いざ、オープニングへ!
「ちっ! ……逃がした!?」
「逆だ。助かったんだモリガン、まともにやり合えたのは主殿とアリス殿だけ。……正面からぶつかったなら、私やお前では絶対勝てんぞ?」
「アテネー、そう言うお前も転移陣の痕跡を追ったりするなよ? どう見ても短距離陣だが罠を張ってる可能性の方が高い」
ナイフの形に戻った剣を鞘にしまってズボンのベルトに挟む。
亜里須の杖もペンダントに戻った様で、彼女はそのまま右の手のひらにチェーンを絡めている。
使い方、確かにわかったな。知ってた、というのとも違うけど。
「我らはこれで一度消えよう」
「この姿で居ること自体、不自然なのだからな」
「大地に浸み、大気に解け、光と共に降り注ぐが本来だ」
「助かったよ、ありがとう」
「気にするな。助かったのは我らも一緒だ、箱から出して貰ったのだからな」
「ほぉ、おのら二人は一度神に会っている。か……」
「なればもしも再び神にあったなら一言、よろしくと」
「会うのかわからんし、アレがホントに神なのか知らんけど、……まぁ、会った時には」
「無理強いはせぬが、我らともまた出合うこともあろう」
「あのノドアメと言う菓子、また食したいものだが」
「ではまた、いずれ」
すぅ。三人の少年はなにも残さずに消え失せる。
くい、くいっ。亜里須が学ランの背中を引っ張る。
「なんだ?」
見ればいつの間にか、またハートの杖を持っている。
……いや、なに考えてるかはわかったけどさ。
「やるのか? ホントに」
力強く頷く。……だから恥ずかしいのはイヤなんだってば!
「主殿、何か儀式が?」
「マイスター、手伝うぞ。必要なものは?」
「そういう事じゃ無いんだ、移動の準備をしててくれ。――リオ、今日中にこの山を超えるんだろ?」
「まぁ、できれば」
「ニケも、リオの準備を手伝ってやってくれ」
「はぁい」
「そう言う訳で。一瞬で済むし、俺と亜里須だけで良いよ」
「そうか」
「なら、良いんだが」
ぴゅい! メッセージの着信音。誰がなにを送って来たかはお察し。
亜里須の方を振り返る。
「……ね。台詞、送った」
「いや、覚えてるけどさ。元々は言霊使いの台詞なんだし、だったらお前一人で良いんじゃね? なんなら俺、ポーズは取るから」
言霊使いの台詞にあわせて主人公がポーズを取る。
そう言う場面だったはず、だが。
「やだ、……恥ずい」
「俺を巻き込むんじゃねぇよ!」
「…………」
「あぁ、もう。涙目になるなよ! ……はいはい了解、わかったわかった。やるよ、やります。そんでお前の気が済むならそれで良いよ」
ナイフを取り出すと、再度右手に握り、光の剣にする。
「二人だから最初、我ら。にしよう。……いいか?」
「……、うん」
「ちゃんとお前も声出せよ?」
「……うん」
「……裏切るなよ?」
「う? ……ん、も、もちろん」
――お前、俺だけにやらせるつもりだったな!?
「良ぉし、やるからには逃げんなよ? ――せーの、で行くぞ」
「ん……!」
「やるぞ……!」
ぐっ……!
俺と亜里須、二人で崩れた石積みの前。
「せーのっ!」
剣と杖を天に突き上げる。
――我ら、試練に打ち勝ったり!!
突然BGMがかかったり、タイトルが浮き上がったり、OPムービーが流れたりはしない。
ただ恥ずかしいだけだった。
「何かバカっぽいけど確かに宣言は必要だよね。……でもこう言うの、二人共、絵になるんだよなぁ。服なのかなぁ。――だいたい、いつ始めたの?」
「なるほど儀式の終了宣言か、考えていなかった。確かに必要ではある。偶発型の連鎖儀式。イベント、と言うのがそうだったか。私は勿論、モリガンにさえ気が付かせないとは、流石は我が主殿だ」
「儀式のさなかで、帝国の近衛まで無駄に絡んでくる辺りがマイスターだな。……、法国のど真ん中だというのに。どこまで強力な技法なんだ、聞いたことが無い」
「ユーリもアリスも、カッコイイ!」
さぁ、ここからやっとスタートだ!





