表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/470

不機嫌なモリガン

「お客人のお二方はお洗濯を致しますので、仮のお召しものを準備致しております。――従者の皆さんもお好みはありましょうが、今お召しの服はもう限界でしょうから、こちらで換えの用意を致しました。湯浴みの後お召し替えを。……この者らがご案内を致します」


 俺と亜里須は学ランにセーラー服。

 世界が違うとは言え制服なので、一応これは正装で通るだろう。

 現実世界なら、結婚式もお葬式も。職業カテゴリが高校生である以上はこの服だ。


 リオの服も見た目がアレではあるモノの、神殿中の巫女さん全員が、細かい部分の違いがあるとは言え、年齢関係成しにあの服を着て歩いている。

 ……年齢も体型も関係無く、全員着てるんだから間違い無い。


 この世界において、巫女はあの服。なのである。


 一方、ウチの“従者の皆さん”に関して言えば全員。

 着の身着のままで“逃げてきた”その服のまま。いわば普段着。

 ……ニケもモリガンも。見た目に問題があろうとも、アレが普段着なんだろうし。

 アテネー辺りは仕事着、なのかもしれないが。



「従者の皆様とリオは大浴場を準備してあります。ユーリ様はこちらの者達がご案内を。……当然に、殿方ですので湯殿は別にご用意させて頂いております」

 女性の巫女に対して男性は導士。

 メルカさんの横に立った導士の少年が三人、こちらに向かって礼をする。



 ともかくも。

 俺と亜里須の従者として中央で法王、この国の王様に会うんだから。

 風呂に入れと言われれば当然、そうだろうし。

 着替えがあるなら、好みなんて言ってる場合じゃ無いんだろう。とは思う。


 それに俺のワイシャツは、襟元や袖はもう真っ黒で着られる限界。

 パンツとかTシャツは、うん。考えないことにしてどれくらい経つだろう……。


 下着と言うなら亜里須だってそう。パンティの替えだけは持ってるんだから、たまに変えてるかも知れないが。ブラジャーだって下着。



 チェッカが表示した物の、取捨選択の傾向から考えれば。

 持ってれば、他のものはおいても最優先で表示されるはず。

 こっちの替えは、チェッカで表示されなかったんだからもってないと思う。



 亜里須のセーラー服の下に来ている何とか言うシャツも。似たようなもんだろう。

 本人に聞くまで、そもそもセーラー服の下にシャツを着るとか、知らなかったんだけど。

 そして、そう言うのも学校指定とかあるのな。女子って結構めんどくさい。


 しかも学校指定のものでは無く、オシャレなシャツなのだ。

 と、テキスト亜里須さんも本体も。そこだけは絶対ひかなかった。


【例え、もっさりしたコミュ障女であっても。いえ、そうだからこそ、よ!】

「……オシャレなヤツ、なの」 


 もちろん見たわけでも無いし、亜里須がそうだというならそうなんだろうけど。

 まぁいずれ。女子としては、そこは絶対に妥協の許されない部分であるらしい。

 ……うん、俺にはわかんないわ。ムリムリ。



「あのぉ、ユーリ?」

「我ら全員が一時いちどきに主殿の元を離れては……」

「マイスター、私だけでも浴槽の中まで同行しようか?」

 三人のうち一人だけ、言動のおかしなヤツが居るな。


「おい変態。お前と俺で一緒に風呂、入るわけに行かねぇだろうが?」

「私はマイスターの持ち物だ。一向にかまわない」


「話を聞けっ! 俺がかまうっつってんだよ!」

 ……本音はおいといて。表面上は、な。

 立場上。そう言わざるをえんのだよ、モリガン。


 でも、改めて考えたら。

 衆人環視下で女の子と一緒にお風呂に入る事になるわけで。

 それはそれで、あまり楽しく気もするな。



 俺のことを心配してくれているようだ。というのは。まぁ、わかる。

 言葉選びの方向性が相変わらずおかしいが、そこは変態モリガンだし。

 でも、ここは既にもう王都の中。この上何かがあるとは思えない。



 それに、まだリオが法王に任務の終了報告をしていない。

 俺達が中央大神殿に到着するまでは“お役目”の最中、と言うことになる。


 裏読みをすれば結構エラいうえに、人望も人気もあるらしいメルカさん。

 その妹分のリオなのだ。

 彼女の任務が失敗、とならない様に東教区全体が全力で俺達を守ってくれるはず。



 モリガンと目が合うと、唐突に近寄ってきて耳元でささやく。


「マイスターがあの女を信頼する根拠は? アイツはどうにも信用ならない。身長だってさして変わらんし、私の方が美人で若い、しかも処女だぞ。負けるのは乳のデカさだけじゃないか」


 おっぱいは、勝ち負けを云々するのもおこがましい気もするが。

 ……お前はなんで、メルカさんが非処女設定で喋ってるの?

 しかも今、サラッと自分の方が美人だって言い切ったよな?

 でも。


 言葉は巫山戯ふざけてるがその目は、本気だ。


「あの女ってお前……。リオが姉と言って慕う人だぞ? 俺と亜里須は、ここまで散々リオに助けて貰って来た。俺個人はそれ以上の担保は要らないと思うんだけど……」


「マイスター、あの女の……」

 なにか言いかけたモリガンの首根っこを、アテネーが掴んで俺から引き離す。



「まてモリガン、今はそこまでだ……!」

 聞こえたのか。相変わらず耳の良いヤツ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ