表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
388/470

実はわりと落ち込んでます

「その、改めて。……お兄様、アリス様、お帰りなさいませ」

「お帰りなさいませ」


 ぞろぞろと7人の少年少女が法王の執務室に入ってくるなり、扉の前に整列して一糸乱れず一礼する。


「あ-なんだ。ありがとう」

「私もユーリも、今は休憩時間です。あなた達も楽にしなさい」


 法王の言葉を聞いて、全員キビキビとお茶の準備を始める。


 神官総長さんのいった、――甘すぎる。の意味はわかった。

 リオの弟妹達(シブリングス)の主要メンバー全員が、教皇執務室の前で待っていたらそう言うわな。


 能力的にも立場的にも高級幹部で間違い無い彼らである。

 しかも、今や教皇独立親衛隊の扱い。スケジュールどころか、人員配置にさえ誰も口を出せない。

 この忙しいときに、全員でなにしてるの? と言う話だ。

 文句の一つも言いたくなるだろう。



「椅子があるのです、座りなさい。それと、あなた方の分のお茶も必要ですよ? お菓子はユーリ達以外は先ほど、誰も手を付けなかったので余っています。もったいないからあなた方でいただきなさい」



 準備が終わって、俺達の後ろに控えようとする彼らに法王が声をかける。

 おずおずと、と言う言葉がしっくりくる感じでお茶の準備をすると。

 俺と亜里須の座るバカでかいソファには座らず、部屋の隅に立てかけてあった折り畳み椅子を持ってくると、テーブルを囲むように座る。


「なぁレイジ? みんなで出迎えてもらうのは光栄なんだが。……暇なのか?」

「実はこの場に来るのはボクと、バニティ姉さんだけの予定でした」

「なんでこうなった」

「その、有り体に言って……、まかれました」


「なにそれ」

「ほぉ。……何がどうなったのか、休憩だと言いましたがこの場で報告を。良いかな?」



「申しわけの次第も御座いません、教皇様。――ではカナリィから。休憩中のところですが、教皇様のお耳にも入れておかなければいけないはなしではある」


 表情を硬くしたレイジが、法王の顔を見ながらカナリィちゃんに話をふる。

 教皇直属の特殊部隊で、主な任務が俺達の護衛。

 護衛相手に意図的にまかれた、となれば。まぁ、そうなるよな。


「はいです。……カナリィは、シエラと共にモリガンさんとフレイヤ様についていたですが……」

「王都大結界の中だというのに、……突如発生した、比喩で無く十重二十重の結界、実際には二十一層ありましたが、それに阻まれ、二十一層全てを突破するころには、お二人の姿を見失ってしまいした……」


 突如発生したわけじゃ無い、あの二人が発生させた結界だな。

 モリガンならば大結界を無視して魔導の行使が可能だし、姿を隠す魔導なら大得意。

 フレイヤに至っては、――誰が大結界を張ったと思ってあるか? というわけで魔導は使いたい放題。

 見失った。とレイジに報告する、カナリィちゃんとシエラちゃんの姿を想像して可哀想になる。


 たぶん、若い神職や“コドモ”には見せたくないなにか。

 そう言う仕事をしようと思ったんだろう。

 特にフレイヤが居るんだから、子供に対する気遣いは言うまでも無い。

 この二人は見た目が完全に子供なわけだし。



「では、次はポーラ。良いかな?」


「はい。こちらは私のほか、レジーナとアバラスくんの三人で、アテネーさんとニケさんについていたのですが……」

 ポーラちゃんが申し訳なさそうに話し出す。


 ――東支神殿の副司祭様に、少々急ぎの用事があるのだ。あなた方のお役目はもちろんあるだろうが、後ほど(むこう)で合流することとしてほしい。


「そう言い残されると、お二人はいきなり全力疾走にはいりまして」

「あっという間もなく、僕らには見えなくなっちゃいまして……」


 物理的にまかれたのか……。

 護衛をしろ、と言われた身にそれはツラい。

 だいたい、あの二人が本気で走ったら、馬なんか問題にならないくらいに早い。

 自転車と自動車くらいに違いがある。

 そりゃ、あっという間に見えなくなるだろ……。

  

 あえてお世話係が居ないうちに、メルカさんにしたい話があるんだろう。

 闇の世界の住人で、異常なまでに強い快楽殺人鬼。

 ルル=リリさんはそう言う人だし、アテネー自身は元からその話を知っている。

 アテネーが居る以上、例の話をルル=リリさんにお願いするのは抵抗がある、と言うのはわかる。



「あなた方でもかないませんか、あっはっは……」

「わかるけどさ、笑ったら可哀想だぜ。あんたに報告するのにドンだけ勇気が居ると思ってんだ」

「まぁ、わかるがな。……あぁ、なんだ。すまない」

「いえ、ボク達のミスですので」

 



 

「ちなみにルル=リリさんが今、なにしてるか、知ってる?」

「お兄様のお帰りになる五分ほど前までは御一緒だったのですが。その後お姿を確認したものが、中央大神殿内部では誰もおらず、今に至っています……」


 ホントに何考えてんのか、謎だな。あの人。

 西の調査に関してはメルカさんに任せちゃおうかな……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ