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そろそろだまろうか? Side : AdME Dukedom (3rd force)

「別におっさんとして生まれついたわけでも無し。それに見た目なら真逆だろう」

「あんたに関しては私、どうやっても若いイメージが浮かばないのよ。大酒飲みだわ、博打打ちだわ……」


 見た目は若い、どころか幼いのにね。

 飲む打つ買う、がダメ大人の三大原則だけど、このおっさんは買う。は、やらない。

 見た目が中学生だし、なんなら過去は“売る”ほうだったし。そこは当たり前と言えば当たり前。


 結局、お酒と仕事で心と体を壊した当時の彼は。

 なにをどうしてそうなったのか。

 法国に流れて行き道具屋になり、アイテムクラフタのスキルはその頃身につけたらしい。

 天才は何やらしても結果が付いてくるんだな、これ。

 普通、その状況では身につかんだろ、スキル。


「レディは最近、常識やら倫理といったものにうるさくなったな。昔はもっと……」

「うん。ウッキー、そろそろだまろうか?」


 あまり“昔”のことを掘り返されると困るのよ。

 ここ暫くはエラそうな事言ってるけど、適当で行き当たりばったりの生活だったから。


「見た目はだいぶん若くなったと言うのに、口うるさいことだよ」

「あのさ、おっさん。……だまれ。っつったの、聞こえなかった?」



 そう、彼は今とは別の見た目でゲームにログインしていたときからの知り合い。

 ここに連れて来て以降、彼が言うには、

 ――レディのお陰で酒浸りの日々から脱却できた。

 となるんだけど、女神に頭下げてアル中直した以外。なんかしたか? 私。


 ゲーム内のユーリ君、ラビットビルのストーキング(どうこうちょうさ)のためだけにログインしていた当時。

 とは言えストーキング以外何もしない、とすればゲーム内では飢え死に確定。

 なので職業はゲーム内の制約が極力少ない職種、と言う理由で農家(ファーマーだった。


 だからラビットビル(かれ)のログインしていない時間帯などは、ゲーム内で畑仕事をしてた。

 まぁ、農業自体はゲーム内ではとてつもなく効率が悪いんだけど。

 薬草とかそう言う系統のモノはそこそこ高値で売れるし、やってみれば結構楽しかった。


 そのころ、路地裏の露店で話をするたび、――僕は死に場所を求めてここまで来た。

 とうそぶく、中学生くらいのNPCの道具屋と仲良くなった。


 その彼は、元帝国民の、しかも両棲人のインコンプリーツで。

 だから腕は良いのに、知り合いも常連客もほぼ居なかった。

 と言うより、いつ会っても飢え死に寸前のていだった。


 作る道具がみんなぶっ飛んでたので、私個人は懇意にしてたし、なので代金のほかに作ったお野菜やお酒なんかも差し入れしてた。

 道具のとび具合がどれくらいかと言えば、例えば。



 体力やら魔導やらの回復薬の材料、そんなものを栽培してると強盗が来る。

 泥棒、と言わないのは私が畑にいても気にしないで強奪していくから。

 逃げるのが間に合わなくて、殺されたことも複数回。

 確かに、ただの農民が戦闘職には絶対勝てないもんね。 


 で、その“道具屋”に、

「持ってるだけで、初代白騎士と同じ戦闘力を発揮できる剣が欲しい」

 と愚痴ってみたところ。

 1週間でホントに作りやがった。真面目に愚痴のつもりだったんだけど、

 

「あんたにはいつも世話になっているし、僕も久しぶりに面白半分で楽しんで作ったので金は要らん。だが、五人くらい倒したら壊れるから使うタイミングには十二分に考えろよ? どうなろうと責任はもてんぞ」

 と言う捕捉説明付きで華奢な剣を渡された。


 

 それをもらった次の日に、いきなり結構なレベルの強盗さんが四人できた。

 死亡を覚悟したのだけれど、でも。私の手元には“白騎士の剣”があった。

 

 結果。四人目を切り伏せたあと、剣は粉になって手から消え。

 二分ほどレベルアップとカテゴリチェンジの通知が続き、それが終わると。

 ステータスのカテゴリ欄が、見習い農家 の★★(ほしに) から特殊職業ユニークカテゴリ 首狩り鎌の死神 の(カテゴリマスター) と言う謎の職業に変わっていた。


 その後。普段の生活は、むしろわざと強盗を誘い込んで殲滅する、と言う方針に変わった。

 法国ではほぼ最強の戦闘職、神殿騎士と同じくらい強くなってしまったからだ。

 それに強盗が持ってる装備やら何やら、すごく儲かるのよ。レベルもさらにガンガン上がるし。

 そんなの、やらない道理が無いじゃない? 

 最終的に、私の畑が襲われることはほぼなくなった。 




 そんなわけでウッキーだけは“昔”の私を知っているし、逆もまた然り。

 だから。女神と公王に拾われて、この世界に来てすぐ。

 彼が居るのかどうかを確認した上で、法国からのセレーナ奪還計画のついでに公王に拉致してきてもらった。

 

 ロクなもんじゃない、とは私も思うが。

 当時は事実上、女神と公王しかいなかったしそこは仕方ない。

 ……考えるとこのおっさんに関しては。私のお陰の部分、結構あるかも知んないな。

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