珍しいヤツ(複数の意味で)
「……ね。ゆうりくん。蟲って、……なに?」
「一般的に言う虫では無く。うーむ。小さいモンスター、的な感じで良い。のかなぁ……? よぉ、蟲使い。どう説明したら良い?」
「ユーリ、アリスはまるで魔導やモンスターに対する知識がないんだよな? うん、ならばその理解でだいたいあってる。蟲は見た目も中身もわけのわからない小さなモンスターの様なもの、見てくれこそ一般的に言う虫、インセクトの延長線上にはあるとは言え、そもそもが違う。そういうことだ」
洞窟の入り口。
モリガンと亜里須に挟まれて座っている。
『モリガン・メリエ』
『インコンプリーツ(人×アラクネー) 女 十六歳』
所属 [法国]蟲使い村の糸使い→ [法国]躁糸の蟲使い
『取得カテゴリ』
インコンプリーツ ☆S(固定)
糸使い ☆master!
蟲使い ☆master!
食糧鑑別士 ★★★
スパイ ★★★★★
上忍 ★★★★
『現在のカテゴリ』
躁糸の蟲使い ※糸使い×蟲使い
ダブルカテゴライザ・オリジナルカテゴリ
『所有スキル』
○インコンプリーツ
??? 躁糸術upper limit 体力弱体化upper limit
○糸使い
蜘蛛の巣upper limit 俊敏ブースト(48倍・0.2秒)upper limit トラップ(複)4
○蟲使い
同時召喚三種upper limit 同時使役4(一種三〇匹以内)
万象知識5 雑学王upper limit 生活力低下upper limit
○魔道士(闇) ※アイテムによるサブカテゴリ
ダークホールブレイク4 黒い炎3 魔導攻撃防御弱体化3
○食料鑑別士
野草鑑別5 キノコ鑑別upper limit お弁当鑑別5
○スパイ
隠遁術upper limit 設定裏読み5 トラップ看破5
○上忍
水蜘蛛4 竹飛びジャンプ3 罠設置upper limit
○躁糸の蟲使い
見切りupper limit 俊敏弱体化upper limit 有線偵察5 躁糸の舞(複)3
『現在のステータス』
身体:やや疲労 精神:かなり疲労 体力;枯渇間近 魔法:枯渇間近
特殊:やや枯渇 魔力:枯渇 聖気:- 呪い:- 』
『装備品リスト』
頭:-
身体1:革の衣装 身体2:物理反射のコート(物理攻撃防御+1)
身体3:魔導蟲(闇)×5
右手:
左手:
足:蟲羽のブーツ・素早さ+2
『アイテム』
蟲笛 蟲集めの香 蟲集めの香 蟲の餌(草食用) 蟲の餌(肉食用)
モリガンは、こんな美味い食事は生まれて初めて食べた。
と、涙を流して夕飯を食したその後。
洞窟の前へと陣取ると。
――索敵用と獣避け用の蟲を五匹ずつ放ったから、実際は寝ていても良いんだけどな。俺と亜里須に椅子代わりの倒木を勧めると、自分は草の上に座り込んだ。
「私が居れば、暖を取る以外はたき火も要らないくらいだ。少なくても害の有る虫は絶対に寄ってこないからな」
「蟲だけで無く虫も使役できるのか?」
「さすがに使役とまでは行かない。せいぜいこっち来るな! ってのが伝わる程度だ」
……夏場は、窓の外にモリガンを吊しておくと効果的だな。網戸が要らない。
「ずっと張り詰めてたんだ、疲れてるだろ? 見張りは実質私がやる。二人共、今のうちに少し気を抜くと良いぞ」
そしてもう一つ。
横暴で傍若無人、無茶苦茶で考えなし。
そう見えて意外にも、人の話を聞く。
ぽつりぽつりと単語で話す、亜里須の話さえ。終わるまで黙って聞く。
モリガンというのはそう言うヤツだった。
「アリスに私を信用しろとは言わないが、妙な動きをしないか。それだけ見ていれば良いのだから、楽だろ?」
「もりちゃん……」
基本的には誰も気にしちゃ居ないのだが、山歩きや炊事、そして戦闘。
一連の行動になんの役にも立たないのを、一番気にしているのは亜里須自身。
たった数時間、一緒に居ただけで亜里須の精神的な危うさに気が付いたのか……。
虫が寄らない上に気遣いもできる。
是非この夏から、全国の薬局やホームセンターで販売してほしいものだ。
「……ね? もりちゃん。……なんで。そう言う格好、なの?」
「なぜ、と言われても……」
コートの下。髪に負けない様な真っ赤な皮のボンデージ風衣装。
今はコートのボタンを開けて、前をはだけているので丸見えである。
リオの巫女服やニケの服装のこともあって、そんなもんなんだろうと思ったのだが。
しかしそれは。この世界にあっても一般的では無い様で。
……リオとアテネーは普通にヒイていた。
蟲使いだから、と言う事では無く。単純にモリガンの趣味、と言うことなんだろうな。
ちなみにニケは。――カッコイイ! と喜んでいた。
アイツはアイツでわけがわからん。
「露出癖がある、と言う事か。……幼児体型なのになんでそんな服を。痛々しい変態にしか見えないよ」
「よ、幼児体型とはなんだ! 少し身長と胸と尻が小さくて胴回りが太いだけでは無いか!」
「それが幼児体型だ! ――だいたいこの流れなら、露出癖の方を先に否定しろよ!」
なぁモリガン。相応の服装ってあるだろ?
「な、なんと言われようと身体を見られたい気持ち。これは正直否定出来ないし、私は普通に言う、常識については言葉しか知らん。だからそれが、常識に照らして変態的だと言うならそうなのかも知れないが……!」
前言撤回だな。こんなもん窓に吊しておいたら、通報されるわ!
……人に見られたい。を前面に押し出すと変態的に見える。
と言う事実に関しては、半分は素で気が付いて居なかったらしい。
さっきまでコートのボタンはしまっていたのだから、多少は意識していたのだろうけど。
そして見て下さいと言わんばかりの服装である以上、つい目はそちらに流れる。
うん、しかしこうしてみると。身長は俺より少し低いだけ。
なのにリオよりいくらかマシ、くらいのレベルでしか凸凹がない。
おっぱいヒエラルキーはニケを頂点に、実は第二位が亜里須。という意外な結果の我がパーティである。
アテネーは身体のバランスがモデルみたいだが、それ故胸は大きくない。
リオはまぁ、なんと言うか。見事に何も無い。
「蜘蛛だから胸がないのか。……なんてな」
【それははどう言う意味なの?】
なんとなく口をついた独り言に亜里須が反応する。
――蜘蛛って頭が直接、腹に着いてるんだよ。胸自体がそもそもない。
実際には、一般的な虫で言う頭と胸。これが一緒になってるようなカタチなんだけどな。そうで無いと頭から足が生えてる、みたいな事になってしまう。
【虫に詳しいのはわかったけれど、それは明らかにセクハラだから。本人に言ったら本気で軽蔑するわよ? 気にしていたらどうするの?】
【私だって完全に高二女子の標準体型なので、表面上気にしていない事になってはいるけれど、正直なところ。気にしているかいないかという話になれば、当然気にしているわよ?】
気にしてんのかよ……!
「いや、言わないし」
「……め、だよ?」
「はい」
……独り言に突っ込まれた上で怒られた、……だと?
いや、コイツがこんな服装してるの悪いんだろうよ!
そういや、ニケもアテネーも自分の村からほぼ出たことがないんだといってたな。
モリガンも多分そうだろう。
ならば彼女たちに一般的な常識がかけていても、そこは当然なのかも知れない。
「おい、モリガン。――今は良いけどさ、基本的には前は閉めておいて誰にも見せるなよ? 世の中にはいろんな趣向の男がいる……」
「もちろん、事実上お前の持ち物になったのだ。命令には全面的に従う」
「持ち物とか言うな! ……だいたいもう少し色々、出たり引っ込んだりしてるならまだしも」
「事実上の主たるお前から、体型含めて正面から罵倒されるとか……。それが、それがこんなにも……」
「えっと、あの。……言い過ぎた、かな。ゴメン」
「いや、それがこんなに気持ちいいことだったのだ。と初めて気が付いた!」
――やべぇ! コイツ、ガチのド変態じゃねぇかっ!
「全面的に頼る、捨てられたら死んでしまうご主人様に、あからさまに罵倒されるのが、これほど胸のすくものだったとは! ユーリ、もっと忌憚の無い意見を私にくれ! 全力で蔑んでくれていいのだぞっ!」
「知るかっ、キモいわっ! あっちいけ、変態!」
「頼む! 我が主として、もっと具体的に侮蔑してくれ! 出来れば蜘蛛も搦めて上手いことを言いながらバカにしてくれ、搦めて欲しい。蜘蛛だけに!!」
「お前が上手いこと言ってんじゃねぇか!」
たった今、言うな。って言われたんだよ。それ……。
言葉責めが好きなMとか、もはや対処の仕方がわかんねぇよっ!
……ただの高校生だぞ、俺は!





