表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
424/470

中央大神殿本宮付き助祭 Side : Country of Regulations

 "会議室"からは短い渡り廊下で繋がった大きな建物。


 近所に歩いて来ただけで圧倒される。

 名前が無いと呼びづらいので"一時避難所"。

 とお兄様達は言っていたし、それが通称になってしまっているが。


 どうみても貴族のお屋敷か、もしくは高級な宿屋の様な巨大な建物。

 名前と見た目が完全に乖離している。

 何か違う呼び方を考えた方が良いと思うのは、ぼくだけではないはずだ。


 こんな巨大なものを"箱庭世界"で作った上で、分解して運び、ここで組み立てている。なんというか、でたらめだ。

 まぁ、分解して持ち運ぶ。とはいえ、それはアリス様の"持つ、"ストレージ"ありきの話。

 あの方については、大きな方の荷馬車三台分程度なら、普通に"ストレージ"で持ち運ぶことができる。


 ただそれについても秘密、という事になっているのでぼく以外は知らない。

 あまりにも今回、秘密が多すぎるし、そのことごとくにぼくまで絡んでいる。

 正直に言えば、ぼくはそこまで重要な人物では無い。……荷が重すぎる 



「ようこそお越し下さいました、大導士様。法国中央教区の皆さまには大変お世話になり、皆一同に感謝しております」


 建物の玄関前に立つ、同性代の導士の服がぼくを呼び止め頭を下げる。

 今は灰色のお世話係の制服では無く大導士の服を着ているので、彼にも僕の階級はわかったらしい。


 服装は、事情を知らない人に説明するのが面倒くさいから。

 リオ姉様にそう言われて着替えたのだが、確かにそうだった。

 あの服にも、大導士を示す記章は付いているけれど。

 知らなければそこまで細かくは見ないだろう。


 僕に声をかけた彼は、同じデザインではあるが、服の色は帝国教区の所属を示している。


「お役目ご苦労様です。ぼくは法国中央東支神殿の礼拝士長、レイジ・イーストと申します。御礼のお言葉、ありがたく頂戴致します」

「お待ちしておりました、礼拝士長。自分は帝国ヴィルキント辺境伯領第二拝神殿付きの神殿導士、イラと言います。お話は伺っております。……その、助祭様がご同道なされると伺っていたのですが……?」



 あぁ、そうか。

 中央管区でシブリングスを知る相手なら。

 その辺の事情は有名だから、説明の必要がないので忘れていた。


 確かにリオ姉様からは、――中央大神殿の助祭が会いに行く。と通達を出して貰っている。

 ぼくの後ろに隠れるようにして立っているのはシエラ・セントラル。


 あまりにも特例的にいきなり高位神職になった、しかもあからさまに少女の見た目、なので。

 いらぬ諍いを避けるため。

 と言う理由で、本人の性格もあって彼女は普段から巫女でさえなく、導士の服を着ている。

 

 ――エラそうな服、しかもスカート履くなんてイヤです。


 そう言い張って同じく導士の服を着ている少女。副司祭カナリィ・アクシズとはその辺の事情が少し違う。

 でもまぁ本当は二人共、リオ姉様よりもエラそうな服を着たくない。

 と言う部分が根っこにあるので、そこは誰も何も言わずに教皇様にも直接認めてもらっている。


 なので、大導士と導士二人しかここには居ない今現状。

 待っている彼からしたら、

 ――ところで、助祭様が来られていないようですが?

 となるのは当然である。



「諸事情あって、今はこのような服装をしていますが、僕の後ろに居る彼女がそうです。……思うより若く見えたと思いますが」


「……あの、えーと。こんにちは、導士様。私がその、助祭です」

「え? あ! こ、これはとんだ失礼を……!」


 基本的に経典や典範の研究者として、外部の人間に会う立場では無いのだけど。

 司祭級なんだし、多少は人前に出る訓練を。しなくちゃいけない、よな……。


「これについてはあなたには責任はないですよ」

「あぁ、いえ。……知らぬ事とは言え、ご無礼をお許し下さい。――既にサロンでお待ちです、ではご案内いたします。どうぞこちらへ」


 彼がドアノブに手をかけると。

 適当に作った、とは到底思えない大きく豪華で重そうなドアが音もなく開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ