対集団戦闘
始めの号令がかかった直後、参加者全員が鈍色に発光し、一瞬で元に戻る。
これで斬られたり、魔導が直撃したら死ぬほど痛いが死ななくなった。
さすがツチヤマさん。適当に返事をしたようで、決闘仕様の準備はキチンとしてある。
リーダーだというなら見習わなきゃな。
「先ずは小手調べー! 全員一撃で離脱、お互いの距離に気をつけてー!」
モリガンが居た場所は、いつのまにか黒い繭があるばかり。
その繭の横には右腕を振り上げた恋來奈子さんが居て、
「ちっ、器用な真似を。……だがっ!」
腕を振り落とすと繭が歪み、大きさが一回り小さくなる。
次の瞬間、フリーの連中がモリガンに殺到。
「せいやァあ!」
繭は剣撃も魔導も全てを飲み込み平気に見えるが、
「ないすー! 傷が付いたー! 魔導を一点に集中ー!」
次の瞬間、複数属性の魔導がピンポイントで連続着弾。
連鎖的に大爆発を起こすが、巻き込まれるのでは? などと気を回す前には恋來奈子さんの姿はない。
爆発してヘコんだ部分をめがけて、キヤドさんが槍を構えた男性を従え、一気に切り込むと繭を左右に切り裂く。
「手答えあり! 意外と、……いけたか?」
「こんな簡単なわけ無いじゃん、なんか仕込んでる可能性が高いよー! 警戒そのまま、防御陣形っ!!」
ここで畳みかけるかと思いきや。事前の作戦指示通り、何事も無かったかのように、全員が初期の配置に戻る。
無駄な攻撃が一つもなかった。
臨時の即席チーム、しかもレベルは恋來奈子さん以外は全員、ほぼ普通レベルを超えないのに。
なんという流れるような連携。
キヤドさんがカラードナイツ首領で居るのを納得した。
一方の黒い繭は、黒い粉になって崩れ去り、中にモリガンのシルエットを透かした半透明の球体がむき出しになり、ヒビが入ってガラスの様に崩れ、二つに割れて燃え上がり、砂のように風に舞い。
それが何度か繰り返されると水の玉にはいったモリガンがあらわになって、その水の玉も突如カタチを失って、――ばしゃっ。と地面に飛び散る。
「ぷはっ! ……死ぬかと思った! ――地獄の業火!」
自分で作った水球で溺れ死んだら洒落にならんだろうよ。
何がどうなったのか、顔を庇う左腕の袖が縦に切れてほぼ無くなった濡れ鼠のモリガンが、黒い炎を背負ってキアドさん達を睨め付ける。
ヘルインヘルノは、もともとファイアウォール系の強固な防御力を誇る黒魔導。
……なんで高位の魔導が使えるんだよ。何でもありだな、箱庭世界。
威嚇と、とりあえずの防御のために発動したんだろうが。
だが俺にはわかる。メインは水の中に居たから、服と身体乾かすのに使ってるな?
濡れないように、とかできなかったんだろうか……。
「……やってくれたな、ヴァンピール! まさか姐御直伝のダークバッファを一層、素手で引っぺがすとは恐れ入った。――そして二刀流! ……危うく腕を持って行かれるところだったぞ。衝撃緩和のために作った水球にまで侵入するその剣と腕、確かに言うだけのことはあった!!」
紐みたいになった左の袖を引きちぎりながら、今なにがあったのか。モリガンが唸るように吐き出す。
バッファフィールドやら偏光膜やらバリアやらを多層で張り巡らせて、初激だけは無傷で抜けるつもりだったモリガンだったが。
吸血鬼パワーで無理やり一番頑丈な外装部分を剥がされ、気にしていなかった一般冒険者クラスにフィールドに傷を付けられ、魔導で傷を拡大して穴を開けられたところで剣と槍をぶっ刺された。
ということらしい。
まさに連携の賜物、カラードナイツの戦い方だ。
「今の攻撃を服の袖だけでかわす、だと……?」
「アズーロが最初に言ったはずだ、彼女はヘルモードのレイドボス同等だ。と」
あー。始めから警戒されてたわけだ。
それはそうか。キャラの立ったNPCなんて、敵に回したら強敵確定だもんな。
それが自分でケンカを売ってくる。
そういや始めから、
――レイドボス・撃破ボーナス戦の変形だからねー
なんて言ってたよな……。
暇を持て余してる中。緊急イベント発生、っていうスタンスだったわけだ。
道理で恋來奈子さんもアズーロさんもそこまで好戦的な人じゃないのに、ノリが良いと思った。





