だってウチは、俺以外は女の子ばかりだ。

 流石に、俺だけパンツを脱いで全裸で川に飛び込む、と言うわけにも行かない。


 ……もっともまるで洗わない、と言う訳にも行かないからその辺は。

 みんなから見えないところで、それなりに洗ったり。




 そのほか。

 亜里須が血の臭いを気にして穴を掘るように、俺だって。

 女の子に囲まれてるんだぜ? しかもみんな色々、不必要にレベルが高いんだ。

 ……まぁ、俺個人は健康的な高校生男子だし。その辺は。

 知らんぷりしてて欲しい。


 モデルみたいな、アテネーが常に俺に気を使い。

 ケモミミロリ巨乳のニケが、体型それを全く気にせず飛び回り。

 モリガンは何かにつけて服を脱ごうとし。

 そしてすぐ横にはいつでも亜里須。


 さらには必要以上に設定に引っ張られるこの世界で。

 チェッカにシスコン属性を指摘された俺に。

 今後の予定を相談するため、妹と瓜二つのリオが顔を寄せて話しかけてくる。


 なにも感じない高校生がいたら、その方がおかしいだろ?

 それこそアニメかマンガの主人公だよ!

 鈍感どころか、心が無いんじゃ無いか? とか疑うレベルだろうよ。


 

 なんて。

 まぁ、こんな話は今はどうでも良くて。




 俺以外は、ほぼ水着みたいな服であるニケでさえも。見た限りでは、控えめに手足を水で流していただけである。

 やっぱり俺同様。見えないところではそれなりに、洗っては居たのだろうけど。


 大きな湖や池のような場所もなかったから

「しばらくこっち来ないでね♡」

 的なイベントが発生しないのはわかるけど。


 うーん。そう言うラッキースケベ的なハプニングイベントがなんで無いんだ?

 イベントというなら大精霊まで出てきたというのに。

 来る道すがら、山をいくつも超えてきたのに温泉どころか湖の、みの字もありゃしない……。

 異世界で、水浴びする女の子を意図せずに覗いちゃうとか。ある意味定番じゃないか!



「湯浴みには女の子を付けた方が宜しかったかしら。ユーリ様は導士達が是非お世話をさせて欲しい。と言うものですから、そこから選びましたが」


 全裸の巫女さん相手では、俺にとって不幸な“事故”が起こる。

 いや、きっと間違い無く起こった。

 ……うん、ここはセーフ! ナイス、メルカさん!

「いえ、その手の気遣いは無用ですからホント……」



 ここまでだって“イベント”はなかったわけだし。

 でも待てよ?

 イベント対象が亜里須やアテネー、ニケならともかく、リオやモリガンだった場合。


 二人共“何も無い”上に。

 妹と同じ顔したヤツと、むしろ見られて喜ぶ変態。


 得るものが無い上、いろんな意味で俺のリスクだけがむやみに高くないか? それ。

 場合によっては死亡フラグが立ちそうだし、……社会的に。

 うん、無くて良かったのか……。


 でもメルカさんがなぜか服を脱いで背中を流してくれるみたいな。

 何かあたってますよ、でも湯気でギリギリなにも見えません! 的な。

 そう言うのはおまけイベントの定番中の定番なのでは……。


 と言う妄想が、目の前にメルカさんがいるのに展開されて非常に気恥ずかしい。

 なんだろうこの人。すごく気になる(特に胸が)!

 なんでなかったんだ、メルカさんとのお風呂イベント!!



 実際に発生したお風呂イベントと言えば。

 全裸の美少年二人に、要らないと言ったのに。

 全身丁寧に洗われつつ、……そっと見比べたりして。

 その上レイジに全身隈無く吹き上げられて。


 なにしろ恐縮至極だったのだけれども。

 つうか、同性だって恥ずかしいものは恥ずかしいし。それに。

 何かあたってますよ。なんてイベントが起こったら。

 それこそ一大事だ。




 その他、のんびり水浴びが出来なかった事情は、実はちゃんとある。

 スクワルタトゥレの存在だ。

 帝国軍が転移陣を使って、法国領内奥深くまで入り込んでいるのを確認してしまった以上。

 警戒を怠るわけには行かなくなった我が“侍従達"なのである。


 アテネーは、スクワルタトゥレと遭遇して以来、弓を左手から離したことさえ無く、ニケはリオに張り付き、モリガンも亜里須のすぐ横で常に蟲を二,三匹飛ばしている状態だった。



 無防備に裸になって水浴びをするわけには行かない事情。

 それはその辺にもあったわけだ。

 もっとも亜里須に限って言えば、多分できてもやらなかっただろうけど。


 アテネーやモリガンなんかは、かなりひさしぶりで身体を流すんだし。みんな女だし。

 だから時間もかかるだろう、お湯も使えるしな。


 きっとシャワーが無い、と言って、あとでテキスト亜里須さんがぶうタレるだろうことだけは確定だけどな。

 毒々しい文字でディスプレイが埋め尽くされる。

 それを考えただけでもうざったいんだが。




「あ、それと俺と亜里須に様はいらないんで」

 普通に――裕利。なんて雑に呼んで貰ったらもう、それだけで有頂天になりそう。

 年上のお姉さん、好きだったんだな。俺。


「しかし、中央の、まして教皇様のお客人である以上。わたくし如きが不用意な呼び方をしては、それは不敬にあたるかと……」


 飲み物を入れたカップを載せたお盆を持って、メルカさんが俺に椅子を勧める。

「なら、ため口呼び捨てのリオは死刑ですね」


「ふふ……。そう言うのを詭弁きべん、と言うのですよ?」

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