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伝説の女騎士

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『早く陣を展開しろ、荷物をほどけ!』

『騎士は集合! 急げ!』

『手空きの魔道士は魔法陣跡の隠蔽にかかれ、法国の魔道士どもに気取られるなよ!?』



 画面には小豆色の騎士団服に剣を下げた近衛騎士と、同じく小豆色のローブを纏った近衛騎士と同格のエリート魔法使い、宮廷魔道士達。

 見たところは爬虫人ダイノロイド両棲人アンフィビニアン、そして人間。属性も人種も関係のない実力主義の混成部隊。


 その真ん中。緋色の制服に金のモールで装飾され同じ生地のスカート。その高い身長で更に凜と背筋が伸び。

 真っ赤な制服に黒髪が映える、いかにも指揮官然とした、ひときわ目立つ女性が映る。


『ね、副長。場所はこの辺で間違い無いけれど、何かみつかりそう?』

『申し訳ありません。今のところまだ……』


 但し。ただ偉いだけで無いのは、彼女の腰に下がったやや細身ではあるが、いかにも実戦向きな剣を見ればわかる。彼女もまた、騎士だ。

 但し、あの顔は……。

 


『ふむ……。急がせて。此所は法国中枢が近い。これだけの人数が、存在を露呈させずに長く滞在するのはいくらなんでも無理があるわ。王宮の精鋭を同行したとは言え、数で押されてはひとたまりもない。と言うのはわかるわね?』


『ははっ、急がせます! ――魔道士共は引き続き魔力を探れ! 騎士は周囲の警戒を怠るなっ! ……お前達もグズグズせずに場所を見つけて草を刈れ! 陣の展開、いつまでかかっているかっ! それともなにか? お前達はトゥレ様を草の上に座らせる気なのか!?』

『め、滅相も無い! ……直ちに!』




 声こそ始めて聞いたが、その顔は見たことがあるのだ、……それどころか。

「トゥレ様って、……スクワルタトゥレかよ! マジでかっ!?」

「ゆうりくん。知ってる、人?」


「前作のエースプレイヤーだ。月間ランク一桁、どころか知ってる限りトップ3から落ちたことが無い。その後、運営に引き抜かれてテストプレイヤーになった伝説のエースだ!」



 一ヶ月、三〇日の内。たった三日ログインすれば。

 それだけでランキングシングルが確定する。とまで言われたエースプレイヤー。

 いくら何でも、それは大袈裟すぎるとしても。


 武器もロケーションもシチュエイションも選ばず。ログイン直後、いきなりその時点での最大難易度の依頼を引き受け、 二時間以内(法律タイマー内)で あっさりクリア。

 仲間への経験値とアイテムのお裾分けが終わるとログアウトするクールなプレイスタイル。

「何で、今の帝国、しかも近衛にあの人が……」



「……あの 女の人(ひと) は、知り合い?」

「知り合いじゃ無い。……あっちが有名過ぎるんで、俺が一方的に知ってるだけだ」



 俺が初めてゲームにログインし、いくつか戦闘をこなした後。

 彼女の活躍を見てあえて法国側につき、最初の職業選択イベントで騎士になりたくて剣技を磨くために剣士のカテゴリを選んだ……。

 最終目標は彼女を倒すことだったのだ。知らないわけが無い。



「……中の人は、本当に。女?」

「何処、気にしてんの? お前。……中の人は、つくば辺りの女子大生だったはずだよ。SNSで身バレしてさ、キャラだけで無く中身も本物の女だった。ってちょっとした騒ぎになった」


 当然チートなど無しなのは、後にテストプレイヤーとして運営側に引き抜かれたのを見ても分かる通り。

 無課金、と言う言い訳はあるにしても。毎日ログインしてレベルを上げ続けた俺はそれでも。瞬間最大でも三〇位を超えたことが無い。



「ユーリ、スクワルタトゥレ。と言うのか? あの女」

「ん? あぁ、そうだがそれが……」

 モリガンは。――んー。何かを思い出すように上を見上げて、そのまま目を閉じる。


「かつての帝国で、女だてらに帝国史上最強の騎士と呼ばれたスクワァルタツレ。人間の女性としては初めて、帝国重鎮へと取り立てられた帝国の騎士として、名前は見たことがあるぞ。――王宮の近衛騎士トップである“黒騎士"への就任は二〇代後半の事であった。とその記録にはあった」


 モリガンが淡々と資料を読み上げるように呟く。

「帝国の硬貨に姿があるほどの人物だが、だったらあの女……」


 ラビットビルの名前と同じく、スクワルタトゥレの名前もまた、ランドの住人達に記憶され語り継がれていたらしい。

「モリガン。……コインになってるのか? 彼女」

 記憶のされ方がハンパない感じではある。


「あぁ。――だがしかし、ユーリ。私の見たその記録は、今より二〇年以上も前のものだぞ。ならば……、今は完全に婆さんなのではないか?」



 五〇代後半で大半の寿命が尽きるこの世界。四〇代も半ばを過ぎれば婆さん呼ばわりは別におかしくはない。

 設定資料集は勿論、小説版でもコミック版でもそういう感じだったはず。


 モリガンは別にあおったりあざけったりしてるわけでは無く、至極真面目に話をしているのだ。



「だがお前の話が本当ならば、婆さんと言うには若すぎる。主殿のラビットビルのように転生的なものか、それともその娘であるのか、名前を継いだか……」


「彼女と、ラビットビルの全盛期はほぼ時期がかぶっているはずだ。そして多分、この世界でその名を名乗るなら。――それは、本人だ」

 偽物だったら、名乗ったその場で。

 あっという間に、名をあげたい騎士や剣士に叩き切られているはずだ。



「あれ……? リオさん。あの襟の飾り、ザンとか言う人もつけてたヤツだよね?」

「ホントに? ――ニケちゃん、よく見てたね。じゃ、あの人も皇帝三神将、だっけ? 皇帝の側近クラスってこと?」


「皇帝三神将、ってのがわからんのだが。……モリガン?」

「あぁ、三神将なら皇帝直下の最精鋭で間違い無い。だが、それならそれでユーリ達は法国の中で、帝国の重鎮じゅうちんに二度も遭遇したことになるぞ?」


「主殿達か、もしくはリオさんが重要人物であると?」

「姉御の理論だと、……ニケちゃんの可能性もあるんだが」

「え? 僕……?」



「スクワルタトゥレ、アンタは一体……」


 ソロ限定依頼の受託率と達成率が異常だったのを覚えている。

 しかも彼女は、レアアイテムや特殊効果の付いた武器では無く、高級ではあっても“普通”の武器防具を好んだ。


 その上、かつて。

 レベル差があろうが一〇人程度なら何とでもなる。と豪語していたのだ。

 腕が悪いわけが無い。


「運営に引き抜かれる前のカテゴリは、モリガンの言う通り。皇帝直下、プレイヤーではナンバーワン、初代黒騎士だ」


「姉御。初代の黒騎士は、異世界の争いを収めるため。と言ってある日突然。当時の皇帝の前から姿を消したのだとなっているが……」

「……黒騎士。ならば彼女はやはり」

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